『ドラフト会議』直前「今年の目玉選手」がようやく見えてきた

この中に将来のエース&4番がいる!

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早稲田大 早川隆久 投手 179㎝72㎏(木更津総合)

早稲田大 早川隆久 投手 179㎝72㎏(木更津総合)入学から一度もリーグの優勝がなく、「それが何より悔しい。早稲田では優勝を経験していない代のほうが少ない」と唇を嚙む。開催中の秋季リーグには10球団のスカウトがバックネット裏に陣取った

大学生が〝豊作〟とされる今年のドラフトの顔は、投手は早稲田大の左腕・早川隆久、野手ならば巨人の指名が囁かれる近畿大の大型三塁手・佐藤輝明だ。

早川を指導する早大野球部の小宮山悟監督(元千葉ロッテほか)は、「人の投げられないボールを投げられる。それが最大の武器」と、最速155キロにまで達した愛弟子の成長を手放しで称賛する。

早川は言う。

「球速は対戦相手にインパクトを与えて、自分を実際より大きく見せてくれているとは思いますが、自分自身は数字にこだわりはないんです。ただ、155という数字があるからこそ、相手は真っ直ぐを意識して向かってくる。そこでカットボールや緩急をつけるチェンジアップで打者をかわすのが、自分の持ち味だと思います」

9月19日の東京六大学野球秋季リーグの第一週・明治戦では17個、翌々週の法政戦では13個の三振を奪うワンマンショーとなった。

「自分としては三振をたくさん奪うよりも、9回を27球で終わらせたいタイプ。プロに入っても、ピンチを作らないような投球を心がけたいです。今は主将としてドラフトよりもリーグ戦に集中して、チームを良い形で終わらせたい」

早川は千葉に生まれ育ち、千葉ロッテのファン。となると、意中の球団は――。

 「指名してもらいたい球団があるとするなら関東というか……。どこでもOKなのですが、できることなら早稲田の先輩や大学日本代表で一緒になった先輩がいる球団がやりやすいかなと思います」

威風堂々としたマウンドの立ち居振る舞いとは打って変わり、ユニフォームを脱いだ早川は謙虚な好青年という印象だ。

対照的に、自信に充ち満ちた言動で取材者を圧倒したのが、近畿大の佐藤だ。

「自分の性格はマイペース。周囲に合わせることが嫌いで、自分が好きなことをやるという感じで生きてきました(笑)」

佐藤がプロを目指したのは、仁川学院(兵庫)の2年生の夏だった。けっして強豪とは言えない同校で、目立った実績もない佐藤だったが、根拠のない自信だけは強く持っていた。

「そこまで努力しなくても何でもすぐにできたし、野球センスみたいなものは持っていたと思う。本気で目指せばいずれプロになれると信じていました」

近大の田中秀昌監督は、高校3年生だった佐藤を練習で一目見て、「こんな才能が隠れていたのか」と驚き、すぐに入学の手続きを整え、プロ入りに向け1年春から外野のレギュラーに起用した。三塁手となってもグラブさばきは器用で、さらには強肩で、健脚も併せ持つ。

走攻守いずれもハイレベルだが、やはり長打力が一番の魅力だろう。フリー打撃を見ていると、左打者の佐藤は意図的に逆方向に弾き返す練習を繰り返していた。

「コースに逆らわず、外に来たボールなら向こう(左方向)に打つことだけを考えています。長打力には自信がありますが、まだまだアベレージを残せていないことと、対応力がこれからの課題です」

「野球人生で挫折はない」と話し、まるで自尊心の塊のような選手。明らかにプロ向きの性格である。佐藤は幼い頃からイチローに憧れ、メジャーリーグ中継を見ながら、ブライス・ハーパーなどメジャーを代表する大打者たちの打撃フォームを参考にしてきた。

「もちろん、メジャー挑戦も、夢として持っています。とにかく、子どもたちに夢を与えられるような選手になりたい」

大学生には逸材だらけ

今年のドラフトは、即戦力投手を欲する球団と、巨人のように、打撃への期待が高い大型野手を欲する球団に二極化することが予想される。

そうした状況のなかで、目玉の早川に続く即戦力投手として注目を集めているのが、苫小牧駒大・伊藤大海や慶應大学の木澤尚文、そして明治大の入江大生だ。

栃木・作新学院時代の入江は、エース・今井達也(現・埼玉西武)の控え投手という立場で一塁を守ることが多かったが、明治大に入って投手に専念。一学年上の森下暢仁(まさと)(現・広島)の背中を追い、エース番号の「11」を受け継いだ。

「先にプロの世界に入った今井の活躍する姿を見て、自分も頑張らないといけないと思って野球に取り組んできました。いずれは今井に追いつき、追い越したい。森下さんから学んだのは、マウンド上の気持ちの整え方。熱くなりすぎず、冷静にもなりすぎず。オンとオフの切り換えも上手。森下さんは天才です」

日本体育大学の森博人も、右腕の振りが鋭く強いMAX155キロの豪腕である。

「強い真っ直ぐを投げられるということと、オーバースローより少し低い腕の出所で、打者に対して角度がつけられるのが自分の持ち味です。入学時に64㎏しかなかった自分が、この4年間で80㎏になりました。日体大にはトレーニング方法や栄養学、コンディショニング、ストレッチの授業もある。学んだ知識は必ずプロでも役に立つと思います」

プロでの大化けを期待してしまう投手といえば、早大の身長2m左腕・今西拓弥。入学当初は130キロ前半の球速だったが、身長に肉体の成長が追いつくにつれ140キロ台に。規格外の体格でマウンドに立つ今西には、大物感が漂う。

「この身体があったからこそ、早稲田にも入れた。身長と手の長さを活(い)かした、他のピッチャーにはない縦と横の角度がついた真っ直ぐをインコースに投げ込めることが一番の強みだと思います」

今年のドラフトは、俊足好打の野手が上位候補に多いのも特徴だ。その代表格が中央大の二人。大学日本代表で4番を打った内野手・牧秀悟と、リードオフマンだった中堅手・五十幡亮汰である。

牧は「勝負強さ」を自身のセールスポイントとして語る。

「チャンスの場面で、緊張することなく冷静でいられるメンタルの強さはあると思います。それを保つためには、守備を丁寧に行うことが大事です。エラーしてしまうと、打撃で取り返さないといけないと思って、冷静さを失ってしまいますから。打撃では手だけではなく、身体全体を使って打つことを心がけています」

牧は同じ右打者の鈴木誠也(広島)や坂本勇人(巨人)の映像を観ながら、強い球を弾き返すイメージを抱いて練習や試合に臨んでいる。

「1年目から活躍したい。将来的には打点王などのタイトルを獲りたいし、最終的には日本を代表する右打者になりたい」

50m走が5秒6という五十幡は、中学3年時に全日本中学校陸上選手権の100mと200mで優勝。その際、同走していたのがサニブラウン・ハキームであり、以来、五十幡の野球人生には〝サニブラウンに勝った男〟の渾名(あだな)が付いて回った。

「今や100mの日本記録(9秒97)保持者である彼に申し訳なく思っています。プロに入ったら、自分の名前だけで注目されたいです。(注目を集める盗塁に関しては)まず勇気が大事。〝刺せるものなら刺してみろ〟と思い切りよくスタートし、セーフになりにいく技術も必要です」

足だけでなく、遠投120mの肩も五十幡の武器だ。目標とするプロ野球選手として、秋山翔吾(レッズ)や青木宣親(ヤクルト)の名を挙げた。

この五十幡よりも足が速いと言われるのが、獨協大の並木秀尊である。

「自分の一番の売りは盗塁。ちゃんとスタートを切れたら、成功すると思っています。プロで通用するかはわからないですが、挑戦したいという気持ちがあります。目指す理想は走攻守揃ったイチロー選手やロッテの荻野貴司選手です」

超高校級投手と即戦力社会人

一方で高校生は例年に比べると、小粒な印象を受けがちだ。昨年、2年生ながら明石商業を春夏連続で甲子園ベスト4に導いた投打の柱、エースの中森俊介と外野手の来田涼斗は数少ないスター候補。他には福岡大大濠の投手・山下舜平大くらいだが、会議まで3週間を切ったタイミングで状況が変わった。

慶應大のAO入試に不合格となった高校生No.1投手・髙橋宏斗(中京大中京)がプロ志望届を提出したのだ。これにより各球団の戦略が変わることは確実。この髙橋と前出の早川、佐藤を巡って、複数の球団が競合することになるだろう。

忘れてはいけないのが、即戦力となる社会人。もちろん上位候補が存在する。

なかでもトヨタ自動車の栗林良吏は、150キロを超える直球と、カーブやカットボール、フォークを操る。先発でもリリーフとしても活躍が期待できる右腕だ。

栗林に続く逸材が、NTT西日本の大江克哉やJR東日本の伊藤将司だろう。

横浜高校から国際武道大を経て、2年目を迎えた伊藤は言う。

「(日本ハムの)淺間大基、高濱祐仁、(楽天の)渡邊佳明……横浜高校の同級生がプロで活躍しています。刺激になりますし、自分も早くそこに立ちたい」

同級生の背を追うのは、NTT西日本で大江の球を受ける辻本勇樹も同じだ。今年度の捕手ではトップ評価の辻本は、北海高校の出身。甲子園こそ到達できなかったが、同じチームには戸川大輔、佐藤龍世という共に今は西武に在籍する仲間がいた。仙台大を経て社会人2年目の今年、辻本は初めて運命のドラフトに自身の将来をゆだねる立場となった。

「今が野球人生で一番、練習量は多い。自主練を含めて、だいたい9時半から18時まで。大学卒業の時はプロでやっていける自信はありませんでしたが、今は違います。肩の強さと、走れるというのも、自分のアピールしたい部分です。ただ、大江は指名が確実でしょうが、自分はそういう立場ではないと思っている。普段と変わらない生活を心がけていますよ」

周囲の喧騒をよそに、ドラフト候補たちは静かに10月26日を待っている。

近畿大学 佐藤輝明 内野手 186㎝92㎏(仁川学院)

近畿大学 佐藤輝明 内野手 186㎝92㎏(仁川学院) 巨人や阪神が1位候補とし、オリックスは1位指名を公言。その体格からOBの「糸井嘉男2世」とも。10月12日の立命大戦で本塁打を放ち、OBの二岡智宏の関西学生リーグ記録13本に並ぶ(撮影:加藤 慶)

中央大 五十幡(いそばた)亮汰 外野手 172㎝67㎏(佐野日大) 中央大 牧 秀悟 内野手 178㎝81㎏(松本第一)

中央大 五十幡(いそばた)亮汰 外野手(右)圧倒的な俊足と広角に打ち分ける打撃が魅力 中央大 牧 秀悟 内野手(左)大学で急成長。大学日本代表では4番を務めた右の長距離砲で、セカンドの守備にも定評がある(撮影:濱崎慎司)

明治大学 入江大生(たいせい) 投手 187㎝84㎏(作新学院)

明治大学 入江大生(たいせい) 投手 187㎝84㎏(作新学院)10月11日の法政戦で、13三振を奪って完封勝利を挙げて、スカウト陣に猛アピール。「決め球は縦のスライダーとフォーク。先発、中継ぎ、抑えとなんでも対応できる投手になりたい」(撮影:濱崎慎司)

獨協大 並木秀尊(ひでたか) 外野手 170㎝70㎏(市立川口)

獨協大 並木秀尊(ひでたか) 外野手 170㎝70㎏(市立川口)同大初のプロ野球選手となるか注目を集める。「プレッシャーはあるが、自分が大学のイメージを作れるのは楽しみ」(撮影:小松寛之)

早稲田大 今西拓弥 投手 200㎝90㎏(広陵)

早稲田大 今西拓弥 投手 200㎝90㎏(広陵)最速147キロの直球とスライダー、カーブが武器。馬場正平(ジャイアント馬場)以来の身長2m台のプロ選手誕生か

日本体育大 森 博人 投手 177㎝80㎏(豊川)

日本体育大 森 博人 投手 177㎝80㎏(豊川)最速155キロの本格派右腕。ボールに書かれた座右の銘は「走姿顕心」(走っている姿にはその人の心が顕れる)(撮影:結束武郎)

明石商業高 来田涼斗(きたりょうと) 外野手 180㎝85㎏ 明石商業高 中森俊介 投手 183㎝89㎏

明石商業高 来田涼斗(きたりょうと) 外野手 (右)ホームランも打てるリードオフマン。高校通算で34本塁打を放ち、甲子園でも3本塁打を記録 明石商業高 中森俊介 投手多彩な変化球と高い制球力に加えて、ストレートはMAX151キロ(撮影:加藤 慶)

福岡大大濠高 山下舜平大(しゅんぺいた) 投手 188㎝93㎏

福岡大大濠高 山下舜平大(しゅんぺいた) 投手 188㎝93㎏  恵まれた体から投げ込む150キロの直球とカーブで勝負する。名前の由来は経済学者シュンぺーター(撮影:小池義弘)

中京大中京高 髙橋宏斗(ひろと) 投手 183㎝84㎏

中京大中京高 髙橋宏斗(ひろと) 投手 183㎝84㎏  進学志望から一転してプロ志望に変更。最速154キロを誇る超高校級右腕だけに1位指名は確実だ(撮影:小池義弘)

NTT西日本 辻本勇樹 捕手 173㎝73㎏(北海高︲仙台大)

NTT西日本 辻本勇樹 捕手 173㎝73㎏(北海高︲仙台大)小柄だが、スローイングとリードの良さから、今年のドラフト候補の中では、No.1捕手の呼び声が高い(撮影:加藤 慶)

トヨタ自動車 栗林良吏(りょうじ) 投手 177㎝80㎏(愛知黎明高︲名城大)

トヨタ自動車 栗林良吏(りょうじ) 投手 177㎝80㎏(愛知黎明高︲名城大)総合力が高い社会人No.1投手。最速153キロ。投手不足に悩む球団が1位指名で一本釣りを狙ってくるか

JR東日本 伊藤将司 投手 178㎝85㎏(横浜高︲国際武道大)

JR東日本 伊藤将司 投手 178㎝85㎏(横浜高︲国際武道大)高校時代には県大会で、桐光学園の松井裕樹(現楽天)に投げ勝ったことも。チェンジアップとカットボールが決め球。「どういう状況でも、先発したら試合を作ることがプレースタイル」(撮影:小松寛之)
2020年10月30日・11月6日号より
  • 柳川悠二(ノンフィクションライター)撮影小松寛之、加藤慶、濱崎慎治、結束武郎、小池義弘

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