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「コロナでカネがない」野球界、今年のFA戦線の行方

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今年のFAの目玉・山田哲人。今季推定年俸は5億円だ
今年のFAの目玉・山田哲人。今季推定年俸は5億円だ

今年もプロ野球にストーブリーグの季節がやってきた。

昨年のFA戦線はDeNAの筒香嘉智や西武・秋山翔吾ら球界を代表する大物選手がメジャー移籍を早くから表明していたため(筒香はレイズ、秋山はレッズに移籍)、いまいち盛り上がりに欠けた。しかし今オフは山田哲人(ヤクルト)らの大物選手の国内移籍が噂されている。

今年のFA戦線はどうなるのか。有力選手の移籍先、そして意外と注目を集めそうな“隠れ人気銘柄”になりうる選手を「球界の野良犬」と称されたプロ野球解説者、愛甲猛氏に聞いた。

 

「コロナウイルスの影響でどのチームも経営的に厳しく、例年よりも動きは静かかもしれない」

と前置きしつつ、愛甲氏がまず挙げたのは今年のFA戦線の目玉となる山田哲人だ。今季の山田は打率.254、12本塁打、52打点(11月11日現在)と例年よりも低調だが、これまでに3度のトリプルスリーを達成するなど、28歳にしてその実力はプロ野球界トップレベル。それだけに各球団が喉から手が出るほど欲しいはずだが……。

「山田の現時点の年俸(推定5億円)を考えて、巨人かソフトバンクしか獲りに行けないでしょうね(笑)。ただ、昨オフなら巨人が全力で獲りに行っただろうけど、今季は吉川尚輝がセカンドに定着。ソフトバンクも周東佑京が出てきたから、思っているほど高額なマネーゲームにはならないかもしれません。

FA戦線では山田のような足の速い選手は需要が高い傾向にあります。しかし、今年は金額次第ではヤクルトに残留するという芽もなくはないと思います」

山田の今オフのFA移籍はイマイチ巡り合わせがよくないと考えている様子の愛甲氏。2年連続で最下位に沈むチームの看板選手だけに残留となれば、ヤクルトファンはほっと胸をなでおろすことだろう。

貯金ができない投手は不安でしかない

だが、ヤクルトには山田とともにエース・小川泰弘もFA権を取得する。今季の小川は8月15日の対DeNA戦でノーヒットノーランを達成するなど、5年ぶりに2ケタ勝利を記録。被本塁打が多いことが難点だが、本拠地の神宮球場の狭さも影響していると考えられるだけに、広い球場を本拠地としているチームでなら、さらに好成績を残すのではないか。

「僕は小川ってFA宣言しても獲りに行くチームは少ないと思うんですよ。というのも、小川は新人のとき以外、4つ以上貯金を稼げたことがないし、昨季は7つも負け越した(5勝12敗)。つまり、10勝しても10敗するという、“貯金ができない投手”なんですよ。加えてここ2年の防御率は4点台中盤と安定感もそこまでない。こういう投手は首脳陣からしたら使いづらい。仮に移籍しても2006年オフに巨人へFA移籍した門倉健みたいになってしまうのでは?という気がします」

門倉は06年に横浜で10勝9敗の成績をあげ、巨人に移籍したが、巨人では通算1勝7敗という散々な成績しか残せず、わずか2年で退団している。

一方、投手の目玉として挙げられ、愛甲氏も手放しで評価していた大野雄大(中日)は、3年契約・年俸3億円+出来高の好条件で中日残留が決定した。

目玉選手は……あの助っ人!?

ここまで出た選手はいずれもチームの看板選手で年俸も高い選手たち。その一方で近年、注目を集めるのがFA移籍の際に補償の必要がないCランク(各チームの年俸が10位以下)の選手たちだ。思えば昨オフも補償が必要だった鈴木大地(ロッテ→楽天)や美馬学(楽天→ロッテ)以上にCランクの福田秀平(ソフトバンク→ロッテ)が争奪戦となった。

そんな中で今季FA権を獲得したCランクの選手の中には現在、セ・リーグの首位打者を争う梶谷隆幸(DeNA)ら、宣言したら人気になりそうな選手はいる。だが、「今オフはCランク選手には厳しい」というのが愛甲氏の見解だ。

「梶谷が宣言するかは、正直微妙だと思います。

コロナの影響でFA市場が例年よりもおとなしくなるという話は先ほどしましたが、それで割を食うのは山田や大野みたいな目玉選手ではなく、Cランクの選手たち。『せっかく高額なお金を出して選手を獲るのだから、大物しか狙わない』というチームが多いと思います」

その代わり、愛甲氏は意外な選手の名前を挙げた。

「同じ横浜なら、年俸は高いですが、僕はロペスがFA宣言したら面白いかなと思っています。年間20本塁打は確実に期待できるスラッガーですが、ソトやオースティンらがいるので来季はレギュラーで起用されるとは限らない。長打力のある選手が欲しい日本ハムやロッテなどパ・リーグのチームなら引く手あまただと思います」

来季の開幕時点で37歳、推定年俸も2億円を超えるロペスだが、来季からは外国人枠を外れる。チームを手っ取り早く補強するにはうってつけの存在と言えるだろう。

今年のFA戦線の行方に注目したい。

  • 取材・文福嶌弘

    1986年横浜生まれ。日本ジャーナリスト専門学校卒業。フリーライターとして活動。幼少期より競馬・野球に興味を持ち、バイク、クルマ雑誌の編集部を経て2015年より独立。『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)、『YOKOHAMA DeNA BAYSTARS SHOULDER BAG BOOK』(宝島社)WEBサイト「BASEBALL KING」などに執筆。

  • 写真共同通信社

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