鼻水たらして号泣…大人に「泣き部屋で涙活」が刺さる理由
泣いてストレス解消。心が元気を取り戻す「週末号泣」のすすめ
大人の人生にはストレスがつきもの。まして今は、仕事や生活環境が変わったり会いたい人に会えなかったり、ストレスフルな人が多いだろう。心の不調に陥らずに生きるために、意外にも「泣くこと」が有効だという。そんな提案をする「涙活(るいかつ)」プロデューサーの寺井広樹さんに「泣く意味と方法」をきいた。
自分の「泣きツボ」を知れば、だれでもいつでも泣ける
泣いて元気になる……どうしてですか?
「最近、鼻水をたらすほど号泣したこと、ありますか?
涙を流す涙腺は副交感神経のコントロール下にあります。人は、起きているとき交感神経が優位になり、ストレスがたまると交感神経が高まりすぎて緊張状態が続きます。そこで泣いて副交感神経を優位にすることで、体をリラックスさせられるんです」(寺井広樹さん)
涙を1粒流せば、ストレス解消効果が1週間続くという説もあるという。
しかし振り返ってみると、最後にいつ泣いたか思いだせないほど。泣けばいいといわれても、簡単に泣けるものではなくて。
「大丈夫。人にはそれぞれ『泣きツボ』があります。親子愛だったり、動物愛だったり、自分の『泣きツボ』がわかれば泣くのは簡単です」
寺井さん自身の最大の泣きツボは、亡くなった大好きな祖母を思い出すこと。当時一緒に見ていたお笑い番組を見ただけでも「秒で」涙が出てくるとか。
「泣くには、コツがあるんです。年に何度か開催する『涙活』イベントでは、『最近ぜんぜん泣いていない』という参加者もいます。が、たいてい30分ほどで泣いてもらえます。その人の『泣きツボ』を見つけて刺激するんです。
ご自宅なら、インターネットで『泣ける映画』『泣ける歌』など、『泣ける○○』をチェックして、自分の『泣きツボ』を見つけるといいでしょう」
週末に思い切り泣く。「週末号泣」で1週間のストレスを解消
涙にも「感動の涙」「悲しみの涙」「後悔の涙」など、いろいろある。なかでもストレス解消に効果があるのは「感動の涙」。
「悲しかったことや悔しかったこと『そのもの』を思い出したら、つらい思いを再体験してしまうでしょう。だから、避けたほうがいいです。それに近い状況の『泣きツボ』を見つけて、能動的に泣いてください」
なにか悲しいこと悔しいことがあってその場で泣いてしまうのもいいけれど、できれば泣きたい思いを「ためて」おいて、まとめてしっかり泣いたほうがいいとか。寺井さん自身が実行しているのは、土曜日の夜の「涙活」。
「思い切り泣くことでストレス解消効果はより高まります。なので、『週末号泣』を試してほしい。僕も毎週、鼻水をだらだらたらしてぬぐいもせず号泣しています」
明かりを落とし、携帯を切って「泣き部屋」作りを
「環境を整えないのは、ウォーミングアップなしでいきなり長距離を走るようなものです。まずは環境作り。部屋を暗くする、携帯を切るかマナーモードにする、ティッシュやリラックスできる香りを用意するなど、集中できる環境をしっかり作ることです。パートナーや家族と一緒でもかまいませんが、1人のほうが『泣き』に集中できるようです」
家族と暮らしていて、1人になれる場所や時間がない人は、自宅のお風呂やトイレでもいいそう。「あまり泣けない」という人は?
「日ごろ泣くことがない人は、自宅ではなく非日常の空間に身をおいてみる。例えばホテルに泊まって『涙活』して、人目を気にせず思う存分に泣いたらすっきりしますよ」
泣くための場所と時間をもつ…「泣き部屋」ですか。
「そう、非日常の快適な空間に『泣きツボ』を用意するんです。家にいると、家族に見られるのではとか、家事や生活要素に気が散って泣く気持ちになれないかもしれない。泣きたい気持ちを我慢するのがいちばんいけないんです。ストレスがたまってしまう。涙活ホテルステイなら完全な非日常だし、涙活イベントでは周りの人もどんどん泣くので、刺激されてしっかりよい『泣き』ができます」
泣くことができない「固い心」を開く
寺井さんは毎年3月、宮城県石巻市に行く。東日本大震災の3年後から、ここで「涙活」イベントを行なっているのだ。震災直後は泣くことができなかった参加者も、この3~4年で徐々に「泣ける」ようになってきたとか。
「それは、うれしい変化でした。この活動をしていてよかったと感じます。
男性の場合とくに『男は泣くものじゃない』と思うのか、なかなか泣けない人も多いんです。心が固くなっているんですね。泣くことでほぐれる気持ちがあります。『涙活』トレーニングをすれば大丈夫。どんな人も必ず泣けるようになります」
じつは「涙活」を始めるまで「泣けない男」だった寺井さん。7年前「涙活」を始め、今では泣こうと思えばすぐ泣けるようになったとか。
「涙活を始めて7年半、風邪もひかなくなりました」
ストレスを解消、健康な心と体を保つ。なにより、気持ちよさそうだ。「週末号泣・涙活」試してみたい。
寺井広樹:1980年、神戸市生まれ、同志社大学経済学部卒。泣ける映像、音楽、詩の朗読で「涙活」を体験するイベントを各地で開催。『涙活公式ガイドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)、『人生の大切なことに気づく 奇跡の物語』(かんき出版)など著書多数。
- 取材・文:中川いづみ
- 写真提供:ザ・プリンス パークタワー東京
ライター
東京都生まれ。フリーライターとして講談社、小学館、PHP研究所などの雑誌や書籍を手がける。携わった書籍は『近藤典子の片づく』寸法図鑑』(講談社)、『片付けが生んだ奇跡』(小学館)、『車いすのダンサー』(PHP研究所)など。