田原俊彦「ビッグ発言」のウラにあったジャニーズ事務所との確執

《芸能リポーター・石川敏男の芸能界”あの出来事のウラ側は……”㉘》

先日、「松田聖子、田原俊彦、岩崎良美…40周年を迎えた『1980年デビュー組』の明暗」（文春オンライン）という記事を見つけた。確かに“明”と言えば、数々のスキャンダルを栄養にしてきた松田聖子さんだろうし“暗”は田原俊彦さんだろう。

“としちゃん”こと田原さんは、ジャニーズ事務所との折り合いが悪くなる中での「ビッグ」発言が、すべての栄冠を失ってしまった。

‘94年2月14日長女が誕生した。ご本人の意思とは関係なく、所属レコード会社に指示され出産報告会見を開いた。

「今日はお忙しい中、マスコミ嫌いの田原俊彦のために、こうしてお暇な時間にお集まりいただきありがとうございました。この場に挑むことになり、意に反することもありますが、僕のエンジェルちゃんのために頑張ります」

とマスコミへの挑発のような挨拶で始まった。長女の名前「可南子」と書かれた紙を披露し、

「何事も穏やかにやりたかったが、僕ぐらいにビッグになるとそうもいかないんだよね」

と、取材陣に喧嘩腰。この言葉で、としちゃんの低迷期が続くことになるのだった。

しかし、彼は地道な芸能活動を続けた。近年は、再びメディアに登場するようになった。オレは数年前、コンサートツアーで全国を回るとしちゃんに新幹線で出会ったことがあった。

ガラガラの車内通路で、体中に貼った膏薬を見せながら、足を高く上げるキレのあるダンスを見せてくれた。「田原は元気だよ」と、アピールしているようだったな。

デビューは‘79年。近藤真彦さん、野村義男さんとの「た（田）の（野）きん（近）トリオ」だった。

ソロデビュー曲「哀愁デート」も大ヒットし、一時低迷していたジャニーズ事務所に息を吹き返らしたのもその3人組。だが、としちゃんの「失言」を事務所も含めて誰も助けようとはしなかった。

彼は、事務所の稼ぎ頭という思いで、周囲の意見に聞く耳を持たなかったし、私生活では、やりたい放題。女性関係も派手で数々の浮名を流したが、ジャニー喜多川社長は、彼に対しては寛大だった。

面倒見のいいジャニー社長だから、許されていたのだろう。しかし、メリー喜多川副社長は、‘88年の「紅白歌合戦」辞退や目に余る行動に、

「他のタレントに示しがつかない」

と、つねづね周囲にこぼしていたのだから、としちゃんもそれに気が付かなければなかったのだろう。ところがそんなときに彼は、

「自分が写真週刊誌にキャッチされるのは事務所から情報が洩れている」

と、自分が無防備だったことを棚に上げて、事務所のせいにしていたこともあったようだ。事務所への不信感は、結婚も妊娠も出産も事後報告だったことに表れていてる。事務所を無視する姿勢を貫いた。

だから、あの“ビッグ発言”の場に、専属マネージャーも含めて事務所関係者は一人もいなかったのだ。結局、会見から9日後、26日に彼は「3月1日にジャニーズ事務所から独立する」というファックスをメディアに流した。ジャニー社長は

「タレントは人に評価されて初めて存在が成立するものだということを、しっかり胸に刻み込んでください」

とメッセージを送っている。田原さんに対する親心も覗かせた。

ジャニーズタレントとの共演NGになっていた彼は、出演したかった番組「SMAP×SMAP」（フジテレビ系）への出演を断られたときに、《たのむよジャニーーーユー！！メリーに言ってよ！！！》とブログで書いたことは有名な話だ。

また、退所後すぐに自著『職業＝田原俊彦』を発売。「退職金らしきものはもらった」と、記し「通帳を見たらケタが違うのではないかと思った」と不満を露わにしていた。

あれから26年。9年前には長女がスカウトされ、芸名・綾乃美花さんとしてデビュー。輝かしいものがあるのは間違いないのだから、これからも親子ともども頑張ってほしいな。