BTS米ヒットチャート1位報道にジャニヲタがモヤッとする理由 | FRIDAYデジタル

BTS米ヒットチャート1位報道にジャニヲタがモヤッとする理由

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8月30日にNYで開催されたMTV ビデオミュージックアワードで、韓国からの中継でパフォーマンスを披露したBTS 写真:MTV/AFP/アフロ
8月30日にNYで開催されたMTV ビデオミュージックアワードで、韓国からの中継でパフォーマンスを披露したBTS 写真:MTV/AFP/アフロ

ビルボードのチャートで1位をとったとか、新曲の映像がウン億回再生されたとか、上場して株が高騰したとか暴落したとか……。ネットでBTS(防弾少年団)の記事を目にするたびに、なぜか“モヤッと”する。もしかしたら、そんなジャニヲタは多いのではないだろうか。

大抵は、“アジア人初の快挙”的な取り上げ方なので、「あれほどアジア人の活躍は難しいとされていたアメリカの音楽市場で、同じアジアのダンスボーカルグループの実力が認められたなんて素晴らしい」と、素直に受け止められればいいのだが、なぜかモヤッとする。その記事についての、「日本はジャニーズと秋元グループの天下だから、実力主義ではない。そんなことだから韓国に先を越されるんだ」「あれだけすごいパフォーマンスなのだから納得です」的なコメントを(見なければいいのに)見てしまうからかもしれない。

かなり好印象だった、BTSライヴ@さいたまスーパーアリーナ

筆者は、BTSがまだこれほど注目されていなかった2017年6月に、彼らのさいたまスーパーアリーナでのライヴに足を運んでいる。その時の感想としては、例えばBIGBANGや東方神起、2PMなどの“大手”と言われている事務所に所属しているグループより、音楽にしてもダンスにしてもいい意味で尖っているなというものだ。

仕事柄、K-POPのライヴはそれなりに観ているつもりだが、どうしても東京ドーム公演などが多くなる。例えばジャニーズグループの東京ドーム公演の直後に同じ会場でK-POPのライヴを観ると、少なくともコスパの面では、「ジャニーズって素晴らしい」と思わざるを得ないことがよくあった。K-POPはチケットも高いし、ジャニーズほど演出や機構も凝っていない(東方神起は除く)。また、パフォーマンス重視のはずなのに、東京ドームの広さではその自慢のダンスもなかなか“映え”ないし、“歌”が日常に寄り添っていないせいか、バラードが「歌じまん」に聴こえてしまう。

筆者はジャニヲタ脳なので、ちょっとでも退屈すると、つい「あージャニーズのライヴが恋しい」と思ってしまう。そんなわけでどうしてもついネガティヴな感想が多くなってしまったが、とにかく、初見のBTSのライヴに関しては、「そうか。この人たちは、最先端の音楽がやりたいんだな」と感じ、かなり好印象だった。

彼らが順調に世界へと進出する中、2018年11月には東京ドームでコンサートが開催された。ところがライヴの直前に、例の原爆Tシャツ問題(メンバーが原爆投下を肯定するTシャツを着ていたことが報じられ、予定されていた人気音楽番組『ミュージックステーション』への出演が直前キャンセルされた事件)が勃発。筆者は1日目のチケットを持っていた。

どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、問題になっている件について言及はするのかなど、様々な期待を胸に東京ドームに足を運んだが、ライヴの構成も大して創意工夫はなく、7人揃ってのガシガシのダンス曲はせいぜい2曲程度(ソロではガシガシ踊るメンバーもいたが)。彼らの本気度も感じられず、たまアリの時のようなサプライズもなかったため、正直「BTSはもういいや」と思ってしまった。

ただ、アリーナの最前列に入ったジャニヲタの友は「パフォーマンスがすごい。ジャニーズとはレベルが違う」と絶賛していたので、座席によっては楽しめたのかもしれない。

1月5日、第34回ゴールデンディスク アワード授賞式でレッドカーペットに姿を見せたBTS 写真:ゲッティ/共同通信イメージズ
1月5日、第34回ゴールデンディスク アワード授賞式でレッドカーペットに姿を見せたBTS 写真:ゲッティ/共同通信イメージズ

中居正広が、先日の『新・日本男児と中居』で、ダンスパフォーマンスと会場の関係性について、「会場が大きくなると、振りも大きくなる。小さい会場のほうが、お客さんに細かいところまで見られている意識が働くので、緊張感がハンパない」と語っていた。ライヴ文化が発達しているジャニーズは、ドーム公演の演出を考えるときに、そういった見え方も考慮した上で作っているのだろう。実際、SMAPのライヴはスタジアムのどんな端っこにいても楽しめたし、何よりメンバーとの“一体感”がすごかった。それは、SMAPに限らず、ジャニーズのどのグループのコンサートにも当てはまることだ。

「世界進出」と「ジャニーズイズム」の両立が理想

BTSのアメリカでの活躍は確かに立派である。ただ、ジャニヲタとして羨ましいかと言うと、別にそうでもない。これは、負け惜しみでも何でもない。もし、King&PrinceやSixTONES、SnowManやSexyZoneなど、「世界に打って出たい」と宣言しているグループが、実際になんらかの形で海外で認められたらそれは嬉しいし、彼らのことは応援したいと思う。

でも、それがジャニーズイズムの感じられない、マーケットを研究し尽くした最先端の音楽で世界に打って出るのだとしたら、筆者の興味は一気に失せる。どんな音楽の影響を受けていてもいいが、「自分たちのスタイル、やりたいことはこれだ!」というオリジナリティのない音楽は、心には訴えかけないと思うからだ。

悲しいかな、日本人の多くは、「ジャニーズ」と言うだけで、「子供騙し」と決めつける。でも、そういう人ほど、何も観ずに偏見だけでものを語っている。YouTubeを観てほしい。今のジャニーズは、ダンス動画ひとつとっても、そのレベルはかなり高い。YouTubeでは最近、音楽やダンスに詳しいK-POPヲタがジャニーズのダンス動画やPVに好意的なコメントをしたり、PVやライヴ映像を観ながらの「リアクション動画」をアップする人も増えている。

もちろん、ジャニヲタの反応がいいからあげている人もいるだろうが、ダンスなどのテクニック面においては、ジャニーズ と“世界”との差は、今はそれほど開いていないのである。

もう12年も前のことになるが、筆者は、ロサンゼルスで韓国人アーティストRain(ピ)の取材をしたことがある。ハリウッドのホテルでインタビューが行われたあと、Rainがレッドカーペットを歩くというセレモニーがあった。せっかくなので、現地での彼の人気ぶりを知ろうと行ってみると、ハングル文字を書いたプラカードを持ったコリアン女性が大勢集まっていて、彼女たちは必ずと言っていいほど、アジア系ではない見た目をした友人を連れていた。何人かに取材すると、「コリアンの友人に誘われて見てハマった」というようなことを話していた。在米韓国人の営業力は、日本のジャニヲタ並みだなと感心した。

夜、L.A.在住の友人に会い食事をした時に、「韓国人はすごく熱心にRainのことを応援してて、空港へのお迎えもすごかったみたいだけど、もし、日本人スターがL.A.にやってきたら、空港まで迎えにいく日本人はいたりするのかな?」と聞くと、「日本での生活に居心地の悪さを感じたり、アメリカの文化に憧れがあって、自分の意思でアメリカに住んでいる子ばかりだから、日本の文化には興味はないよ。誰も行かないと思う」というようなニュアンスのことを言われてしまった。

L.A.に行く少し前、筆者は中国の人気女優・チャン・ツィイーを取材する機会に恵まれた。その時彼女が、「生まれ育った国の人たちからの応援が1番励みになる」と語っていたのが、強く印象に残っていた。あれから10年以上が経って、あの時Rainを応援していた人は、今はきっと「母国の誇り」とばかりにBTSを応援しているのだろう。きっとそれが、彼らがアメリカで活躍する素地の素地を作ったことは間違いない。

ここ2年ほど、筆者は彼らのライヴに足を運んでいないし、DVDなども見ていないので、うかつなことは言えないが、K-POPというくくりで観たとき、おそらくBIGBANG登場時のほうが、「カリスマキタ〜」という圧倒的な華やかさとオリジナリティはあったと思う。また、東方神起やSHINEEなど、SMエンタテインメント所属のグループのほうが、ライヴの演出は豪華でユニークだったし、日本マーケットにおいても誠実だったと思う。

でも、結果として、大手事務所に所属していないBTSが(彼らが思うところの)天下をとった。どうしてそこで差がついたのか。これはもう、(もちろん戦略の巧みさはあるだろうが)タイミングとしか言いようがないだろう。

『鬼滅の刃』が大ヒットするなど、ハリウッド大作に頼らずとも、自国制作の魅力的コンテンツで、映画館に人を集めることができる日本は、コロナ禍でこれまでのような大作を作れない、作っても公開できないハリウッドに比べて、かなり恵まれているという記事もつい最近目にしたが、「所詮はアニメ〜」「所詮はアイドル〜」などとレッテルを貼らず、今だからこそ自国から生み出されるものを胸を張って応援してほしい。

これからジャニーズが世界に打って出る際は、ぜひ、「ジャニーズなんて」という偏見は抜きで、彼らのパフォーマンスを評価してもらえたら。それこそが、彼らの力になるはずだ。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

  • 写真アフロ、共同通信

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