ニトリが島忠買収に名乗り出た理由と「壮大な野望」 | FRIDAYデジタル

ニトリが島忠買収に名乗り出た理由と「壮大な野望」

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
10月29日に島忠へのTOBを実施すると発表したニトリの似鳥会長。思い描いた通りに事態は進むだろうか
10月29日に島忠へのTOBを実施すると発表したニトリの似鳥会長。思い描いた通りに事態は進むだろうか

「『お値段以上の島忠』と喜ばれると思います」

10月29日にホームセンター大手の「島忠」へTOB(株式の公開買い付け)を行うと発表した、家具量販店「ニトリホールディングス」の似鳥昭雄会長(76)は、会見で誇らしげに語った。

島忠をめぐっては、すでにホームセンター「DCM」が友好的なTOBを11月16日までに実施。島忠はこれに賛同している。経済ジャーナリストの松崎隆司氏が語る。

「DCMと島忠は、ともにホームセンター業界の大手です。DCMは北海道、東北、東海地方を中心に680店舗ほど展開していますが、関東圏が弱い。島忠は首都圏を主に約60店を構えています。経営統合すれば補完要素が強い。全国規模で店舗展開ができるんです」

DCMと島忠の統合が報じられたのは、今年5月だ。6月には具体的な話し合いが始まっている。なぜニトリは、“横槍”とも取れるTOBを行ったのだろうか。松崎氏が続ける。

買い付け価格はDCMの3割高

「DCMと島忠が交わした『経営統合契約に関するお知らせ』には、『公開買付者(DCM)以外の買収提案者と接触することを禁止するような取引保護条項(中略)は一切行っておらず』という記述があります。つまり、島忠にはDCM以外の企業と交渉をする余地が残されていると読める。ニトリは、ここに目をつけTOBに踏み切ったんです。

ニトリは郊外を中心に展開しています。都心に大型店舗を持つ島忠は、弱点を補える魅力的な企業です。ニトリは新型コロナウイルスによる“巣ごもり需要”で業績は好調ですが、家具業界自体は住宅や人口減少により、大きな伸びシロは望めません。日用雑貨を売るホームセンターを取り込み、さらなる業務拡大を目論んでいると思います」

ニトリの島忠買い付け価格は1株5500円。DCMの4200円より3割も高い。高価格を提示したのは、島忠に首都圏で展開する業務形態以上に買収のメリットが大きいからだという。

「島忠は、多数の大型不動産を持っています。首都圏を中心に保有する土地と建物は、1500億円以上になるんです。現預金と有価証券は200億円ほど。付加価値がとても高い。ニトリにとっては、DCMより3割高い価格を提示しても、割安な案件でしょう。ノドから手が出るほど傘下に収めたい、超魅力的な企業なんです」(松崎氏)

イチ買収では収まらない。ニトリには、さらなる野望があるようだ。

「ニトリは、島忠とDCMの3社統合を考えているように思います。島忠とDCMが統合すれば、業界1位の全国展開できるホームセンターになる。さらにニトリが加われば、企業知名度とともに家具という強力なビジネスでも売り出せる。日本で有数の日用品量販店になれるんです。

ニトリにとって島忠の案件は、初めての買収になります。企業イメージの悪化につながるため、最初の買収相手に対し敵対的TOBは避けたいところでしょう。このままDCMと島忠の統合が成立しても、ムリな買収はしないはずです。今回の買収が失敗したら、DCMと島忠が一体化した企業に、さらなる友好的TOBを働きかけるのではないでしょうか。結果的に3社統合ができれば、ニトリは目標を達成できるわけですから」(松崎氏)

全国展開するホームセンターと家具の融合大量販店ーー。ニトリの描く壮大な戦略が、実現に向けて動き始めた。

  • 撮影 松崎隆司

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事