タイのBL風味がするテレ東深夜ドラマ『#チェリまほ』の新鮮さ | FRIDAYデジタル

タイのBL風味がするテレ東深夜ドラマ『#チェリまほ』の新鮮さ

極めて純度の高い、男同士のラブストーリー!

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『チェリまほ』で、主人公の安達に想いを寄せる黒沢を演じる町田啓太
『チェリまほ』で、主人公の安達に想いを寄せる黒沢を演じる町田啓太

自粛期間中から女性の間で流行したもののひとつにタイ制作のBLドラマがある。BL=BOYS LOVEの略だ。『2gether』をはじめとして、日本だけではなく世界中のオタクが絶賛をしたという。私も遅ればせながら、アマプラで見られる『ラブ・バイ・チャンス』から視聴中だ。今まで見たことがなかった世界観なだけに、見ながら軽―くワクワクしている。

その世界観を彷彿させる、コミックが原作のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(以下、略、チェリまほ)』(テレビ東京系・毎週木曜・深夜1時〜)がじわじわと話題を呼んでいるらしい。

純度100%の恋愛ドラマがここにある

まずは『チェリまほ』のあらすじを紹介しよう。

“文具会社『豊川』に勤務する安達清(赤楚衛二)は30歳の誕生日を迎えても、童貞のまま。でも一つだけ三十路になって変わったのは”触れた人の心の声を聞くことができる“こと。このファンタジックな能力により、同僚の黒沢優一(町田啓太)が自分に好意を寄せていることを知ってしまう。生まれて初めての恋愛相手がひょっとすると男性に……?“

このドラマのいいところは初期設定が、果てしなくくだらなくて楽しいこと。誰かに触れると、その人の何かが理解できてしまうという設定は、最近のドラマだと『4分間のマリーゴールド』(TBS系・2019年)の主役で、救急隊員の花巻みこと(福士蒼汰)が他人の手に触れると、死期が見えてしまうという能力を持っていたことを思い出す。ただこちらは人の死に関わる、シリアスな内容で笑うところはほぼなかった。

『チェリまほ』はひたすら笑うだけでいい。安達は気の優しい性格で、社内でもそんなに目立つほうではない、非モテくん。対するように黒沢は仕事もできるわ、イケメンだわで、社内の人気者。つまり水と油のような異質同士の二人に起きた小さな恋の物語(これから大きく膨らむかもしれないけれど)。触れることで何かが読めてしまうとしても、コメディであれば平和だ。そして男同士の恋愛物語も極めて純度の高い、ラブストーリーに見えてくるという相乗効果も。

ちなみにタイのBLも恋に落ちていく二人は、似たもの同士ということはない。男同士でもどちらかがたくましく、どちらかが女っぽい雰囲気だったりするのでそのあたりは同じく。

リアル30歳・童貞に見えてくる主演の存在

「ごめんな……(安達を)好きになって」

黒沢のこんな心の聞いてしまった安達は、つい自分は恋愛経験がないことを暴露してしまう。飲み会の罰ゲームで黒沢とキスしそうになったことを、嫌ではなかったとも。おお、だんだんドラマが盛り上がってきた。

見ている限りでは少しずつ黒沢に心が惹かれている安達。ひょっとしたら恋愛に免疫がないと、心はまっさらな状態に近いので、恋愛感情に男女の境目はないのかもしれない……と次第に作品へハマってしまう。自分のことを真っ直ぐに想ってくれるという事実、ここには男女の区別は関係ないのでは、とも。ひょっとしたら異性同士よりも、人間の本質的な部分に触れることができそうだ。ああ、もうこの辺でどっぷりハマっているではないか。

そしてこの心の機微を絶妙なバランスで表現しているのが、赤楚衛二だ。きっと普段はモテモテなのだろうけど、ドラマを見ているとリアルな童貞に見えてくる。冴えない、女に縁のない安達にしか見えてこない。今まで彼のことをノーマークだったせいもあると思うけど、現場で一緒になったら敬愛を込めて「安達――!」と呼んでしまいそうだ。

さて『チェリまほ』。第三話が終了したところで、だいぶ安達と黒沢の距離が縮まってきた。今まで自分の思いに鍵をかけていた黒澤も、情熱を抑えきれなくなりそうな気配がしている。そしてついに安達にも女性の影がチラつく。まだ原作は読まずに二人の今後をドラマで見守りたい。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真2018 TIFF/アフロ

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