ドラフト通信簿!球団別『この指名がファインプレー』パ・リーグ編

下位指名でも育成でも、期待が持てる選手たち!

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2019年7月、日米大学野球で力投する大学日本代表の伊藤大海(苫小牧駒澤大)。日本ハムから1位指名を受けた(写真:時事通信社)

10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議。最終的に支配下で74人、育成ドラフトで49人の合計123人が指名を受けた。トータルで見ると事前の思惑通りに進んだ球団もそうでない球団も存在しているが、ミクロ的な視点では思わずガッツポーズが出るような指名もあったことは確かだろう。

今回はそんな『会心の指名』を12球団で一つずつピックアップしてみたいと思う。ちなみに選ぶ基準としては、意外に低い順位で実力のある補強ポイントにはマッチした選手を獲得できたという点を重視した。パ・リーグ編をお届けする。

オリックスに3位で指名を受けた来田涼斗(明石商・右)。チームメイトで千葉ロッテに2位で指名を受けた中森俊介とともに(撮影:結束武郎)

オリックス

3位:来田涼斗(きたりょうと・明石商・外野手
1位では野手で一番人気だった佐藤輝明(さとうてるあき・近畿大)を外して方針転換し、高校生投手の山下舜平大(やましたしゅんぺいた・福岡大大濠)を指名した。山下の獲得は将来のエース候補として非常に大きなプラスだったが、チーム事情を考えると野手の底上げは必要不可欠。そんな状況で2位の元謙太(げんけんだい・中京)に続いてこの来田を指名できたことはまさに会心だったと言えるだろう。

来田は高校生の外野手ではナンバーワンの呼び声も高く、強打者タイプの若手外野手が不足しているチームの補強ポイントにピッタリ当てはまる選手である。小学校6年生の時には12月に行われている12球団ジュニアトーナメントでオリックスジュニアに選ばれた経験がある点にも縁を感じる。元とともにチームの中軸に成長すれば、チームの将来は一気に明るくなるだろう。

日本ハム

1位:伊藤大海(いとうひろみ・苫小牧駒澤大・投手)
2位以下の指名も素晴らしかったが、抽選なしで伊藤を獲得できたことが何よりも大きかった。150キロを超えるストレートは数字以上に威力のあるボールで、下級生の頃から大学日本代表の抑えとして活躍。更にリーグ戦で先発する時は多彩な変化球を見事に操り、長いイニングもしっかりと抑えることができる。

長く高いレベルの投球を維持しており、先発もリリーフもできる点を考慮すると、総合力では早川隆久(はやかわたかひさ・早稲田大→楽天1位)をわずかに上回っているように見える。地方リーグということを懸念する声もあるかもしれないが、大学日本代表で国際大会でも見事な成績を残しているだけに全く問題ないだろう。チームは抑え不在に苦しんでおり、そこに当てはまるこれ以上の投手はいない。1年目からクローザー定着も期待できる。

楽天

3位:藤井聖(ふじいまさる・ENEOS・投手)
1位で投手では一番人気だった早川を引き当てたことももちろん大きかったが、リリーフ強化という点で同じサウスポーの藤井を獲得できたことも大きなプラスだ。

東洋大時代は同学年に上茶谷大河(DeNA)、甲斐野央(ソフトバンク)、梅津晃大(中日)といずれも上位指名でプロ入りした投手がいたこともあってなかなか登板機会に恵まれなかったが、社会人では一年目から主戦として活躍。高い位置からきれいに腕を振り下ろすことができ、176㎝という上背以上にボールの角度を感じる。スピードもコンスタントに145キロを超え、緩急が使えるのも持ち味だ。昨年行われたアジア選手権では社会人日本代表でリリーフとして完璧な投球を見せているように国際大会での実績があるのも心強い。中継ぎの即戦力として期待したい存在だ。

福岡大準硬式野球部の大曲錬投手。西武から5位指名を受けた(撮影:西尾典文)

西武

5位:大曲錬(おおまがりれん・福岡大準硬式・投手)
支配下での指名は7人中5人が野手という指名だったが、数少ない投手で面白い存在がこの大曲だ。西日本短大付ではサイドスローの控え投手で実績もなかったが、準硬式でオーバースローに戻してから急成長。硬式と比べてスピードが出づらいと言われている準硬式で最速154キロをマークして注目を集めるようになった。そして分かりやすいスピードがクローズアップされるが、大曲の特長はそれだけではない。

フォームのバランスが良く、力みなく同じ腕の振りで多彩な変化球を操ることができるのだ。高いレベルでの実戦経験が不足していることは確かだが、この秋は福岡大の硬式野球部の練習に参加しており、そこでも見事な投球を見せている。西武は過去にも準硬式から青木勇人(1999年6位)を指名して戦力になっているが、それ以上の期待が持てることは間違いない。

ロッテ

4位:河村説人(かわむらときと・星槎道都大・投手)
早々の公表していた早川を外して同じサウスポーの鈴木昭汰(すずきしょうた・法政大)を外れ1位で指名したが、もう一人獲得した大学生投手がこの河村だ。亜細亜大を中退して大学に入り直していることから今年で23歳となる投手だが、その1年間が逆にプラスになっているように感じる。192㎝という長身で下級生の頃は的な未完の大器タイプだったが、急激な変化というわけではないものの、着実にレベルアップを果たしてきた。

まず以前と比べて変化球が格段にレベルアップしており、ストレートを見せ球として使えるようになったことが大きい。長身で更に真上から腕が振れるため、カーブやフォークといった縦の変化球はなかなか見たことのない軌道である。ストレートもまだばらつきはあるものの150キロを超えるスピードがあり、数字に見合う力がある。チームには楽しみな若手投手が多いが、その中でもスケールの大きさでは屈指と言えるだろう。

ソフトバンク

育成1位:佐藤宏樹(さとうひろき・慶応大・投手)
支配下では野手を中心に全員が高校生の指名だったソフトバンク。現在の戦力の充実ぶりと野手の世代交代への備えを考えるとよく理解できる。そんな中で会心の指名として選んだのが育成1位の佐藤だ。ドラフト会議直前の10月にトミー・ジョン手術を受けており、当面はリハビリの日々が続くが、1年秋にいきなり3勝をマークして最優秀防御率に輝いているようにそのポテンシャルの高さは誰もが認めるところである。

スポーツの世界に“たられば”は禁物だが、もしこの時のピッチングを最終学年にも見せていれば、上位指名で消えていたことは間違いないだろう。度重なる故障でかつての姿に戻ることができるかは確かに不安ではあるが、即戦力が必要なく、充実した練習環境を誇るソフトバンクであれば、長いスパンで考えることも可能だ。2年後か3年後に、鮮やかな復活を遂げてくれることを切に願いたい。

  • 西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究(PABBlab)」主任研究員。

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