中居正広がMCを務める番組で炸裂させる「音楽愛」の凄み | FRIDAYデジタル

中居正広がMCを務める番組で炸裂させる「音楽愛」の凄み

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“神会見”と絶賛された中居正広独立の記者会見
“神会見”と絶賛された中居正広独立の記者会見

中居正広がMCを務める番組は面白い。最近、あらためてそう思うことが多くなった。

新型コロナウィルス感染症の世界的な流行以来、ニュースとワイドショーの中間ぐらいの真面目さと気軽さで、「そうそう、それが知りたかった!」みたいな痒いところに手が届く情報を発信してくれたのは『ニュースな会』だし、10月6日の『金スマ』郷ひろみスペシャルでは、郷ひろみのジャニー喜多川への思いを聞くことができ、まさにジャニヲタにとっての神回だった。

また、1016日深夜の『新・日本男児と中居』のゲストはジャニーズのダンスを研究するユーチューバーがゲストで、中居のダンスに対する姿勢、こだわりなどが聞けたこちらも神回。『新・日本男児~』はHuluで過去のアーカイブが観られるのも有難い。『ナカイの窓』が終了したときは、「なぜこんなに面白い番組を!」と理不尽さを感じていたものだが、今は、『新・日本男児~』によって、『ナカイの窓』ロスはかなり埋められるようになった。

ますます存在感を増す冠番組での中居独自のMC力

今年3月いっぱいでジャニーズを退所して以来、SMAPの残るメンバー4人に比べ、中居の活動はおとなしいという印象が否めなかった。

木村拓哉の音楽活動や新しい地図の3人の活躍――香取慎吾なら“ユーチューバーしんごちん”として、「香水」や「夜に駆ける」をカバーしたり、草彅剛が『ミッドナイトスワン』で演技を絶賛されたり、稲垣吾郎が朝ドラや手塚治虫原作映画などに出演し、当たり役の舞台の再再演が決定したり――という華々しさに比べて、目新しさや話題性に欠けているように感じていた。が、ここへきて、それぞれの冠番組で、中居にしかできないスタンスでのMCで、存在感を発揮しているように見える。

とりわけ、17日の『ニュースな会』は素晴らしかった。SMAPの「心の鏡」(92年発売のSMAP 3rdシングル)「負けるなBaby!Never give up(92年発売のSMAPthシングル) BEST FRIEND」(「負けるな~」のカップリング曲)などを作曲した天才的職業作曲家・筒美京平逝去のニュースを受け、冒頭から約30分にわたり、「追悼・筒美京平」とでもいうべきコーナーを設けたのである。

このニュースに初めて接したとき筆者は、「すぐ『関ジャム』で特集を組むべき!」と思った。でも、報道番組でも生放送でもない『関ジャム』の場合、メンバーとゲストを集めてすぐ追悼番組にかかれるような体制ではない。コロナ禍ということもあり、たとえ筒美京平特集があるにしても、放送は1ヵ月後ぐらいかな、と勝手な想像を巡らせていた。

「歌ヘタ」中居が筒美京平特集で見せたJ-POPへの愛

そんな中、『ニュースな会』は早かった。ゲストは『関ジャム』でもお馴染みの音楽プロデューサー・松尾潔。筒美が作曲した「センチメンタル・ジャーニー」でデビューした松本伊代も出演していた。松尾が、「この曲もあの曲も筒美京平~」と紹介する中で、尾崎紀世彦の「また会う日まで」のジャケットが映し出されると、中居は、「この曲、大好き!」と叫んだり、普段よりも俄然生き生きとして見えた(もちろん、扱うテーマによってテンションをコントロールしているのは分かっているが)。

そうなのだ。中居は「歌ヘタ」を自認しているけれど、芸能人屈指の音楽好きなのだ。しかも、マイケル・ジャクソン的なカリスマを除けば、自身の音楽的ルーツは昭和の歌謡曲と昭和から平成にかけて台頭したJ-POPにあることを自覚している。洋楽にかぶれることなく、日本人の好きなメロディーラインやハーモニーの妙、曲に込められた日本語詞の奥行きを見出す才能は、生まれ持った感性以上に、好きなものを徹底的に研究・分析し、作り手と歌い手に対して最大級の敬意を払う姿勢に支えられている。

さすがは舞祭組(ブサイク)を世に送り出した敏腕プロデューサー。生み出された楽曲にしても、舞祭組とのやりとりにしても、一見ふざけているようで、すべてに緻密な計算が働いているのである。

90年代には、あの小室哲哉の冠番組『TK MUSIC CLAMP』2代目MCを1年間務めた経験もあれば、その役割を香取慎吾に委譲する2008年まではSMAPのコンサートの構成もほぼ中居の担当だった(1998年の『LIVE AMIGOS!』に関しては木村拓哉の構成とされている)。覚醒剤取締法違反で芸能活動の自粛を余儀なくされ、復帰後まだ大きな仕事のなかった槇原敬之に楽曲提供を依頼したのも中居だ。そこから、あの「世界に一つだけの花」が生まれたのである。

話を『ニュースな会』に戻そう。番組内で、松尾がプロデューサーらしく、「筒美京平の作曲テクニック」について話しながら、「サビ前にフックになる英語を入れることがあって、それもついつい真似をしたくなった」とコメントした場面があった。すると、中居がすかさず、「(松尾の作ったSMAPの)『GO NOW!』にも、サビ前の英語、入ってるよね? 『GO NOW!』って。あれ、筒美さんのテクニックを取り入れてたんだ!」と嬉しそうにツッコミを入れたのである。それを聞いた松尾は、「よく気付いてくれましたね」と嬉しそうに笑い、そのやりとりが、スマヲタ的にはたまらなく楽しかった。

番組内で、「編曲とは何か」まで視聴者にわかりやすいように松尾に説明させた中居が、シングル曲でもない「GO NOW!」の名前を出したことは、極めて珍しい。なぜなら彼の番組作りは、「子供からお年寄りまで、“わからない”を無くしていくこと」を前提にしているからだ。

この「GO NOW!」という曲は、2002年にリリースされたアルバム「Drink! Smap!」に収録されていて「SMAP×SMAP」で披露されたこともあったと思うが、いずれにせよ「ファンのみぞ知る」楽曲である。しかもそのクレジットは、松尾潔ではなく「立田野純」名義。立田野純が松尾潔の別名であると知らなければ、まさか当時一世を風靡していたCHEMISTRYのプロデューサーが関わっている曲とは気づかないだろう。

当時は、コンサートを前提としたアルバム曲制作にあたり、「〇〇さんに依頼しよう」と主導権を握っていたのは中居で(もちろんレコード会社のディレクターや、その他のスタッフの助言もあったと思うが)、前述の「世界に一つだけの花」も含め、このアルバムとそれを提げたツアーの完成度はハンパなかった。

サッカーの日韓ワールドカップで使用された全国のスタジアムもライヴ会場に使用した「Drink! Smap!」アルバムツアー「Smap! Tour! 2002!」は、日本でSMAPのライヴが最先端で、最大規模で、最高にカッコよくて、最高に楽しくて、たくさんのサプライズに満ちていることを実感できたツアーだったのである。

また、この前年に道路交通法違反で稲垣吾郎が5ヵ月間活動を自粛し、いわば「復帰ライヴ」となった意味でもメモリアルだ。アルバム2曲めに収録された「GO NOW!」は、タイトルも含め、稲垣に「おかえり、再出発だよ」と呼びかけるような歌詞の内容になっていて、SMAPらしいハングリーな言葉も入れ込みながら、最終的には「今を生きること」の大切さをさりげなく心に刻めるような展開になっている。

今こそ、中居正広に音楽番組を!

中居正広の顔は、スポーツとミュージックを語っている時によりキラキラと輝く。ミュージックにダンスが絡めば尚更だ。

『ニュースな会』でも、「『抱きしめてTONIGHT』の解説が聞きたい!」と言っていたが、筒美京平があのダンスの名曲をどんなふうに作ったのかに興味があったのだろう。そうして、番組を観ながら筆者は猛烈に思ったのだ。「中居正広に音楽番組を!」と。中居ほど(自分は分かっているにも関わらず)「わからない」ことを前提に、楽曲に対する作り手の愛、歌い手の愛、聴き手の愛を引き出せるMCは他にいないからだ。

筒美京平が亡くなったことで、改めて日本のポップスの豊かさに気付かされた今。アメリカのビルボードで1位になったところで、世界からの注目は集めても、その曲が聴き手の心に残るかどうかは別の話だ。日本には、いざという時に心の支えになるような音楽がたくさんある。歌番組の司会でなくてもいい。2011年から1年間、TBSの深夜で放送されていた『カミスン!』のような、歌の作り手や歌い手と、じっくり歌について話せるような(もちろんダンスについても)そんな番組があったら、愛ある中居正広節をもっと聞けるのに。

今こそ、中居正広に音楽番組を!……筒美京平特集から、中居の音楽愛の深さを再認識した筆者の心はそう叫ぶのだった。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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