都構想完全否決で始まる大阪維新の会の「終焉」その内幕

旗揚げから10年  IRやインバウンドなど政策は次々裏目に

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選挙後の会見で時折、目を潤ませた吉村知事。「大阪都構想は間違っていた。都構想に挑戦することはもうないと思う」と潔く認めた

5年ぶり2回目の否決。旗揚げから10年、大阪維新の会が一丁目一番地に掲げてきた「大阪都構想」の夢が潰(つい)えた。

大阪維新の会の大阪市議が明かす。

「都構想は大阪維新の会の存在理由でした。それを完全に否決されたわけですから、存在自体を否定されたに等しい。松井一郎市長は’23年の任期満了での政界引退を発表し、吉村洋文府知事も『(都構想への)再挑戦はありません』と明言した。都構想なき後、維新の会の求心力をどう保っていくのか……。情けない話ですが、先行きを不安に思った維新の市議や府議からは『自民党に戻る』『他党に移る』といった声が聞こえてきます」

敵味方に色分けをして相手を批判する維新の会の政治手法は、争点が明確になる側面もあるが、一方で有権者の分断が進むとの批判も根強い。

都構想は当初、賛成派が10ポイント程度リードしていたという。なぜひっくり返ったのか。『誰が「橋下徹」をつくったか』の著者で、ノンフィクションライターの松本創氏が解説する。

「投票直前の毎日新聞の報道が大きかった。大阪市を4つの自治体に分割した場合、行政コストが年218億円増加するとの大阪市財政局の試算を報じたのです。都構想のメリットばかり語る維新に市民の疑念が募る中、デメリットを数字で示されたことが不信の決定打となった。

それに対して、松井市長は『数字は捏造』だとして、財政局長に謝罪会見までさせました。財政局長は部下を守るために出てきたのでしょうが、非常に屈辱的だったと思います。ドラマ『半沢直樹』ではありませんが、パワハラ上司に土下座を強要されるような会見に市民の同情が集まったのではないでしょうか」

勝敗は1万7000票の僅差で、投票は市民に深刻な分断を残した。『緊急検証 大阪市がなくなる』の著書があるジャーナリストの𠮷富有治氏が総括する。

「大阪維新の会はこの10年を都構想という無駄なことに費やしたという印象です。毎日新聞によれば、都構想に100億円の公金が注ぎ込まれたそうです。それだけ使って何かメリットがあったとは到底思えません。たしかに大阪は賑わいましたが、それはインバウンドのおかげであって、維新の会の手柄ではありません。

インバウンド以外の面で大阪が発展したかと言うと、そうでもない。’18年には愛知県に都道府県版GDPで抜かれています。維新の会が自分たちで言うほど、大阪が良くなったわけではないのです」

追い打ちをかけたのが、新型コロナだった。インバウンド需要は蒸発し、カジノを含むIR構想も実現の見通しが立たない。打開策がなければ、大阪人の支持を失い、大阪維新の会は「終焉(しゅうえん)」を迎えるだろう。その影響は永田町に及び、菅政権の足元を脅かすという。政界アナリストの伊藤惇夫氏が話す。

「大阪維新の会は『日本維新の会』として全国への拡大を狙っていましたが、今回、都構想が否決されたことで風は止んだ。年明けにも解散総選挙の可能性がありますが、関西以外の国政選挙では大苦戦するでしょう。菅義偉総理にとっても厳しい状況です。維新の会は他の野党から票を奪ってくれる存在です。菅総理と松井市長は蜜月で、維新の会は野党でありながら政権を全面的に信任する、自民党にとって都合のいい『補完勢力』でした。その維新の会が弱ると、菅総理の権力基盤が脆弱になってしまうのです」

維新の会が復活するには創設者・橋下徹氏が復帰するしか方法はなさそうだ。

’25年の大阪・関西万博を前に、’23年の任期満了での政治家引退を表明した松井市長。国政政党「日本維新の会」の代表も退く 撮影:加藤 慶
5年前に初めて都構想に挑戦した際の橋下徹市長(当時)。このときも僅差で破れ、橋下市長は政界を引退した
都構想否決についてコメントを避けた菅総理。松井市長と「蜜月関係」の総理にとっても打撃となりそうだ 撮影:鬼怒川 毅

『FRIDAY』2020年11月20日号より

  • 撮影加藤 慶(吉村知事・松井市長)、鬼怒川 毅(菅総理)写真時事

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