「虚構新聞」が16年間ウソのニュースを発信し続ける理由 | FRIDAYデジタル

「虚構新聞」が16年間ウソのニュースを発信し続ける理由

なんと掲載記事はすべて創作 悪意あるフェイクニュースが巷に溢れる中、 くすっと笑える自作記事を16 年間執筆

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UK氏の本業は塾講師。記事は授業の合間に書くという。エイプリルフールは毎年、世間と逆に事実の記事を書く
UK氏の本業は塾講師。記事は授業の合間に書くという。エイプリルフールは毎年、世間と逆に事実の記事を書く

〈穴ずれパインアメ、1.3億円で落札 過去2位の高額〉

〈「10桁で終了」 円周率ついに割り切れる〉

〈あくびを指定感染症に 国会で院内感染拡大〉

そのニュースサイトには信じられないような見出しが並ぶ。だが、けっして真(ま)に受けてはいけない。報じたのは『虚構新聞』。この新聞に掲載されている記事はすべてウソなのである。

虚構新聞社社主・UK氏は16年間にわたりサイトを一人で運営し、これまで1000本を超える記事を執筆してきた。なぜウソの記事を書き始めたのか?

「20歳のとき、趣味でホームページを作り、関心のあるニュースに意見を添えて発信していました。そんな中、エイプリルフールにウソのニュースを書いてみたら、読者の評判が良く、その反応を見るのが楽しくなってしまったんです(笑)。現実のニュースを書く合間に、ウソのニュースを作っていたんですが、どんどん溜まっていって、年1回の発信ではもったいないと思い、『虚構新聞』として独立させました」

サイトのトップ画面には、思わずのけぞるような見出しがズラリ。記事のアイディアはどのように練られているのか。

「日々のニュースを見て、考えたことをスマホにメモしています。それをどうパロディにするかを考え、良いタイトルとオチが思いついたら記事を書くんです。
読者からの要望も多いですね。最近だったら、新型コロナウイルス関連や、首相交代など、『虚構新聞はこの出来事をどう料理してくれるんだ』って(笑)。一応、新聞と名乗っているので時事要素を多く入れるようにしています」

『虚構新聞』の名物といえば、記事の内容が現実に起きる「誤報」である。今年9月に新たな誤報が発生し、話題を呼んだ。UK氏は悔しそうにこう振り返る。

「ソーシャルディスタンス確保のため、ある小学校の運動会で2mのバトンが使用されているという記事を書いたのですが、神奈川県の小学校で現実に行われてしまいました。僕は常識的にありえないと思ったのですが、校長先生はその発想を面白いと思ったらしく、便乗したようです。

僕としては誤報は出したくないんですが、反響は凄かったですね。発覚した日のサイト訪問者は50万人、翌日も20万人を超えて、サーバーがダウン。復旧するのに2日かかりました……」

面白いウソをつく

昨今SNSでは、悪意のあるフェイクニュースが溢(あふ)れ、社会問題化している。UK氏は現状をどう捉えているのか。

「現実と虚構のバランス感覚には日々頭を悩ませています。現実に寄り過ぎれば、フェイクニュースになってしまいますし、ネタに寄り過ぎるとただのホラ話になってしまう。ネットは少し前までアングラな存在でしたが、SNSが登場してからは現実と地続きとなりました。一つ間違えればすぐに炎上。虚構だからと言って何でも書けるわけではありません。

『虚構新聞』の目的は読者を笑わせること。だから、個人を攻撃するものとネガティブな内容のものは書かないようにしています。元からウソという触れ込みで、オチをつけて笑いどころを作るようにしていますし、タイトルも一見したとき、違和感が残るようにしています。最初から創作として楽しんでもいいし、もし騙だまされてもウソだとわかったときにくすっと笑えるような構成にしています」

UK氏には次なる狙いがあった。それは『虚構新聞』の映像化である。

「前に元NHKアナの登坂淳一さんがYouTubeチャンネルで僕の記事を読み上げてくれたんです。ただ、なんかデキが微妙というか、やるならちゃんとやってほしいな、と思いました(笑)。次にやるときは僕がニュース原稿を用意するので、登坂さんと手を組んで番組ができたら面白いな、と考えています」

現実に少し疲れたら、『虚構新聞』を読んでみてほしい。ありそうでないウソが気持ちをラクにしてくれるだろう。

(左から) 最新時事を踏まえ、皮肉がきいた記事も多く掲載される。’05年この記事で『虚構新聞』は広く知られるようになった。 9月12日に配信された記事が27日に現実化。 政府政策として現実化した記事も。予算額までほぼ同一だった
(左から) 最新時事を踏まえ、皮肉がきいた記事も多く掲載される。’05年この記事で『虚構新聞』は広く知られるようになった。 9月12日に配信された記事が27日に現実化。 政府政策として現実化した記事も。予算額までほぼ同一だった

『FRIDAY』2020年11月20日号より

  • PHOTO加藤慶

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