「大奥」で猫を堪能できるマンガ『猫奥』の新しさ | FRIDAYデジタル

「大奥」で猫を堪能できるマンガ『猫奥』の新しさ

第1話から第5話までの試し読み付き!

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「猫マンガ」は数あれど、猫好きの間で「いま一番リアルで面白い猫マンガ」と評判になっている作品がある。それが「モーニング」で連載中の『猫奥』だ。舞台は江戸時代の大奥で、本当は猫好きなのに猫嫌いだと思われている御年寄(偉い人)の滝山が、密かに他人の飼い猫を愛でたり愛でられなかったりするストーリーだ。その『猫奥』の単行本第1巻が10月23日に発売になる。そこで、作者の山村東(やまむら・はる)氏にインタビューし、この作品が誕生した背景などを聞いてみた。

ーー『猫奥』は設定が絶妙だと感じます。そもそも猫はツンデレで、こちらの思い通りにはなりません。それに加えて、主人公の滝山は周囲から猫嫌いだと思われている。猫を愛でるまでのハードルが二つあるのが面白いな、と。このような設定にした経緯は?

「連載開始まえに、滝山っぽい人物と猫をいろいろ描いてみたんですが、どうもこの猫は滝山の飼い猫じゃない気がしまして。なんとなくなんですけど。で、担当さんにその話をしたら面白がってくれたので、こういう設定になりました。ただ、滝山は最初、もっと美人にしたかったんです。そしたら担当さんから『もっと怖くして』と言われまして。それであのような目つきになりました。でもこの顔にしたら、猫を愛でられた時の顔とのギャップが生まれて、キャラが動かしやすくなったので助かってます」

ーー作品に登場する猫「吉野ちゃん」や「こはるちゃん」にはモデルとなった猫はいるんでしょうか?

「特にモデルはいないんです。『吉野ちゃん』は白黒の猫がかわいいなあと思って、『こはるちゃん』は三毛猫がかわいいなあと思って出しました。うちでも2匹、猫を飼ってるんですけど、15歳のシャムと9歳のシャム柄の雑種で『猫奥』の猫とは見た目も性格も全然違いますね」

ーー連載開始の時点で47歳と伺いました。いわゆる「遅咲き」だと思うのですが、デビューまでの経緯を教えてください。

「大学を卒業してから5年ほど高校の教師をしていました。同人誌にハマってたダメ教師だったんですけど。で、6年目に研修を受けなきゃならないんですが、どうしてもそれが嫌で辞めちゃいました。そのあと『モーニング』の新人賞に応募して、賞に入って担当さんがついてくれたにもかかわらず、その当時は描きたいことも見つからず、なんとなく没交渉になっちゃいまして。それから結婚して子供を産んで、主婦をしてました」

ーー全然デビューに至りませんが。

「それが、2018年に『モーニング』の『THE GATE』という新人賞で、大好きな山岸凉子先生が審査員をされるということを知ったんです。なんとかいちばん下の賞にでも引っかかれば山岸先生にお会いできるかもしれないと思って、10数年ぶりに投稿をしたんですよ。そしたら思いがけず大賞をいただいて、山岸先生にもお会いできて、今同じ雑誌で連載もしているという、まあ奇跡みたいな感じです」

ーーその時の投稿作『フク』も、やはり江戸と猫を題材にした話ですね。

「投稿するにあたって、自分に何ができて何ができないかを考えました。まず江戸が好きなので江戸を描こうと決めました。でもそれだけじゃまだ広すぎるので、猫も好きだから江戸と猫で行こうと。以前投稿した時は、自分に何が描けるのか見つからなかったので、やはり時間が必要だったのかもしれませんね」

ーー江戸の猫事情って今と違ってたりするんですか?

「江戸時代は猫は貴重品だったんです。現代みたいな愛玩するために飼うのではなく、基本的にはネズミを捕まえさせるために飼う貴重な動物ですね。だからネズミの被害に悩んでて、でも猫が飼えないところでは猫神さまといって、石に猫の像を彫って祀っていた地方もあるみたいです。それと対照的なのが大奥ですね。今と同じように愛玩動物として飼っていたので。明治になって書かれた文献には、大奥ではバカみたいに猫を可愛がっていたと書かれているものもあります。猫だけじゃなくて犬や金魚なども飼っていたみたいですけど」

ーー『猫奥』に出てくる猫は、失礼ながらあんまり可愛くない(笑)。でもそこがすごくリアルに感じます。

「猫って、こっちが可愛いでしょ可愛いでしょって押し付けなくても十分に可愛いと思うんですよ。だから自分にできることは猫を真面目に描くことだと思ってます」

これが滝山と吉野ちゃん!

ーーそれまでも猫は描いていたんですか?

「それが全然。いやもう、本当に難しいです。頭のふわふわしてる部分の質感がどうしても出ない、とか。骨格もすごく難しい。最終的にはぐにゃぐにゃしてればいいやって思うようにしてます。うちの猫を見たり写真を見たりしてますけど、ものすごく描き直しをします。どうしても人間ぽくなっちゃったりするんですよ、鼻筋がスーッとしすぎたりして」

ーー原稿はアナログなんですか?

「アナログです。全部手描きです」

ーー猫の魅力ってどんなところでしょう?

「全部です(キッパリ)。神が作った最高傑作じゃないですか。大きさ、暖かさ、体がぐにゃっとするところ、匂い、全部完璧ですね。もうそこに寝転がってるだけで最高です。しかも、どの猫も素晴らしいんですよ! 猫好きの人ってどの猫も好きだよねって言われたことがあるんですけど、確かにそうで、どの猫もあまねく好きですね」

ーーでは、ぜひ言っておきたいことがあればどうぞ。

「『猫奥』は江戸時代なので放し飼いなんですが、猫は室内飼いをした方がいいですよ。その方が危険も少ないし、周囲に迷惑にもならないので」

ーーいや、マンガの見どころとか、そういう話では?

「あ、そうでした。登場人物は全て実在した人なんです。ですので、猫好きな人はもちろん、時代モノが好きな人にも楽しんでもらえるかなと思います」

ーーこれから描いてみたい展開は?

「いつかは、泣かせる話を描いてみたいと思ってます。もちろん、猫が死ぬとかそういう悲しい話ではないです。6ページの中でどうすれば泣ける話ができるのか模索しているところです」

ーー今日はどうもありがとうございました。

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