Sexy Zone SMAP的楽曲でヨーロッパを目指すべき理由 | FRIDAYデジタル

Sexy Zone SMAP的楽曲でヨーロッパを目指すべき理由

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Sexy Zoneのメンバー最年長で、グループを牽引する存在の中島健人
Sexy Zoneのメンバー最年長で、グループを牽引する存在の中島健人

ヨーロッパなどを中心に、日本の1970〜80年代の“シティ・ポップ”が人気だと巷で騒がれるようになったのは、ここ2〜3年のことだろうか。「あくまで音楽マニアを中心に」という但し書きはあれど、ロックやジャズ、ソウルなどのジャンルをクロスオーバーした日本特有の音楽ジャンルが、YouTubeなどを通して今になって“発掘”され、“新しい”とか““洗練されている”“雰囲気も音質も上質”など、高い評価を得ているのだ。

日本でも、筒美京平の死をきっかけに、80年代アイドルの音楽を改めて聴き直している人も多いだろう。

筒美京平曲を“シティ・ポップ”というカテゴリーの中に収めようとするのは無理があるかもしれないが、どちらも昭和の時代に興盛したポップスで、西洋の様々な音楽ジャンルをスーパーリスペクトしながら生まれたという点では一致している。90年代に定着したJ-POPよりも、シティ・ポップの持つ雰囲気はもっとさり気ない。変にヒートアップもしないし、シャウトもしない。そのおしゃれなクールさが、“シティ”ポップと呼ばれる所以だろう。

芸能事務所として長い歴史を持つジャニーズでは、デビューしたグループが大人の階段を昇る途中に、アルバムにシティ・ポップ的な曲が増えるタイミングがある。わかりやすいところでは、SMAPがアルバムのプレーヤーに海外のジャズミュージシャンを採用し始めた「SMAP 006〜SEXY SIX」(1994年)あたりだろうか。

デビューして丸3年が経ち、4年目に突入した12枚目のシングル「Hey Hey おおきに毎度あり」が、SMAP初のオリコンチャート1位を獲得。その5ヵ月後に発売されたアルバム「006」はレコーディングもジャケット撮影もニューヨークで行われた。

考えてみれば、「Hey Hey〜」も関西弁とHIPHOPとファンクがクロスオーバーしたような曲だ。この曲のヒットがきっかけで、ディレクター陣は、彼らの音楽を多少のトンチキと洗練スレスレのラインを目指す方向に舵を切ったのかもしれない。

とはいえ、SMAPについての分析も前置きに過ぎない。今回は、Sexy Zone(以下、セクゾ)がSMAPの確立したジャニーズ的シティ・ポップの正統的な後継者であり、彼らがその音楽性を引っさげ、ヨーロッパで成功しそうな、その予感について語りたいと思う。

ジャニーズ的シティ・ポップの継承者、Sexy Zone

セクゾが今年の2月にリリースしたアルバム「POP×STEP!?」は、タイトルに「POP」という言葉が入っている通り、ロックでもHIPHOPでもなく、日本製ポップスの気高さを漂わせる。2020年の東京オリンピックを意識して、シングルの「極東ダンス」は、日本人の精神性の高さのようなものを、ポップな言葉で綴りながら、ライヴでの一体感も想像させるような華麗なダンス曲に仕上がっている。

いっそ全曲レビューを書きたいぐらいの名曲揃いだが、彼らがジャニーズ的シティ・ポップの継承者であることを決定づけた曲として挙げたいのが、5曲めの「タイムトラベル」だ。この曲の途中には、SMAPの「しようよ」というシングル曲の間奏が脳裏をかすめる瞬間があり、「あれ?」と思ってクレジットを確認したら、アレンジが「しようよ」と同じCHOKKAKUだった。

ジャニーズ楽曲の音源ファンにはお馴染みのCHOKKAKUは、SMAPやセクゾに限らず嵐、KinKi Kids、V6、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、ジャニーズWEST……と、90年代以降のほとんどのデビュー組の楽曲アレンジを担当しているが、嵐なら「感謝カンゲキ雨嵐」や「時代」「SUNRISE日本」など、ポニーキャニオン時代の楽曲のほうに、より(筆者が考えるところの)CHOKKAKUらしさが出ているように思う。特に、ホーンセクション、フルートなどを多用したファンク色の強い“踊らせるシティ・ポップ”を手掛けたらピカイチの腕前だ。

他にも、Lucky Typesというバンドのメンバー高橋海がソングライティングとアレンジを手掛けた「Blessed」は、その歌詞にどこか「夜空ノムコウ」にも似た都会的センチメンタリズムを漂う。「時代を作ろう」という言葉でデビューを飾った彼らが、全員20代になり、しかもプロとして9年のキャリアを重ね、止まったり、進んだりする自分たちを、「Blessed=祝福された」という言葉にくるんで受け止める。その「ありのままをただ受け止めよう」というメッセージは、まさにコロナ禍の今、心に滲み入るし、他にも、「MELODY」や「それでいいよ」などのメッセージソングは、怖いぐらいに、今のこの日常に寄り添ってくれるのだ。

King&Prince、SixTONES、Snow Manなどのグループは、デビューから間もないせいもあり、もっと“キラキラ”とか、“ガシガシ”とか“ゴリゴリ”とか、自分達のカラーを確立するためのパワフルな楽曲を発表することが多い。でも、セクゾは彼らと同世代でありながら、その長いキャリアのおかげで音楽にグッと奥行きが出てきている。

セクゾは2014年から15年にかけて、佐藤勝利、中島健人、菊池風磨の3人体制で活動していた時期があった。5人体制での活動が再開し、メンバーの菊池風磨が、慶應大学を卒業した2017年にシングル「ぎゅっと」で作詞を担当。菊池の都会的なセンスが、セクゾの楽曲に反映されるようになったのと時を同じくして、マリウス葉も大学生に。後輩King&Princeのデビューにも刺激され、グループの飛躍が期待される中、2018年の秋に松島が休養に入った。そんな中で、「PAGES」というオリジナルアルバムを経て、4人体制での2枚目のアルバム「POP×STEP!?」は、シティ・ポップ好きなら興奮間違いなしの、令和ジャニーズを代表する傑作となった。

彼らは、このアルバムを引っさげて、今年の3月から全国アリーナツアーを予定していたのだが、新型コロナウィルスの感染拡大によって、ツアーは延期に。そんな中、セクゾにとっての朗報は、メンバーの松島聡の復帰が8月12日に発表されたことだった。9月の「THE MUSIC DAY」では、シングル曲「RUN」を5人で披露し、先日のCOUNT DOWN TVでは、新曲の「NOT FOUND」をフルで披露。もともとダンスも歌も達者だった松島のパフォーマンスが、以前よりも妖艶さを増し、Sexy Zoneが完全復活したことを、力強く世間に知らしめた。

SMAPの後継者であることを印象付けた配信ライヴ

10月29日の18時からは、セクゾの無観客ライヴが生配信された。セクラバ(セクゾのファンの呼称:Sexy Loversの略)が「ポプステ」と呼ぶこのライヴは、SMAPからジャニーズにハマった筆者にとっては、セクゾがSMAPの後継者であることを実感させるのに十分なパフォーマンスだった。とにかく、一人ひとりにちゃんと華がある。そして、仲はいいけれどもメンバー同士の中に、ピリッとした緊張感も漂う。さらに、「見ている人を喜ばせたい」というアイドルらしい矜持と、一つ一つの楽曲の世界観をきちんと作り上げようという志の高さがある。

セクゾのメンバーは、「この道を信じて生きていく」に迷いがない感じがして、それがとても頼もしく、美しいのだ。

もともと4人でやるために構成されたステージなので、松島の出番は少ないが、ちゃんと、松島の帰りを待っていたことを感じさせる演出があり、何よりも、“歌”が心に響く。そこは、KinKi KidsのDNAも彼らは受け継いでいるのかもしれない。

今後の海外進出でセクゾが狙うべきはヨーロッパ

ジャニーズは、日本の歌舞伎に宝塚にビジュアル系のロックバンド、アメリカのディズニーなど、世界のいろんなエンタメに刺激を受け、いいところを参考にしながら発展を遂げている。今後、海外進出を狙っていく上で、ディズニー的キラキラ感とHIPでHOPなダンスパフォーマンスを融合させ、新たな市場を担うのがKing&Prince、ビジュアル系の系譜も汲むジャパニーズロックにダンスを融合させながら、ワイルドなカッコよさで音楽ファンを取り込んでいくのがSixTONES、K-POPの市場に、日本的なケレン味(歌舞伎などで奇抜さを狙った演出のこと)を加味したパフォーマンスで殴り込みをかけそうなのがSnow Manだとして、セクゾは歌とダンスの基本的スキルの高さ、平均的なルックスの良さに加え、「歌ごころ」を伝えられることも強みだ。

ヨーロッパでシティ・ポップが受け入れられる土壌があったように、歌詞の意味は分からなくても、彼らの様々なジャンルがクロスオーバーした歌は、ダンスパフォーマンスを抜きにしても、日常に寄り添うさり気ない美しさがある。

King&PrinceとSixTONESが狙うのが欧米、特にアメリカだとしたら、Snow Manはまずはアジア(ちなみにメンバーの向井康二の母はタイ人)、そこからラウールの父のルーツでもあるヒスパニック語圏などに進出しても面白いかもしれない。

そして、セクゾが進出すべきはヨーロッパ。大人になった彼らは、表情や歌声に、少しの退廃が漂うところもリアルセクシーなのである。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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