1週間泣いて父を説得して女優に!田中道子の芯の強さは極道並み?
ドラマ『極主夫道』で”若いのにおばさん”の主婦を好演!
極道時代は「不死身の龍(たつ)」の異名で恐れられてきたが、 バリキャリだけれどルーズで家事が苦手な美久(川口春奈)との結婚を機に極道の世界から足を洗い、専業主夫業に打ち込んでいる主人公・龍(玉木宏)。そんな龍(たつ)と彼を取り巻く人々の姿を描く仁義なきヒューマン任侠コメディドラマの『極主夫道』(毎週日曜/夜10:30〜/読売テレビ・日テレ系)。龍が所属する町内の婦人会のメンバーである太田佳世を演じているのが田中道子だ。
「ここまでテンションの高いコメディに出演させていただくのは初めてかもしれません。現場もドラマ同様にとても和やかです。
私は特に同じ婦人会の会長役のMEGUMIさんと、龍がかつて所属していた『天雀会』の会長の菊次郎役の竹中直人さんとご一緒させていただくことが多いのですが、おふたりとの現場はとても刺激的で、学ばせていただくことが多いですね。
竹中さんもMEGUMIさんもアドリブが上手で、撮影の前のドライ、リハーサル、そして本番のすべてで掛け合いが違うし、しかもそのどれもおもしろいんです」
確かに掛け合いのうまさとアドリブの瞬発力の高さでは玄人の粋にいるふたりと、同じ勢いで演じるのが大変なのは想像に難くない。
「そうなんです。ついおふたりの演技に飲まれてしまって、グイグイいくチャンスを逃してしまっていて……。でも、そのことをMEGUMIさんにお話しをしたら、“どんな作品でも、全部オーディションだと思って演じている”とお話をされていて、私も反省している場合ではなくて、もっと行動していかなくちゃって気持ちを切り変えました」
インタビューをしていても伝わってくる彼女の朗らかで落ち着いてる様子を見ると、遠慮なく人との距離感を詰めてくる“若いおばさま主婦”はかけ離れているようにも思える。
「アドリブで言葉がポンポンと出てくるように、友人やマネージャーさんとの会話であえて日ごろは使わないようなちょっと悪い言葉を使ったりして、自分の中の引き出しを増やしています。
でも、主婦役ということなので、一番イメージしているのは自分の母親かもしれませんね。日頃の母の様子を思い出して、演じています」
話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』では“です。”のセリフで話題を呼び、その後、本作にも連続で出演するなど、これからの活躍がさらに期待される彼女。とはいえ、浜松の小さな町で育った彼女にとって、芸能界は夢のまた夢の話だったという。
「もともと女優という仕事に興味はあったのですが、コンビニに行くにも車で行くような田舎町だったのでどうしていいか分からなくて、心の奥に憧れを抱きながらもそのまま大学に進学し、建築を学んでいました。
でも、どうしても憧れを忘れることができず、このまま就職をしたら一生後悔するだろうと思い、親を説得したんです。母は中立の立場で私をサポートしてくれたのですが、教師の父はどうしても許してくれなくて……泣きながら1週間父に向かって頭を下げ続けました。結局許しを得ることはできず、そのまま父には内緒で高速バスに乗って東京に出てきたんです。
今になって思えば、どんな世界かも分からないところへ娘を送り出すのは父としては不安で仕方なかったんだと思います。娘が傷つくことから守りたいという一心からの行動だったんですよね。そんな父も今は応援をしてくれていて、学校で私が出演するドラマを教室の黒板に書いて告知したりしてくれているそうです」
ふわりとした優しいイメージの田中だが、涙ぐみながらもこの話をする姿に、彼女の意思の強さと女優にかける強い思いを感じた。

「昔は家族で毎日1本映画を見るような環境で育って、その頃にミラ・ジョヴォビッチやアンジェリーナ・ジョリーの作品を見て“アクション女優ってカッコいい”って思ったことが芸能界に憧れた理由のひとつでもあったので、今後はアクションも積極的に取り組んでいきたいですし、映画にもフィールドを広げられたらうれしいです。
あ、そういえば実はいつか役立つかと思いバイクの中型免許を取ったんです! その話をドラマの現場でしたら、玉木さんもハーレーに乗っているらしく、“いつか一緒にツーリング行こうね”と誘っていただいたんです。いつかは大型免許も取って、カッコよく乗りこなせる女性になりたいですね。とか言いながら、転倒した中型バイクを起こそうとしただけで、ぎっくり腰になってしまったんですけどね(笑)」
笑いながら話す彼女を見て、きれいな目の人だなぁ、と思う。それはきっと真摯に自分の思いを伝えようとする彼女だから見せることのできるまなざしなのだろう。柔らかい雰囲気でオブラートに包んで見せているけれども、実は芯の強い凛とした女性の田中道子。まっすぐ見つめる先にある夢をそう遠くないうちに彼女は手に入れることができるような気がする。

田中道子に5つの質問
Q1 人に自慢できることは?
A1 意思の強さ
やると決めたら寝る間も惜しんで取り組めるタイプです。意地もあるんですけどね(笑)。去年は二科展に初出展して、入選しました。ちょうどドラマ撮影中でバタバタしていたのですが、本当に忙しかったんですけど、チャレンジをして結果を出せたことは自信につながりました。
Q2 今、プレイリストに入っているお気に入りの音楽は?
A2 大橋トリオ/「モンスターfeat.秦基博」
この曲はどんな時でも私の中の一番の曲です。
上京したてでモデルの仕事で撮影があったのですが、その日たまたまものすごい大雪だったんです。車も電車も動かなくて、現場まで2時間以上かけて歩いて行ったのですが、その時にずっと聴いていたのがこの曲です。冬になるとこの曲を聴きたくなりますし、自分の応援歌でもありますね。
Q3 影響を受けた作品は?
A3 藤沢周平『蝉しぐれ』
もともと本が好きなのですが、この作品は読んで世界観に入り込んだ瞬間からずっと鳥肌が立っていました。こんな作品を描ける人がいるんだ、という驚きと感動が押し寄せてきて忘れられない作品です。
Q4 毎日していることはありますか?
A4 毎日新しいことをひとつしてストレス発散する
実はゲーマーで、必ず新しいステージとかを勝つまでやめない……んです(笑)。でも、実は少し前にちょっと落ち込むことがあって、それを忘れるために、毎日一つずつ新しい目標を作って、それをクリアすることがストレス発散になっていたんです。ゲームだけではなく、毎日湯船に浸かる、とか小さな目標を作ってクリアしています。
Q5 好きなタイプを教えてください
A5 自分の知らない知識を教えてくれる人
東大王のみなさんのような博学な方に惹かれます。知識を持っているから惹かれるというより、その知識を得るまでにどれだけ努力をされたのか、その努力をする姿勢に心惹かれますね。

田中道子(タナカ ミチコ) 女優
1989年8月24日生まれ、静岡県出身。O型。
2013年、『ミス・ワールド2013』の日本代表に選出され、世界大会(インドネシア)でベスト30に選ばれる。その後モデルとしてファッションイベントの『GirlsAward』、『TOKYO RUNWAY』、『神戸コレクション』などに出演。2016年、『女優宣言お披露目記者発表会』を開き、女優へ転身。テレビ朝日系ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』でデビュー後、数多くのドラマに出演している。




撮影:加藤誠
取材・文:知野美紀子
構成:SUPER MIX