秋元康が今秋のTVで発揮する存在感と「巧みなプロデュース力」

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エッジの効いた4つの新番組

秋元康が企画原作のドラマ『共演NG』。業界のタブーに切り込んだ着眼点は、彼ならではの”新しい視点”だ(テレビ東京『共演NG』公式ホームページより)

秋元康と言えば、どんなイメージがあるだろうか。AKB48グループや坂道グループのプロデューサー。美空ひばり『川の流れのように』、とんねるず『ガラガラヘビがやってくる』、小泉今日子『なんてったってアイドル』などの作詞家。高校時代から活動し、『ザ・ベストテン』(TBS系)、『夕焼けニャンニャン』(フジテレビ系)などの人気番組を構成した放送作家。秋元はその他にも小説、映画、劇団、ライブイベントなど、数えきれないほど多くの作品を手がけてきた。

そんな秋元が今秋、「4つの新番組を仕掛ける」という積極的な姿勢を見せている。

まず10月26日、企画・原作を担当する連ドラ『共演NG』(テレビ東京系)がスタート。業界のタブーに斬り込む“共演NG”というテーマに加え、大根仁の脚本・演出、中井貴一と鈴木京香の共演など話題性の高さは今クール屈指だ。

次に10月28日、企画・監修を務めるトークバラエティ『みえる』(テレビ朝日系)がスタート。「各界のプロを集めて未来を予想してもらい、次の放送で答え合わせをする」という緊張感のあるコンセプトで放送されている。

翌日の10月29日にも企画・監修を務める恋愛バラエティ『ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”』(テレビ朝日系)がスタート。「出会いを求める芸能人に交流の場をセッティングする」という90年代風の恋愛バラエティを令和にアップデートさせた構成がいかにも秋元らしい。

さらに11月6日、企画・監修を務めるトークバラエティ『ぶっこみミサイル!~ホントに聞いちゃっていいの?~』(TBS系)を生放送。「石破茂、堀江貴文、ヒカル、青木源太をゲストに迎え、生放送で禁断の質問を浴びせる」というエッジの効いた番組だった。

これらはいずれもアイドル系ユニットとは無縁の番組。今秋なぜ秋元は、非アイドルの番組を手がけているのか。

時代の変化に合わせて新しいものを

まず注目すべきは、連ドラの『共演NG』。秋元は2010年代、『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京系、日本テレビ系)を筆頭に30作を超えるアイドルドラマをプロデュースし、唯一の例外は2017年の『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)だった。

しかし昨年、前代未聞の2クールミステリー『あなたの番です』の企画・原案を務め、賛否はあれど大ヒット。ネット上の考察合戦を狙った大胆な構成は、「時代の変化を踏まえつつ、新しいものを見せていく」という秋元の真骨頂であり、この成功が2020年につながっていく。

今年7月26日、スペシャルドラマ『リモートで殺される』の企画・原案を担当。コロナ禍で一気に普及したリモート画面に、緊迫感あふれるサスペンスを絡め、この作品からも「時代の変化を踏まえつつ、新しいものを見せていく」というスタンスが感じられた。

それを踏まえて『共演NG』を見ると、「ネット上で都市伝説のように語られている“共演NG”をイジる」という筋書きは、「何でもぶっちゃけていく」という時流に合っているし、その上で「見たことのない新しいドラマ」と言っていいだろう。平成から令和に移り、コロナ禍に見舞われるなど、時代がめまぐるしく変わっていることが、秋元がこれほど活発に動いている理由ではないか。

秋元はこれ以外でも今年7月、引退宣言から2年あまりが過ぎた小室哲哉に声をかけて乃木坂46の『Route 246』をリリース。「一度は引退した古くからの友人を引き上げる」という友情を感じさせたこと以上に、一世を風靡した小室サウンドを令和の時代に復活させたことが大きく報じられた。これも「不倫が報じられた芸能人は復帰が難しい」という世間の風潮を打ち破るものであり、秋元だからできたことではないか。

テレビが求める若年層とネット対策

企画・監修などを委ねるテレビ局から見ても「秋元の重要性が増している」ことも見逃せない。

今春にビデオリサーチの視聴率調査がリニューアルされ、個人の視聴データ詳細が把握できるようになったのだ。民放各局は、よりスポンサー受けのいい10~40代の視聴者をつかめる企画を模索しはじめたのだが、それこそが秋元の強み。「これまで約40年間、この層に受ける番組や楽曲をずっと手がけ続けてきた秋元の出番が来た」ということだろう。

外的要因に目を向けても、コロナ禍のステイホームで動画配信サービスの普及がますます進み、テレビの存在感が下がっている。実際、PUT(総個人視聴率)、HUT(総世帯視聴率)は下がり、特に22時以降の落ち込みが大きいという。つまり、広告収入のために見てもらわなければいけない10~40代をネットから取り戻すために、秋元の企画力が必要とされているのだ。

今後も民放各局が「10~40代狙い」「ネット対策」という方針で番組制作を続けていく限り、秋元が企画・監修を務める番組は増えていくのではないか。アイドルビジネスに苦言を呈す人もいるが、これまでの常識を破り、新しいものを見せようとする秋元の隠れファンは多い。年末から来年にかけて、ドラマ、バラエティの両面で、われわれを「アッ」と驚かせてくれるだろう。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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