猫ひろしが明かした「東京五輪・出場絶望からの復活劇」

世界で唯一の芸人オリンピアン 開催延期で2大会連続出場に光が!

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7月にリリースするも、コロナが直撃した体操ソング『ネコネコニャーゴ~猫ひろし体操第1~』にも光が。「ゲストランナーで呼んでくれたら、どの大会でも踊りに行きますニャ!」

人間万事塞翁が馬。いま、誰よりもこの故事成語を嚙(か)み締めている猫――もとい、オリンピアンがいる。’16年のリオ五輪の男子マラソンにカンボジア代表として出場。完走140人中139位でゴールした芸人の猫ひろし(43)である。

現在もマラソンではカンボジア1位の座を死守しているが、2大会連続となる東京五輪出場は絶望視されていた。

猫が振り返る。

「カンボジアの陸上選手は五輪の参加標準記録を誰も突破しておらず、五輪に出るためにはスポーツ発展途上国に与えられるワイルドカード(特別参加枠。男女一人ずつ)を獲得するしかないんです。リオ五輪のときは東南アジア大会で国内最上位(男子マラソン4位)だった僕にワイルドカードが与えられて、出場が叶った。

ところが、今回、東京五輪直前の東南アジア大会(昨年12月)では、他の種目で僕よりもいい成績を残した選手がいたんです。ワイルドカード獲得は厳しい状況でした……」

直前に負ったケガの影響で10位に沈み、タイムも2時間53分34秒と振るわなかった。追い詰められた猫にとって、東京五輪の1年延期は福音だった。

「ケガも癒(い)え、1月には5000m走で自己ベストを約20秒も更新できました。8月で43歳になりましたけど、いまだに記録は伸びている。やり方次第でまだまだ成長できる手応えを感じています!」

学生時代は卓球部。マラソンを始めたキッカケは’06年に放送された『TBSオールスター感謝祭』の企画「赤坂5丁目ミニマラソン」だった。フルマラソン初挑戦が30歳とデビュー自体が遅かったため、まだまだノビシロがあるというのだ。

「’09年夏にホリエモン(堀江貴文)のネット番組に出演したときに『本気でやったら五輪に出られるんじゃないか?』と盛り上がって、じゃあ、代表入りするために競技人口の少ない国へ国籍変更しようと’11年にカンボジア国籍を取得したんですが……いま振り返ると狂ってますよね(笑)。

’10年に出場した『東京マラソン』のタイムは2時間55分45秒。五輪出場の資格を得るにはそこから30分もタイムを縮めなきゃいけなかったんですから。でも、2年後には当時のカンボジア人1位となる2時間31分台のタイムが出せた。マラソンは練習した分、そのまま結果に表れる。だから目標を持つことが大事。成せばニャるんです!」

不惑を過ぎても、走りに衰えが見られない猫。秘密はふたつある。睡眠と食事の改善だ。

「マラソンを始めた当時は、仕事の合間に練習していました。深夜に40㎞走って夜練が朝練になっていたり、ムチャクチャでしたね(笑)。そんな生活は改め、いまは毎晩6時間以上の睡眠を確保しています。食事も劇的に変えました。若いころは『体重を落とせば速くなるだろう』と、どれだけお腹が空(す)いても『都こんぶ』や茎ワカメをしゃぶって凌(しの)いでいた。

ただ、いくら海藻類にアミノ酸が含まれているとはいえ、カロリーが低すぎる空腹状態が4時間以上続いたら疲労が回復しづらくなるんだそうです。栄養士さんにそう聞いて、バッグには必ずプロテインを入れておくようになりました。時間がないときはコンビニでおにぎりを買う。毎日30㎞走るという僕のルーティンは現在も続けていますけど、ただ走るのではなく、疲労度を考えながら強弱をつけています。

富士山での無理な高地トレーニングもやめました。朝6時に東京を出れば8時には着く。日帰りで行けるからよくやっていたんですけど、移動で疲れちゃうんですよね。自分の身体に対する理解が深まって、それがわかったんです。練習と並行してお笑いライブにたくさん出演していたんですが、それもかなり減らしました」

こんなマラソンはイヤだ!

カンボジア人となって来年で10年。国籍を変えてまで出場した五輪は、猫の目にどう映ったのか。

「五輪に出場した芸人は世界で僕だけだと思います。だから、リオではいろんなところに行き、しっかりルポしようと心掛けました。いまも鮮明に覚えているのは――コンドームですね(笑)。ウワサでは聞いていたけど、本当に選手村にあるんですよ。食堂、トイレ、筋トレルームとアチコチにコンドームのガチャガチャがあって、回すと無料で1コ出てくる。さすがに五輪マークは入ってなかったけど、緑色のカラフルなパッケージでした。他国の選手に白い目で見られましたけど、300個くらい持ち帰った。まだ、家にありますよ!」

……マラソンに話を戻そう。

東京五輪のマラソンは猛暑が懸念され、開催地は札幌へと変更されたが、それでも〝マラソンをするには暑過ぎる〟という声があがっている。

「酷暑でドロドロのレース展開になったら、僕が有利ですね。カンボジアのレースって暑いだけじゃないですから。たまに42.195㎞じゃないことがある。以前、『なんか長いな』と思って測ってみたら、3㎞くらい長かった(笑)。暑いのに給水所の飲み物が熱々のコンソメスープだったりしますし、レース中に野良犬に追いかけられたりもする。コースの案内板が左右逆だったこともあった。

そもそもレースが開始予定時間には始まらない。30分押しは当たり前で、たまに開始時刻より早く始まる。早朝6時半スタート予定のレースに出たとき、6時10分にいきなり号砲が鳴って……あとで聞いたら『出場者がだいたい集まってたから始めたんだ』と関係者が言っていました(笑)」

それでも猫は、今後もカンボジア人ランナーとして生きていくという。

「いま、日本の〝外タレ〟枠って空きがあるじゃないですか。ボビー・オロゴンは退場しましたし、デーブ・スペクターさんなんて、マラソンで言ったら瀬古利彦さんみたいなもんでしょ? 大ベテランですよ。外タレ枠を狙います(笑)」

カンボジアで揉(も)まれた猫は、東京五輪「凱旋」出場を虎視眈々と狙っている。

「走れたら、こんなに嬉しいことはないです。絶対に盛り上がると思いますし。コロナで1年延期されたことがカンボジアの代表選手の派遣にどう影響するかはわかりませんが、いま日本に住んでいる僕はいつでも出られますし、チャンスが増えたのは間違いない。だから、準備だけはしておきたいし、仮に僕が出られなくてもカンボジア代表を全力でサポートしたいと思っています。

カンボジア代表のスタッフたちから『東京五輪のときにソラ・アオイを紹介してくれよ』と頼まれていますしね(笑)。僕は芸能人だから、彼女と知り合いだと勝手に思ってるんです。蒼井そらちゃんはカンボジアでも人気なんです」

日本の代表選手は男女とも全員、五輪でマラソンを走るのは東京が初となる。

「五輪では僕が先輩です。大迫(傑)選手がマラソン第7世代なら僕は第5世代、聞きに来てくれたら何でもアドバイスしますよ(笑)。実は前回のリオ五輪ではスタートだけでも1位をとろうとしたんです。マラソンって、一部のトップ選手以外は早い者勝ちでスタートラインに並べるので、僕は早々に準備を済ませて一列目をキープしていました。

ところがスタート直前に北朝鮮の選手に割り込まれちゃって……前回、学習しましたから、今回は一列目を死守します。スタート直前の絵はケニア(の選手)、ケニア、エチオピア、猫……(笑)。世界最大の出オチとなろうとも頑張ります。ニャー!」

プノンペン(カンボジア)のスタジアムでラントレーニングする猫。強度を調整しながら毎日、30㎞走る
カンボジアの若手選手たちを連れて食事会。現地トップランナーの猫は彼らの兄貴分的存在だ
調子は上々。来年1月にハーフマラソンを走る予定だ。「最初、誰も僕が五輪に出られるとは思ってなかった。嫁ぐらいですよ。目標を口に出して言うのは本当に大事」
昨年12月、大会後にチームメイトとニャー! 国籍変更の際は「カンボジア人の枠が奪われる」と猛批判されたが、現地でもすっかり人気者
本誌未掲載カット 猫ひろしが宣言!「東京五輪で世界最高の“出オチ”を見せてやりますニャーッ!」
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『FRIDAY』2020年11月13日号より

  • 取材・文栗原正夫撮影村上庄吾(1,4枚目、未掲載カット)

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