少女の「欲望と生」を応援する写真集『少女礼讃』が目指すもの | FRIDAYデジタル

少女の「欲望と生」を応援する写真集『少女礼讃』が目指すもの

「記号としての少女」を撮ることで写真家・青山裕企は大人社会に挑戦しているのかもしれない

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「少女らしさって、欲望だと思うんです」

写真家、青山裕企(ゆうき)はこう言う。大学生のとき「写真家になる」と決め、2005年に独立して以来、女優やアイドルの写真集を多く手がけた。そして今年、総頁数512ページという異形の写真集『少女礼讃(らいさん)』を発表した。モデルはひとりの「少女」だ。

青山裕企写真集『少女礼讃』より 撮影:青山裕企
青山裕企写真集『少女礼讃』より 撮影:青山裕企

「モデル経験のない『少女』を2年間撮影しました。女優やアイドルには名前があって個性があって、ファンはその個性を愛し、応援したり共感するものですが、この少女は、年齢も名前もわかりません。一切の情報がない『記号的な少女』なんです」

この分厚い写真集には、一見、派手さのない「普通の女の子の日常」のような写真が並ぶ。メガネをかけた幼い顔立ち。肌は、グラビアで見るアイドルのようにツルツルしていない。

「けれども、脱いだときの体はすごい。大人っぽい目線や体の線が。

ただヌードを見せたいのではなく、この子の少女性と欲望、行ったり来たりのギャップや成長から、僕自身が目を離せないんです」

青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より

青山の写真は「同級生目線で撮る」グラビアにも定評がある。

「仕事での撮影は、いたってクールです。まず目の前の女の子を魅力的に撮る。次にその向こうにいる読者が求めているものを想定して撮る。そして最後に、自分が好きな瞬間を撮るんです」

けれでも、『少女礼讃』は違う。

「初めてこの人に会ったとき『わ、少女だな、めっちゃ少女だ』と思いました。

ふと見せる表情に、とてつもない欲望を感じたんです。かわいい、幼いだけじゃない、この子からあふれる欲望、これこそ少女だと思った。

2年間ほとんど毎週のように、とにかく圧倒的な量を撮りました。写真集に入れられるだけでも2万カットはあります。最初はお互い緊張して、でもだんだん仲良くなって笑顔が増えました」

青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より

近所の公園で、旅先で、ホテルで、路上で。少女は笑顔だけでなく、思い詰めたようなまなざしだったり、無邪気だったり、ときに挑発的な表情も見せる。

「素性のわからないこの少女を見て『あれ、もしかしたらこんな子と付き合ってたかも』と自分の心のなかと結びつく、あるいは女性なら『これは自分かも』と感じる瞬間があるんじゃないかなと思います。

『少女性』って、年齢に関係ない。30代でも40代でも『少女性』を持ち続けている人がいますから。

その不変のようで儚い『少女性』を写して見せたいんです」

プロじゃないモデルと写真家の関係

青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より

「これだけひとりの人をずっと撮っていたら、どんな関係なのかと思われるのですが…」

似たような試みで、アラーキーこと荒木経惟さんが、愛妻を撮り続けた写真集がある。

「むしろ、逆ですね。確固たるリアルな関係性はないんです。記号としての少女ですから。

少女はさまざまな形で大人から搾取されてしまう存在です。大人から押し付けられた『理想的なふるまい』ではなく、少女自身から発信される『生に溢れた表現』に圧倒されます。だから『礼讃』なんです」

写真集のなかにこんな言葉がある。

「いつ最後になっても悔いが残らないように/見逃さないで、すべてを撮りたい」

「メディアや社会で繰り返し消費されていく『少女』ですが、こうしてありのままの少女を撮り続けることで、この世界を生き抜かなければならない少女たちの生きる力を応援し、礼讃し続けたい。そんな、社会にとって、僕にとっても価値のある作品制作を目指しています」

なにかを諦める前の欲望に満ちたまなざしを持ち続けることはたしかに、大人になってしまった私たちにとって、生きる力になるだろう。

そしてこれは、少女へ、女性への畏怖の思いが込められた祈りのような、究極のフェミニズム表現なのかもしれない。

青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
青山裕企写真集『少女礼讃』より
シルエットに写真家と少女が写っている。作品中「おそらく唯一」の2ショットだ。青山裕企写真集『少女礼讃』より
シルエットに写真家と少女が写っている。作品中「おそらく唯一」の2ショットだ。青山裕企写真集『少女礼讃』より

青山裕企:1978年、名古屋市生まれ。筑波大学人間学類心理学専攻卒業。自転車で日本縦断+世界2周後、写真家になる。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。作品に『ソラリーマン』『スクールガール・コンプレックス』。アイドルの写真集なども多数で、著書は82冊を数える。日本だけでなくアジア、ヨーロッパにもファンが多い。

11月3日から、写真展「少女礼讃{Naked}」開催

11月3日から8日まで、東京・代官山「AL」で、写真展「少女礼讃{Naked}」を開催する。入場無料。

詳細は、http://al-tokyo.blogspot.com/2020/10/naked.html

青山裕企写真集『少女礼讃』(しょうじょらいさん)/¥3,500(+税)青幻舎刊
青山裕企写真集『少女礼讃』(しょうじょらいさん)/¥3,500(+税)青幻舎刊

 

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  • 写真すべて青山裕企写真集『少女礼讃』より 

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