政治家の公用車問題に潜む“自分の格=車格”という奇妙な潜在意識

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ショーファーカーの最高峰とも言われるセンチュリーだが、公用車として利用するにはコストが高すぎるのではという疑問の声も(写真:共同通信社)

11月3日、北海道新聞電子版が「公用車問題」について報じている。

それによれば、年一回も開かれない委員会の委員長も公用車を専有し、議長や全委員会委員長のほか、各会派に割り当てられ、公務以外で使う例も多数あるという。最近になって、衆参両院の国会議員が使う運転手付きの公用車についても問題視するべきだという記事が出た。

運転手の平均年収も800万円以上と民間同業者を大きく上回り、関連費用は計20億円を超えるという。それなのに見直しや削減の議論は進まない…と。その多くが「税金の無駄遣い」であることは言うまでもない。

公用車問題については、井戸敏三・兵庫県知事が知事専用車として超高級車トヨタ『センチュリー』を採用して騒動になったのは最近のことだ。

自治体や政治家が公用車としてセンチュリーなどの高級車を採用することは特に珍しいことではなく、巷ではそんな話に興味を示す人は少ないだろう。

ところが今回は違った。

同車2台が県知事と県議会議長の専用車として、それまでの『レクサス』から更新されたのは昨年のことであるが、今年10月、県議会の野党系会派から“高額すぎる”と問題視されたことにより、この問題が急浮上した。

高額と指摘されたのは、車両価格自体が2000万円を超える車であるからだ。県は7年間のリース契約を結び、リース料は1台当たり月額約25万円、2台だと総額4200万円となる。これはレクサスと比べて1400万高くなるというのだ。

庶民には縁のない金額で、なるほど高額だ。レクサスは1400万円安いということになるが、それでも高額には違いない。

功成り名を遂げた人物が所有するにはふさわしい車であることは間違いない。ところが、これが公用車となると、話は変わってくる。はたして県知事や県議会議長は、それなりの地位にある人物には違いないのだが、彼らが自腹を切って購入しているわけではない。

レクサスからセンチュリーに変えた理由を、兵庫県県議会決算特別委員会で向山好一県議に問われたとき、県管財課の大西淳司課長は、

「安全性や快適性、品格などの観点から総合的に判断した。県民の代表である知事と議長の職責に鑑みて妥当だと考えている」

と答えている。

つまり知事や議長は、超高級車に乗るにふさわしい職業だと思っているらしいが、公用車にかかる費用は購入にしてもリースにしても、すべて税金から出ていることを忘れてはいけないだろう。“そんなに乗りたいなら自分で買いなさい”という声が各所から聞こえてくる。

特に今回の兵庫県の場合、財政が苦しいことが明らかになっていて、 ‘95年の阪神大震災関連の借金が3000億円以上残り、コロナ禍による税収減から経費削減のための知事自身も「ケチケチ作戦」を公言していただけに、非難の声が上がるのは当然だ。

自治体の公用車に高級車が採用されるのは、なにも今に始まったことではない。エコが叫ばれるようになった今はハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などが公用車として使われているところもあるが、高級車にもハイブリッド車が登場したことで、やはり公用車=高級車という公式は崩れない。

そこで、公用車はなぜ高級車じゃないといけないのかという素朴な疑問がわいてくる。その疑問の答えにはデザインやユーティリティ、走行性能、スペックなど特徴とは異なる、 “車格”という車の位置づけが関係してくる。

今回浮上した知事公用車の問題の裏には、実はこの車格と乗る人の地位との関係性が潜んでいる。

車の位置づけは、実はその車を所有する人自身の社会的地位、つまりステータスと対応する。成功した証として高級車がステータスとなることがある。

特に日本では車のヒエラルキーが乗っている人物のそれと同一視される傾向が強い。

「高級車に乗っている人は軽自動車に乗っている人より“偉い”」

と、勘違いするアレだ。

『センチュリー』は先述の通りトヨタ車の頂点に位置する。いや日本車の頂点と言っても過言ではない。ユーティリティは極上、まるで動く応接室。完全な遮音対策がとられていて、高品質のオーディオから流れ出る音楽を聴くと、さながらコンサートホールにいる気分になるだという。

《匠の技が息づいた》とトヨタのホームページにあるように、インテリアは車と言うよりもはや調度品。ボディカラーも特別感が増している。用意されているのは、

『神威エターナルブラック』
『摩周シリーンブルーマイカ』
『飛鳥ブラッキッシュレッドマイカ』
『精華レイディエントシルバーメタリック』

という上記の4色。色だけ見てもただの高級車とは一線を画している感が強い。

たしかに井戸知事が言うように2000万円という価格にふさわしい車だ。というか、この車なら2000万円しても文句を言う人はいないだろうが、しかしそれが税金から捻出されるとなると話は別だ。

市販車には不具合が生じた場合、リコールという制度がある。どうやらリコールが必要なのは、車だけではないようだ。

  • 佐々木博之(芸能ジャーナリスト)

    宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。現在はコメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中

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