『極主夫道』に見える『浦安鉄筋家族』『おっさんず~』との共通点

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

玉木宏が元極道のスーパー専業主夫・龍を演じるドラマ『極主夫道』(読売テレビ・日本テレビ系)が好調だ。

本作は、「くらげバンチ」(新潮社)で連載中の大ヒットコミックをドラマ化したもの。ボロアパートで二人暮らしをしている原作と異なり、ドラマでは娘がいたり、一戸建てのこぎれいな家に住んでいたりする改変ぶりには、原作ファンなどから批判の声もある。

とはいえ、放送開始早々、玉木宏が振り切れた熱演ぶりを見せていることや、玉木宏×竹中直人の『のだめカンタービレ』コンビが出ていること、連続テレビ小説『エール』の人気キャラ・ミュージックティーチャーが出ていることなどは、大いに話題になった。

また、設定で大きな改変をしているものの、原作の様々なエピソードを丁寧に拾って編むなど、原作愛も感じられる。そして何より、難しいことを考えずに、ただただ笑って見られる全力のバカバカしさに癒されている視聴者は多い。

ただし、どうにも気になってしまうのは、テレビ東京で9月まで放送されていたドラマ『浦安鉄筋家族』にそっくりだということ。何故なのか。

(イラスト/まつもとりえこ)

いきなり正解を出してしまうと、2作はいずれも瑠東東一郎監督の作品だということ。ちなみに、瑠東監督といえば、社会現象にもなった『おっさんずラブ』シリーズを手掛けた人でもあるだけに、『おっさんずラブ』を思い出させる部分もある。

以下に、『浦安~』と『極主夫道』の共通点の一例を挙げてみたい。

一つは、出演者があれこれかぶること。まずは滝藤賢一。

『極主夫道』では龍のかつてのライバル・虎二郎を演じているが、『浦安~』では初回からたびたび佐藤二朗演じる大沢木大鉄のタクシーに乗ってくる客で、実は大鉄のタイムトラベルを監視していた「時間警察」を演じていた。終始バカ騒ぎの同作にとっては、贅沢使いにも見える滝藤賢一の起用であり、ちょうど『半沢直樹』続編放送時と重なっていたこともあって、視聴者からは「滝藤さん、半沢に出ないで何やってんのww」といった指摘も出ていたほどである。

そんな彼が主演していた『探偵が早すぎる』(読売テレビ)も、瑠東監督が携わっていた作品。ちなみに、同作のメインキャストの一人・水野美紀は『浦安~』のお母さんだし、広瀬アリスもゲスト出演していたし、『探偵が早すぎる』大集合のドラマでもあった。

また、『極主夫道』で、龍の行きつけのスーパー店員でおかっぱヘアの三宅亮を演じているのは、ヨーロッパ企画の本多力。『浦安~』では、セーラープーンと発明をこよなく愛する“くそニートの長男”晴郎を演じていた。

また、『極道主夫道』で婦人会の会長を演じているMEGUMIは、『浦安~』では大鉄の息子・小鉄のクラスメイト・西川のり子の母で、強烈な「大阪のおばちゃん」を熱演していた。また、『おっさんずラブ in the sky』では、客室乗務員の“ネコさん”を演じていた。本作で龍の元舎弟・雅を演じている志尊淳は、『劇場版 おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』で五角関係になる役を演じていて、今回の役は直談判によるものだったという。

過去に一緒に仕事をした役者と関係性が続いていくのは、瑠東監督の作り方の好みであり、人徳でもあるのだろう。『浦安~』に宣伝もなく、唐突に田中圭が写真出演したときもネット上では大いに盛り上がったが、今後も「瑠東組」の役者たちがゲスト出演してくる可能性は高い。

(写真/アフロ)

『極主夫道』でも『浦安~』でも、スーパーや公園、街中などで、ドタバタのバトルが繰り広げられ、おばちゃん同士の戦いも描かれる。こうしたバトルシーンで流れるBGMがソックリだと思ったら、音楽担当は同じ瀬川英史だ。ちなみに、連続テレビ小説『エール』の音楽を担当している人でもある。

瑠東監督の作品をときどき福田雄一監督作品と勘違いしている人がいるのは、おそらく佐藤二朗など、出演者がかぶることがあること、同じ役者を様々な作品に起用する傾向があること。さらに、『勇者ヨシヒコ』シリーズや『アオイホノオ』など、瀬川英史が福田雄一監督の多くの作品で音楽を担当してきたこともあるだろう。

さらに、カメラワークや芝居の作り方に、いくつかのパターンがあることも、瑠東流。

『極主夫道』『浦安』『おっさんずラブ』のいずれにも共通している特徴は、シーン転換の直前に細かく揺すぶる、ちょっと酔いそうなカメラワークを入れること。

また、橋の上や、橋を背景などにして芝居をすることが多いのも、空の撮り方も、特徴的だ。

ちなみに、『浦安~』は、コロナ禍による放送中断を経て、後半に入ってからは脚本を手掛ける上田誠の「ヨーロッパ企画」臭がグングン強まり、面白さが加速していった。

しかし、前半では特に、毎回なぜかちょっと家族のほのぼのイイ話で終わることが多かったために、原作ファンの批判も多数出ていた。そもそも原作は小学生の小鉄が主役で、その周辺、学校まわりなどが中心に描かれていたのに比べ、「ホームコメディ」になっている点が大きく異なっていた。

同様に『極主夫道』も、子どもがいる設定に変わり、「家族のほのぼの」テイストが加わっている。

これは瑠東監督の好みもあるだろうし、福田雄一監督の『今日から俺は!!』が、原作ファン世代のみならず、新規として子どもを取り込み、二世代を巻き込む作品として大ヒットしたことも影響しているかもしれない。また、コロナ禍の不安が続く状況下で「ホームコメディ」「ほのぼの」方向を強く意識しているのかもしれない。

様々なクセがあることから、常連の出演者を揃えることや、カメラワーク一つとっても「大好き!」という熱狂的ファンがいる一方で、そのクセが「どうも苦手」という人もいる「瑠東節」ともいえる作風。好き嫌いが分かれることも含めて、福田雄一作品に近づいている気がする。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

Photo Gallary2

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事