400億円で本格的にスマホ金融参戦「LINE証券」本当の狙い | FRIDAYデジタル

400億円で本格的にスマホ金融参戦「LINE証券」本当の狙い 

1年で31万口座開設 超人気銘柄が1株から買えると話題に

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昨年8月にサービスの開始を発表したLINE証券共同CEOの落合紀貴氏(右)と米永吉和氏。コロナ禍で同社の新規口座は急増した 写真:時事
昨年8月にサービスの開始を発表したLINE証券共同CEOの落合紀貴氏(右)と米永吉和氏。コロナ禍で同社の新規口座は急増した 写真:時事

株をどれだけ買っても、手数料はタダ。売るときに初めて手数料を取られる。これまでの証券会社とは一線を画す考え方で若者を中心に支持を集めているのが、LINE証券だ。

日本人の日常的なコミュニケーションツールとなったLINEだが、その「ウォレット」の中にLINE証券への窓口が組み込まれている。口座開設は至って簡単(下表参照)。スマホで基本情報を入力し、写真入りのマイナンバーカードか運転免許証と自分の顔写真を撮影して登録すれば、最短で翌営業日には取引ができるという。同社取締役執行役員のイ・ウォンチョル氏が話す。

「昨年8月にサービスを開始してから1年で31万口座を獲得しました。顧客の年齢層を見ると、20代と30代のユーザーが53%を占めています。これから資産形成をしていく層から支持を得ていると実感していますし、そのためのサービスを考えています。

今後の資産形成のためには頻繁に売り買いを行うのではなく、着実に積み立てていくべきと考えたときに、株を買うときには手数料がかからないほうがいいだろう、というシンプルな発想です。今は収益についてはあまり考えず、顧客獲得を優先しています。

とはいえ、手数料ゼロを将来的にも継続させるためには何かしら収益を生み出すものを作らないといけません。LINEはコミュニケーションツールなので、そこを強みにして、たとえば顧客が投資の相談をしやすくするなど、ビジネス化する手段を考えていくつもりです」

『ユニクロ』の株主になれる

LINE証券は、証券業界のガリバーである野村證券を傘下に持つ野村ホールディングスとLINEの金融子会社LINE Financialが200億円を出資して設立された。今年4月にはさらに200億円の出資を受け、手元資金は400億円と膨れ上がっている。そんな同社の強みの一つが、『いちかぶ』という名称の「単元未満株」売買サービスだ。

たとえば、世界中で『ユニクロ』を展開して世界3位のアパレル小売りとなったファーストリテイリングの株を買ってみたいと思っても、原則100株単位でしか買うことができないため、約690万円もの投資資金が必要となる。それを1株単位で買えるようにしたため、ファーストリテイリングの株なら約6万9000円から投資が可能だ。

「他のネット証券でも単元未満株の売買はできますが、ほとんどは前場や後場の終値といった、決められた時間の株価での売買になります。しかし、LINE証券ではリアルタイムの株価で売買ができるのが特徴です。扱っている株は1015銘柄で、有名どころはほとんどカバーできていると思います。

ただし、単元株の購入とは異なり、売買に取引コストがかかります。銘柄によってグループAからCに分けていて、日中取引の場合、Aなら0.2%、Bなら0.3%、Cなら0.4%です」(イ氏)

ファーストリテイリングはグループAのため、一度の購入で百数十円のコストがかかる。

LINE証券の「本当の狙い」は、投資初心者にとにかく株取引を「体験」してもらって、資産運用について真剣に考えてもらうことにあるとイ氏は続ける。

「これからは自分で資産を運用しなければ生きていけない時代になっていくように思います。にもかかわらず、証券会社をはじめとする金融機関は、『適当な投資信託をいくつか積み立てで購入しておけば大丈夫』のような、けっこう乱暴な説明しかしていないように感じます。銘柄や時間を分散させることの意味は、初心者には理解しにくい。それを理解するには、『体験する』ことに尽きます。

投資に『100%儲かる』はありません。損するときもある。そのときに、立ち直れないほどの大怪我を負わないために、私たちが提供する『いちかぶ』サービスで取引を体験して、経験を積むことはすごく大切なことだと思っています。

LINE証券は今後、大手証券会社と同等になるようサービスメニューを拡充していくので、初心者が生涯付き合ってくれる証券会社になりたいですね」

マネーコンサルタントでMoney&You代表の頼藤太希氏も、LINE証券に注目しているという。

「最大で株が7%OFFになる『タイムセール』キャンペーンはこれまでにない発想でした。口座開設で最大3株分の購入代金がもらえるキャンペーンもユニークで面白い。1株単位で購入するデメリットは株主優待が期待できないことぐらいで、配当もつきます。少額で買えるからと、あれもこれもと手を広げるのではなく、初心者のうちは片手で数えられる範囲で投資するのがおすすめです」

新型コロナで儲ける

では、どのような株に投資するのがいいか。株式アナリストの鈴木一之氏が、1株単位で買うことを前提に推奨銘柄を挙げる。

「欧米を中心に新型コロナが再び流行の兆(きざ)しを見せ、日本も他人事ではありません。結局、コロナ禍での巣ごもり消費はしばらく続きそうです。そうなると、年末商戦の期待もあるゲーム機大手の任天堂は引き続き注目を集めるでしょう。国内では、テレワークが定着し、地方へ移住する人が増えています。彼らの引っ越し需要から、『お、ねだん以上。』の家具に定評があるニトリホールディングスも好調を維持するはずです」

新興企業が上場する東証マザーズでも将来性の高さから株価が高騰し、単元株では100万円以上になって手が出しにくい「値がさ株」が存在する。これらを1株単位で持っておくのも楽しみだ。

「菅政権はデジタル・トランスフォーメーションを政策に掲げていますが、ITは引き続き、飛躍的に進化していきます。いよいよ本格的に展開する5G(次世代移動通信システム)も相まって、ITベンチャーにさらなる熱視線が注がれるはずです。オフィスでの契約業務のデジタル化の分野では、AI insideや弁護士ドットコムに注目が集まっています。中小・零細企業にITの力で営業支援などを行うマクアケは、さらなる成長が期待できます」(鈴木氏)

証券ジャーナリストの今野浩明氏は、コロナ禍を乗り越えるような将来性がある企業と、悲観的になって売られすぎている銘柄を挙げる。こちらは単元株で10万円を切るお手頃な株価である。

「テクノスジャパンは企業に基幹システム用のソフトを提供するITコンサルティング会社。業界全体が右肩上がりの中で、株価はまだ割安です。CEホールディングスは電子カルテのシステムを開発していて、今後、遠隔診療が一般化していく中で業績は伸びるでしょう。

一方、売られすぎの銘柄も散見されます。三越伊勢丹ホールディングスは新型コロナの影響をもろに受けていますが、来年になって収まれば、海外の富裕層が戻ってきます。それなのに現在、PBR(株価純資産倍率)は0.44倍と、資産価値の半分以下の水準に放置されたままです。千葉興業銀行に至っては、PBRは0.15倍。菅政権は地銀再編を掲げていますが、同行がその対象になった場合には高騰するのではないか」

10万円程度ならばリスクを取ってもダメージは少ない。まずは株式投資を「体験」することが重要だ。

FRIDAY20201030日・116日号より

  • 写真時事(1枚目)

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