安倍前首相が身内のパーティーで「五輪はやります」発言 その真意

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来夏に延期された東京五輪の正式開催はまだ発表されていない。そんな中、安倍晋三・前首相が10月7日、東京五輪組織委員会・名誉最高顧問に就任した。

その翌日の8日、安倍前首相は早速ぶち上げた。この日行われた自民党議員のパーティーでサプライズ登場した彼は「東京五輪はやります」と自信を持って発言したのだ。

大会組織委員会は国際オリンピック委員会(IOC)に総額300億円にものぼる52項目「削減案」を提示して合意したばかり。確かに新型コロナウイルス対策や延期による追加費用を国、東京都そして組織委員会でどう負担するのかなど、本格的な問題解決はこれからだ。前首相による「五輪やります」発言の信憑性を探った。

「東京五輪はやります。IOCのバッハ会長も断言している」

安倍前首相が自民党議員のパーティーで、こうハッキリと言い切った。8月28日に持病の悪化で7年8か月の長期政権に自らピリオドを打ったばかり。顔色こそ今ひとつだったが、言葉には力があり集まった200人以上の聴衆は安倍前首相が登場すると一斉にスマートフォンを構えて、撮影を始めた。身内のパーティとはいえ、安倍人気健在を見た場面だった。

首相時代に「東京五輪はやります」と発言をしたら、それこそ一面トップの重大ニュースだが、勇退してから2カ月足らずでここまで強気に「五輪はやります!」と宣言したのだから、パーティーに集まった関係者らも内心驚いたことだろう。

5分ほど続いたこのスピーチでは「今から1か月前だったら、私が(衆議院の)解散を決められたんですがね」というウェットに飛んだ発言もあり聴衆から笑いを取る余裕もあった。実は安倍前首相がこのパーティに出席することが決まったのは、開宴わずか1時間前のこと。主催者側からは「コロナ対策もありますが、もっと早く安倍さんの出席が決まっていたら聴衆はより集められたでしょう。そう言った意味では残念です」という声も上がっていた。

この「五輪はやります」発言は、前首相による希望的観測を超える重みがある。「大会名誉顧問」に就任したのが10月7日。冒頭の発言は翌8日のもので、大会名誉顧問就任後、初の〝生コメント〟なのだ。今まで存在しなかった役職を用意し、就任を後押ししたのが大会組織委員会・森喜朗会長である。2015年に肺がんを告知され、今は腎臓機能低下もあり週3回の透析を行っていることを告白している。東京五輪の延期が決まった3月ごろは自力で歩くのも苦労する場面も数多くあったが、今は違う。

「安倍さんには(東京五輪組織委員会における)ポジションを差し上げなければ。本人の意向もあるだろうが、めでたく(五輪の)開会式ができれば、一緒に並んで世界のお客様を迎えたい。招致活動からその貢献は極めて大きかったですから」と語っている。

それを受けるようにして、菅義偉総理も「私の内閣の一番の仕事は東京五輪の開催です」と森会長に語った。菅政権誕生後、日本政府は明らかに東京五輪開催に大きく舵を切っている。

IOCが日本のVIPで最も信頼しているのは安倍前首相だ。IOCバッハ会長との間には強い信頼関係で結ばれている。東京五輪開催が決まったのは2013年9月7日のIOC総会。安倍前首相はこの時のスピーチで福島原発の汚染水問題について「状況はコントロールされている」と発言。世界各国のIOC委員に大きなインパクトを残した。バッハ会長もその一人。奇しくもこの総会で第9代IOC会長に選出されている。

そして16年リオデジャネイロ五輪閉会式では人気ゲームキャクター「マリオ」に扮装して東京五輪をPR。極めつけは今年の3月24日だ。深夜の首相官邸で行われたバッハ会長との電話会談。「東京五輪を1年延期させていただきたい」と安倍元首相が直談判し、中止を視野に入れていたバッハ会長からも「100%賛同したい」と同意を得られた。2人の関係が良好以上だったからこそ合意したものである。

また安倍前首相の突然の辞任の際にもバッハ会長は「安倍首相の突然の辞任は悲しい。しかし、大会を1年延期するという解決策を見つけることができた。首相は常に信頼できるストロング・パートナーだった」とIOC公式ホームベージで表明した。また安倍首相の辞任の一報を聞いて、バッハ会長の方が「安倍がいなくなっても大丈夫なのか」と森会長へ緊急電話会談を要請した。それだけ2人の絆は今でもあつい。

森会長が今回、安倍前首相に東京五輪の名誉最高顧問に就任要請した理由の一つに、自分が今までスポーツ界においても果たしてきた役割の“政権交代”の意味もあるのだという。全国紙自民党担当記者はこう明かす。

「森会長も東京五輪を最後にさすがに勇退します。そしてこれまで森会長がやってきた日本スポーツ界のしっかりまとめていくことを安倍さんに禅譲したい、という思いがある」

安倍前首相をスポーツ界に引っ張ったのは他ならぬ森会長だ。2005年4月、日本体育協会(現日本スポーツ協会)会長に就任した際に、安倍前首相が大学時代にプレーしていたという理由だけで全日本アーチェリー連盟会長への就任を要請した。そして今回も森会長が東京五輪の名誉顧問を要請した後に全日本アーチェリー連盟も安倍前首相へ連盟会長に復帰のお願いをした。

首相時代は兼任できない規則もあったが、退任してすぐ要請したという。10月1日からこの役職にもついた。近い将来、安倍前首相に2030年札幌五輪の招致のリーダーシップをとってほしい、という思惑もあるのだ。

昨年6月、IOCは日本国内企業の東京五輪スポンサー契約総額が30億㌦(約3300億円)と発表した。この空前絶後の金額に、IOCジョン・コーツ調整委員長も「驚異的な金額」と興奮気味にコメントしていた。というのも、過去の夏大会の最高額(12年ロンドン大会)の3倍も金額を集めたからだ。

東京五輪では「一業種1社」という慣例を排除したことで相乗りした企業が多数あった。またこれとは別にトヨタ、パナソニック、ブリヂストンの3社はIOCとトップスポンサー契約を結んでいる。東京五輪のスポンサー契約は今年12月には満了を迎える。五輪延期が決まった際にはコロナ不況の影響もあり撤退続出の可能性もあった。

しかし、組織委員会の武藤敏郎事務総長は9月の組織委員会理事会の際に「パートナー(企業)の皆さんは大会の成功を強く願っていただいている」とした上で国内68社のスポンサーの動向を「全スポンサーが(契約延長へ)前向きに検討をしていただいている」と話した。IOCも東京五輪を開催することでスポンサーから違約金を要求されることはない。

「何としても東京五輪はやる!」という両者の思惑が完全に一致、そして強力タッグを組める見通しが立った後に発信された、安倍前首相による「五輪はやります」発言。これは東京五輪開催に追い風を吹かせる「誓い」とも受け取れる宣言に他ならない。

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