ドラマウォッチャーがガッチリ教える「おもしろドラマの選び方」 | FRIDAYデジタル

ドラマウォッチャーがガッチリ教える「おもしろドラマの選び方」

「ドラマオタク」のドラマ偏愛生活、その第2弾!

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2017年のドラマ『カルテット』でバイオリン奏者・別府司を演じた松田龍平
2017年のドラマ『カルテット』でバイオリン奏者・別府司を演じた松田龍平

今年の『新語・流行語大賞』に『愛の不時着』がノミネートされていた。地上波放送ではないけれど、ドラマタイトルが流行語に上がってくるのは、確か『半沢直樹』(TBS系・2013年)以来のような……。

ただここ数年、ドラマ放送媒体が百花繚乱であることは間違いない。地上波以外にも『WOWOW』などの民放衛星放送、『Netflix』などオンライン放送オリジナルで制作している作品もある。この作品大渋滞の状況下でも、淡々と作品を選んでドラマを視聴しているドラマオタクの私に編集部から

「普段は、自分の中にどんなルールを決めてドラマを見ているのか?」

そう、編集長直々に質問が来た。ここはオタクのプライドにかけて、自分のドラマ愛を語りたい。

好んだドラマで自分に欠けた感情を知る

基本的に地上波で放送中の作品を全録画でチェックしているけれど、すべての作品を愛するような気持ちはない。人間なのでどうしても好き嫌いはある。

オタククラスになると、録画した作品を見ながら、洗濯物をたたみ出したり、スマホをいじり出すなど集中力に欠けてきたら作品に飽きたサインが分かりやすく現れてくる。つまり、いつの間にか消去法で好きな作品を選定しているということだ。

ちなみにこの残った作品を見直すと、その時の自分に足りないものだというのが手にとるように理解できる。今クールはまだ放送序盤なので、その地点まで到達していないけれど、恋愛がうまくいっていない時は恋愛モノを好んでドラマで補給。日々の生活に刺激が足りていないときは、ジェットコースター系のドロドロヒューマンドラマをよく見ている。

こんな偉そうな文章を書いているけれど、単純に自分はオタクだと思っているので、試聴する時は“専門家”ぶった見方は一切していない。泣いたり、怒ったり「わーかーるー!!」とテレビに向かって話しかけて、大騒ぎしながら見ているので、いわばストレス発散のスペース。年齢を重ねると感情をあらわにする機会が減るけれど、私の場合、ドラマがその穴埋めをしてくれているようだ。それから疲れていたり、体調が悪いと見ていても面白くないので、健康のバロメーターでもある。

ただここまでは普通の人にはできないと思うので、選ぶとしたらまずは「なぜ見るのか」の理由に沿う。よく飲み屋で

「仕事中の話のネタにしたいから、流行っているドラマを教えてくれ」

そう聞かれることがある。そんな感じで話題に乗っかりたいのなら、視聴率の良い作品をとりあえず見る。あとは今、視聴方法が多様化されているのでSNSのトレンド入りもチェックする。『カルテット』(TBS系・2017年)のように、視聴率そのものは低いのに放送中は毎回、作品のことがトレンド入りする現象は日常茶飯事だ。

あとは私のように“足りないもの”を埋める感覚。例えば恋愛から離れているなら、恋愛ドラマ。刺激が欲しいなら推しのイケメンで目の保養をする。せっかく視聴に大事な時間を割くのなら、無駄なく、有効に活用したいところだ。

今年『愛の不時着』が流行したのも、コロナ禍でみんなの生活や心に刺激が薄かったせいではないかと思う。素っ頓狂な設定の作品でで、閉じこもった生活で生まれたストレスを浄化していたのではないだろうか。あくまで予測ですけど。

ドラマウォッチャー=オタクとは令和を楽しむ力

まだ編集長からの質問は続く。

「なぜ、そんなにドラマのことが好きなのか」

そう、きたか……。

この答え、実際には本人もわかっていない。強いて挙げるとしたら、母親が無類の映画好きでよく一緒に見ていたことを思い出すくらいである。ただ私が映画にハマらなかったのは、出版社に就職してしまったので“時間を取って”作品を見に行くことが厳しくなってしまったから。もちろん今でも映画が好きだけど、邦画を好むことが多い。

対象がアイドル、アニメ、舞台……なんでもいいけれど『オタク』と言われる人たちが、好きになった理由を述べられるうちは、まだ上品な域だ。これが、全然タイプではなかった存在にハマって、その理由さえも答えられずに、えげつないほど生活を捧げてしまう現象と似ていると思う。

でもこの現象が自分を救うことを知っているだろうか。

つい最近で言うと、新型コロナウイルスによる自粛生活で、自宅にいることを余儀なくされた。そうなると「自宅でやることがない」とパンを作ったり、ベランダ栽培を始めたりと、時間を潰すことに躍起になっていたのではないだろうか?

ちなみにオタクの私ときたら、そんな様子を尻目にずっとハイボールを飲みながら、ドラマを見ていた。レコーダーにたまっているものもあったし、名作『愛していると言ってくれ』(TBS系・1995年)の再放送など、特に見るものに困ることもなく楽しく毎日を過ごしていた。これもオタクの種類によるので全てがこのパターンに当てはまるとは思わないけれど、何かのオタク力とは令和に必要な力かもしれないと、しみじみ……。

さらに私の場合、ただの趣味がこうして仕事になっているから世の中何が起こるか分からない。ドラマレビューを書くようになったのが確か5〜6年前のこと。それまでは“ものすごくドラマに詳しいライターさん”という存在であるだけ。取材中に、演者さんとドラマに話が盛り上がりすぎて、飲みに行った経験があるほどだ。その様子を見ていた編集さんに声をかけられて、レビュー、感想を書くことが始まった。

だから声を大きくして言いたい。ドラマの向こうには、また面白いドラマが待っているかもしれないのだから、とりあえず今夜は何か見てみよう、と。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真FilmMagic/ゲッティ/共同通信イメージズ

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