内田樹、小熊英二らが警告する「危ういニッポン」の行方

日本学術会議で起きたことは、人ごとではない

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「菅首相が、こんな乱暴なことをした、という事は、歴史上長く糾弾されるだろう。戦争の反省の上に作られた”日本学術会議”に汚点を残すものである。2020.10.12   益川敏英」

2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんのメッセージからは、悲痛な叫びが聞こえる

学者たちが憤っている。菅義偉首相による日本学術会議の任官見送りに対して「許しがたい」と抗議の声を上げている。

「これは差別のはじまりです。理由もなく拒否していいなら、いくらでも差別ができてしまう。なにが理由なのかわからなければ、疑心暗鬼を生み出します。ルールは守らなければならない。『なんとなく』を許しておくブラックボックスのような現状が不快です」(小熊英二・慶應大学教授)

「このことは、官僚、NHK、国立大学と広がって民間や学校にまで影響を及ぼすことになりかねない」と小熊英二さん

10月14日、安全保障関連法に反対する学者の会が会見を開いた。冒頭のノーベル物理学賞受賞者・益川敏英氏(京都大学名誉教授)のメッセージは怒りを越えて悲痛ですらある。

国内外、各界から疑問の声が上がっているなか

法律上の問題(憲法違反にあたる)、説明過程の不誠実さ(名簿見ていない/じつはちらっと見た)、学問への冒涜と、さまざまな視点から疑問が噴出している。そしてさまざまな、およそありとあらゆる400近い学会と、大学、研究所が抗議の声明を発表している。

映画界からは、是枝裕和監督はじめ22人の映画人による抗議声明があった。国内のあちこちから疑問、抗議の声が日に日に大きくなっている。が、「任官見送り」の理由は、未だ明らかにされていない。

哲学者で凱風館館長の内田樹・神戸女学院大学名誉教授も、都内での会見に駆けつけた。

「学問って、国民を豊かにするためにあるんですよ。今、日本の国力は明らかに低下しています。世界のなかでの評価も下がっている。管理しやすい国を作って、そこから、どんな『よきもの』が生まれるでしょうか。統治コストは安くなるでしょう。でも、長期的な国力は劇的に低下します」

「学問は民の安寧のためにある。学者の仕事は人を豊かにすることです」という内田樹さん

事実と違う「情報」があまりに多いのはなぜか

会見では、学術会議に関する誤った情報、デマについての説明もあった。年間予算は10億円、その半分は事務費で、会員に年金は支払われていない。全米アカデミーの230億円に比べると、ずいぶんとささやかな金額に感じる。

「日本学術会議は200人の会員と2000人の連携会員が、政府に年6080件の提言をしています。コロナ禍で、世界のアカデミーが協力し合うべきときに日本が参画できないとしたら、これは大きな損失です」(戒能通厚・早稲田大学名誉教授)

学問は、国民の幸せのためにある

内田樹さんは重ねてこういう。

「そうすることで、なにがしたいのか。日本国民にどういうプラスがあるんでしょう。国民は幸せになるでしょうか。目的がわからない。みんな暗い顔をしている国より、グイグイのしていく国にしたいですよね。このままでは国が滅びてしまいます」

「理由を言わず、プロセスを明らかにせず『私たちが決めたんだから、私たちを信用してください、以上』では、危うすぎる。学問の世界だけでなく、社会が萎縮していく」(小熊英二さん)

今、ねじ伏せられようとしているのは、学者だけではなくわれわれひとりひとりの生活であり、命なのかもしれない。

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