同世代の頂点「ドラフト1位重複指名」調べて出てきた意外な結果

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野茂英雄(新日鉄堺)に8球団の指名が集中した1989年のドラフト

今年のドラフト会議では近畿大学の佐藤輝明と早稲田大学の早川隆久が4球団から指名された。毎年のように超有望選手には球団の重複指名が入り、抽選で指名球団が決まる。各球団の監督やGMが公開でくじを引くのはドラフト会議最大の見どころだろう。今年の2例を含め、ドラフト1位(外れ1位含まず)での4球団以上の重複指名は29例となった。

重複指名選手は、この年の目玉中の目玉と言えるが、だからと言って必ずしもNPBで成功するとは限らない。

過去のドラフトで、5球団以上が指名した選手は14人いるが、彼らのNPBでの生涯成績を見ていこう。( )は指名権を逃した入札球団。現役選手の数字は11月1日終了時点。

〇8球団
1989年 野茂英雄(新日鉄堺)近鉄(大洋、阪神、ヤクルト、ダイエー、オリックス、ロッテ、日本ハム)78勝46敗1SV 防御率3.15
1990年 小池秀郎(亜細亜大)ロッテ(広島、中日、ヤクルト、阪神、西武、近鉄、日本ハム)入団拒否 1993年近鉄入団 51勝47敗2SV 防御率4.40

最多は野茂英雄と小池秀郎、ともに8球団の指名を受けた。野茂英雄は近鉄が指名権を引き当てて入団。1年目から4年連続最多勝など華々しい活躍。1995年にはMLBにわたり日米通算では201勝し殿堂入りしている。

小池は8球団競合の末にロッテが指名権を得たが入団拒否。松下電器に進むも故障して評価を下げ1993年近鉄が1位で単独指名1997年には15勝で最多勝を獲得したが、51勝に終わった。

〇7球団
1995年 福留孝介(PL学園高)近鉄(巨人、中日、ヤクルト、日本ハム、ロッテ、オリックス)入団拒否 1999年中日入団1909安打281本塁打 打率.289
2017年 清宮幸太郎(早稲田実業)日本ハム(ロッテ、ヤクルト、巨人、楽天、ソフトバンク、阪神)122安打21本塁打 打率.196

福留孝介は高卒では当時最多の7球団が指名。近鉄が指名権を得たが入団拒否し、1998年逆指名で中日に入団。日米で活躍するも今季、阪神を戦力外となった。

清宮幸太郎は高校時代から全国的な人気を博したスラッガー。7球団競合の末、日本ハムに。しかしまだレギュラーにはなっていない。清宮の外れ1位でヤクルトに入った同い年の九州学院高、村上宗隆には水をあけられている。

〇6球団
1979年 岡田彰布(早稲田大)阪神(ヤクルト、西武、南海、阪急、近鉄)1520安打247本塁打 打率.277
1985年 清原和博(PL学園高)西武(中日、阪神、日本ハム、南海、近鉄)2122安打525本塁打 打率.272
2007年 大場翔太(東洋大)ソフトバンク(巨人、阪神、横浜、日本ハム、オリックス)15勝21敗0SV 防御率4.39
2009年 菊池雄星(花巻東高)西武(中日、ヤクルト、阪神、日本ハム、楽天)73勝46敗1SV 防御率2.77
2010年 大石達也(早稲田大)西武(阪神、広島、横浜、オリックス、楽天)5勝6敗8SV 防御率3.64

早稲田大の強打者岡田は6球団競合の末、地元大阪の阪神に入団。1985年にはバース、掛布、岡田の「バックスクリーン3連発」で歴史に名を遺す。

PL学園の清原は甲子園史上最多の13本塁打を打ち、盟友桑田真澄とともにKKコンビで一世を風靡する。希望する巨人には桑田が入団、清原は6球団競合で西武に入る。そのショックから立ち直り史上5位の525本塁打。ただし無冠に終わる。

東洋大の大場は大学最強の右腕として6球団競合の末にソフトバンクに入団するも2011年の7勝が最高。制球に苦しみ、通算15勝に終わった。

菊池雄星は高校時代に155㎞/hを記録。屈指の左腕投手として6球団が指名。西武に入団後、徐々に成績を上げ、2017年には17勝で最多勝。2019年にはポスティングでMLBマリナーズに移籍した。

大石達也斎藤佑樹、福井優也とともに「早大三羽烏」と呼ばれ、2010年のドラフトでは3人で最多の6球団が指名。西武に入団するも右肩痛に悩まされ、5勝どまりで2019年限りで引退した。

〇5球団
1986年 近藤真一(享栄高)中日(ヤクルト、阪神、広島、日本ハム)12勝17敗0SV 防御率3.90
2007年 長谷部康平(愛知工大)楽天(中日、広島、ロッテ、西武)11勝19敗3SV 防御率5.37
2007年 佐藤由規(仙台育英高)ヤクルト(中日、巨人、横浜、楽天)32勝36敗0SV 防御率3.66
2013年 松井裕樹(桐光学園高)楽天(中日、DeNA、ソフトバンク、日本ハム)22勝38敗140SV 防御率2.71
2016年 田中正義(創価大)ソフトバンク(ロッテ、巨人、日本ハム、広島)0勝1敗0SV 防御率8.16

近藤真一は春夏の甲子園で活躍した左腕。地元中日が指名権を獲得。デビュー戦で史上唯一のノーヒットノーランを記録。しかし肘を損傷。トミー・ジョン手術を受けたが、通算12勝に終わった。

長谷部は愛知工大時代には右の東洋大、大場翔太と並び称された左腕。しかし入団後は左ひざなど故障に泣き、2009年の5勝が最多。救援に転向するも9年で引退した。

佐藤由規大阪桐蔭の中田翔、成田高校の唐川侑己と共に「高校ビッグ3」と呼ばれた快速右腕。2010年には10勝を挙げたが右肩痛に悩まされる。2018年にヤクルトを戦力外となり、2019年育成契約で楽天に。支配下登録を勝ち取り再起を期す。

松井裕樹は夏の甲子園で大会記録である10連続奪三振と1試合22奪三振を記録。切れ味の良いスライダーで打者を圧倒。楽天に入団2年目からクローザーになり、2019年は最多セーブ

プロ野球のドラフトにかかることは、すべての野球少年にとっての夢だろう。中でもドラフト1位、さらには1位での重複指名となれば、同世代の野球選手の頂点といっても良い。素質的にも同世代のトップといってよいが、そんな逸材でも出世間違いなし、とは言い切れない。

一方で、全く無名で辛うじてプロ入りがかなった育成枠からソフトバンクの千賀滉大や甲斐拓也、周東佑京、巨人の増田大輝のように、大活躍する選手も出てくる。

これがプロ野球の面白いところだろう。

今年は123人の選手が指名された。スター選手として長く活躍するのはどの選手だろうか?

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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