『姉恋』と『恋母』に見た年下男子のヤバすぎる「落としテク」
髙橋海人(King&Prince)、磯村勇人にメロメロになれるドラマ!
ドラマを見る理由は人それぞれ。でも、日常にはそんなにありふれていないシーンが映し出されるからこそ楽しい。個人的には“年下男子とどうのこうのの恋愛”が絡んでくる内容だと、必要以上にテンションが上がってしまう。
この秋のドラマには、そんな私の下心を突くような年下男性との恋愛模様を描く作品がいくつか見られる。そのシチュエーションを追ってみたい。
指ペロの反則攻撃に独女の時間が止まった
火曜21時放送の『姉ちゃんの恋人(以下、姉恋略)』(関西テレビ、フジテレビ系)。主演の有村架純演じる、安達桃子は両親を事故で亡くして以来、3人の弟たちの親代わりに。頑張って働く日々の中で、恋が生まれていく。脚本は岡田惠和、『ひよっこ』(NHK総合・2017年)で有村と作品を一緒にしている。この『姉恋』もゴールデンタイムなのに、朝ドラの香りがするような和やかな物語だ。ただひょっとしたら今後は恋が混戦するかもしれないけれど。
さて取り上げるのは“3人の弟たち”の二十歳の長男・和輝(髙橋海人/King&Prince)と、桃子の幼なじみ・浜野みゆき(奈緒)の恋の始まりだ。
第三話の放送で和輝がバイト代でおごると、みゆきとカフェでお茶をする。まあまあ、そこからみゆきをじっと見つめたり、
「(昔から知っているからと)ガキ扱いするなよ!」
と、純度の高い攻撃が開始される。そして
「元気な方が好きだな」
「みゆきさんは俺の初恋の人なんだから」
「あはは、ヒゲ、可愛い♡」
と『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)でケンティーが披露していた、『好きの全方位』を完璧に使いこなしているようだ。ちなみに『好きの全方位』とは、異性と話しているときにさりげなく「好き」など好意を込めた言葉を使って、相手の心を摑んでいくあざとテクだ。
とどめに、和輝はみゆきの口まわりについたコーヒーの泡を指で取ると、そのままペロッと舐めるという暴挙に近い行動に出た。
このシーンでハイボールを飲む手が止まった。
突然の指ペロに戸惑う奈緒の演技も、本気で驚いているようで可愛かった。みゆきは家庭に問題を抱えた設定なのだけど「頑張っていればこんないいことあるじゃん!」と激励をしたくなる。
そんなラブサプライズを起こした和輝は “純度の高そうな男の子がふわん、と現れて、年上女性へトイプーのように懐くイメージ”。演じている髙橋海人は、深夜ドラマでチェックをしてから、自然な演技に僭越ながら注目をしている。第二話の放送まで演技がそんなに目立つ感じでもなく「今回の作品は難しいのかな」と思っていたところに、第三話の軽い衝撃である。ひょっとして本人自体が、和輝のような雰囲気の男の子なのかも? と想像を掻き立てる。取材で会う機会があったら、勇気を出してこう聞いてみたい。
「(指ペロは)どんな気持ちで、演じられましたか?」
ハグよりも、キスよりも、指ペロは罪深いと思うのは私だけでしょうか。
年下男子の急なタメ口は何かと心臓に悪い
『姉恋』が爽やかな恋模様を打ち出してくるのなら、金曜22時放送の『恋する母たち』(TBS系)は、後ろめたさの漂う恋が錯綜している。三人の母親たちの不倫を含めた恋愛が、このドラマのメインテーマ。中でもさくっと心を震わせにかかってきたのが、吉田羊演じる林優子と、磯村勇斗演じる赤坂剛の二人。
年下男性との恋愛パターンの醍醐味ともいえる、上司(女)と部下(男)の関係の二人が、なんとなくお互いに恋の匂いも感じつつも、優子が既婚者であることがその雰囲気を押さえ込んでいる。
そんな暗黙の了解のような恋心のダムが決壊するのは、第二話で出張先のホテルで同部屋になってしまうこと。部屋飲みを始めた二人、
「今停電したら、林さんを押し倒せるのにな(笑)」
「それ停電する必要ある?(笑)」
この二人の会話から不倫への伏線が張られていたような気がする。それがたまたまシャワー後の裸の優子と、剛が洗面所で鉢合わせ。
「もう我慢できないです、俺」
と、ベッドへなだれこむ。ここでドキッとするのはまだ早い、ベッドに入った瞬間、
「(電気を)なんで消すの?」
と、突然タメ口を話し出すこと。これはヤバい、まずい。もし今、読者のみなさんの中に、年上女性に恋している男性がいたら、このテクニックは一度試して欲しい。おそらく、女性の瞳孔は開く。ちなみに視聴中、私の瞳孔は全開になった。
剛に抱かれながら優子は「(いつか、こうなると思っていた)」そう心でつぶやく。実は過去に不倫経験もある彼女だからこそ、つい出てしまった一言なのだろうとしみじみ。巷で言う“一度浮気した男はまた浮気する”の法則は、女性にも適用されるのだ。そんな女のしたたかさ、人の心の底にあるような、どろんどろんした感情が、ちょうどいい温度で『母恋』に表現されている。第五話の放送では、
さて2020年秋。経験のない冬、そして寒さに突入していくけれど火曜と金曜だけは、何かとニヤニヤしていられそうな予感がする。
- 文:小林久乃
- 写真:つのだよしお/アフロ
小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、編集、ライター、プロモーション業など。著書に『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45㎝の距離感 つながる機能が増えた世の中の人間関係について』(WAVE出版)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)がある。静岡県浜松市出身。X(旧Twitter):@hisano_k