日本から世界を目指すラグビー代表・流大に備わる「格」の秘密

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最近の練習風景(撮影:長尾亜紀)

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会開催から1年。当時8強入りの日本代表が大会翌年の活動を見合わせるなか、姫野和樹が海外挑戦を発表するなど新たな道を歩んでいる。姫野にとって大学の先輩である流大は、所属先でのサントリーで期待の新人との定位置争いに挑む。

きっと、前もって知っていたのだろう。

<やっと発表されたか>

<がんばってこいよ>

サントリーサンゴリアスの流大は、ラグビー日本代表としてともにW杯日本大会を戦ったトヨタ自動車の姫野和樹をツイッターで激励する。

10月12日にニュージーランドのハイランダーズへの期限付きが伝えられた姫野にとって、流は帝京大時代の2学年先輩にあたる。

身長187センチ、体重108キロの姫野がフランカー、ナンバーエイトに入ってパワフルに暴れるのに対し、身長166センチ、体重75キロの流は攻めの起点にあたるスクラムハーフに入って冷静に試合を統率する。

いずれも大学選手権での連覇を9まで伸ばした黄金期のメンバーで、日本代表でもリーダー格に成長。大学、社会人の両方で主将を張った流は特に、グラウンド内外で持ち前の調整能力を発揮する。

大会前の宮崎合宿で、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチから「リーダーシップが取れていない」という旨で叱責されるや、即座に言い返したものだ。

「僕らはあなたたちの見ていないところでもリーダーシップを取っています。見えているものだけで評価をしないで欲しいです!」

W杯フランス大会を2023年に控える日本代表は、2020年の全ての活動を見送った。

新型コロナウイルスの感染拡大下、6、7、11月に予定された強豪との代表戦は中止とされ、統括団体のワールドラグビーに招かれた11月の「エイトネーションズ(当時名称)」へも参加しないことにした。上位国との対戦へ必須となる長期合宿が組みづらそうだったからで、流もその決断を支持する。

「(大会突入前の)試合や一定期間の準備なしでティア1とテストマッチを戦うなんてありえない。というか、失礼にも値すると思います。あと、それは僕たちにとっても怪我をするリスクも高い。そういう状況で試合をすることになったら――もちろん、試合がしたい気持ちは全員にあると思いますが――参加しない(代表招集を辞退する)という選手も出たんじゃないですかね。ファンの方の『今年1試合もできないのは強化にとってマイナスだ』という意見はもちろんわかりますが、状況が状況ですし、そのなかで強化するしかないと僕は割り切っている。(フランス大会まで)残り3年あるので、その中身を濃くするのが大事だと思っています」

10月の菅平合宿中にに同じポジションで記念撮影。左から流、今年加入した齋藤直人、リチャード・ジャッド、大越元気(撮影:長尾亜紀)

いまは心機一転、2021年1月からのトップリーグを見据える。雌伏期間は代表首脳から渡されたタフなメニューで身体を追い込んだり、故障個所のケアに時間を割いたりした28歳は、拠点でも激しい定位置争いに挑んでいる。

このほどサントリーには、流と同じスクラムハーフで早大前主将の齋藤直人が加わっている。

無尽蔵のスタミナと精度の高いパスとキックを誇る齋藤は、この冬にはプロクラブのサンウルブズへ入って国際リーグのスーパーラグビーに挑戦。関係者の話を総合すると、水面下で編まれた今年の代表候補にも流とともに名を連ねていた。

期待の新星について、流はこう述べる。

「直人はこれからの日本ラグビー界、サンゴリアスを背負っていく選手になる。大学やサンウルブズの試合を観たら能力があるのはわかりましたし、一緒にプレーしてスキル、フィットネス、コミュニケーションレベルが素晴らしいと改めて思いました。僕にもレギュラーの保障なんて、まったくない。コンペティションは激しくなると思います」

齋藤の将来性を認めたうえで、自身も「負けていられない」。具体的には、「チームに求められていることを素直にやり切るところで差を見せたい」と話す。

日本大会の予選プール3戦目では、対するサモア代表が早めに疲れていたなかで事前に立てたキック主体のプランを貫き勝利。ボールを持って攻めたがる味方を御しながら、4トライ以上で得られるボーナスポイントを取った。このほかにも自軍の戦術、相手の動きを鑑みて落ち着いてプレーを選ぶ経験を、数多く積んだ。

その過程では、仲間と信頼関係も紡いでいる。

普段からの仲間との関係構築は、味方に指示を出すスクラムハーフにとって必要不可欠だ。

それは、齋藤がサンウルブズで元南アフリカ代表スクラムハーフのルディ・ペイジと共に過ごしたのを「ルディは試合中もチームを鼓舞する声掛けをしていました。(スクラムハーフは)コミュニケーションが大事なポジション。だから(普段から)色んな人と絡むようにはしていました」と話したことからも明らかだ。

流は、時と場合に応じてひるまずジョセフに自分の意見を堂々と言える。ここにはこの人の他者との距離の詰め方の絶妙さに加え、双方の信頼関係がにじむ。

流は、まだジョセフ率いる日本代表で試合に出たことがない齋藤に対して目に見えないアドバンテージを有していると言えよう。

「チーム、相手、試合の状況に合わせたプレーをすること、チームに対してのコミュニケーションでは負けていない自信があります。チームや個人が成長するには本当のライバルが必須。いまは僕にとってすごくいい環境ですし、刺激になっています」

後輩の姫野が世界に挑むなか、新人の才能に敬意を表しつつも負けん気を覗かせる。無形の力を長所とする。現実を認識しながら勝負を諦めないアスリートの姿は、多くの共感を呼ぶだろう。

斎藤直人にアドバイスを送る流(撮影:長尾亜紀)
FW陣を鼓舞しながら速いテンポを作り出していく(撮影:長尾亜紀)
ボールを持ち出した時のスピードは速い(撮影:長尾亜紀)
身長166cmと小柄だが、存在感は大きい(撮影:長尾亜紀)
  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

  • 撮影長尾亜紀

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