この冬、天気の影響で体調不良になる人が急増する可能性

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天気痛を訴える人が、この冬増える可能性大と言われる訳は?

「雨の日は昔ケガをしたところが痛む」、「台風が近づくと体調が悪くなる」、「季節の変わり目にめまいがする」など、天気の変化による頭痛やめまいなどの体調不良を感じる人は多い。 

こうした気象の影響を受けて起こったり、悪化したりする病気は「気象病」とよばれ、特に、痛みや、気分の落ち込み、不安など、その人がもともと持っていた症状が天気の変化で顕著に現れる状態を「天気痛」という。 

この「天気病」の名付け親であり、わが国で初めて気象病外来・天気痛外来を立ち上げた愛知医科大学医学部 客員教授の佐藤純氏によると、今年の冬から春にかけて天気痛を訴える人が増える可能性があるという。天気痛と上手につきあうための対処法を教えて頂いた。

今年の冬から春にかけて「天気痛」を訴える人が増える可能性があるという。病院に行けないときの予防セルフケアと、薬局で買える対処薬は?

天気の影響を受けて体調が悪くなるのは「気のせい」ではない 

天気の影響で体調不良になったり、痛みが悪化したりするのは「単なる気のせい」「気の持ちよう」とガマンしてきた人がいるかもしれない。ところが天気と痛みの関係についての研究が進んできたおかげで2つの要因が関わっていることが明らかになってきた。1つ目は気圧が上がったり下がったりすることに対して内耳が敏感に反応すること、2つ目は自律神経系のバランスの乱れだ。

1)内耳が敏感になっている

内耳は耳のもっとも奥に位置し、ここに気圧の変化をとらえるセンサーのようなものがあると考えられている。気圧の変化を感じ取るとその情報が脳へ伝わるが、天気痛を起こす人ではこのセンサーが敏感になっているため情報が過剰に伝わってしまう。そのため、脳から体へ出す指令も過剰となり、心身に急激な変化が起こり、それが不調となって現れる。

2)自律神経系のバランスが崩れている

自律神経には、体を活動的な状態にする交感神経と休ませる副交感神経があり、お互いにバランスをとり合いながら、汗をかいたり、内臓を働かせるなどの体内の状態を整える働きをしている。ところがこのバランスが崩れると、気圧や気温の変化に体がうまく適応できずに不調を感じやすい状態となる。

明らかになってきた「2つの要因」とは?

「天気痛」を防ぐためにできること、効果的な「薬」は?

新型コロナウイルス感染予防のための自粛生活が続く今年は、自覚している以上にストレスを受けている可能性があることから、自律神経系のアンバランスが生じやすい状況で、天気痛に悩む人が増えるおそれがあると佐藤氏は指摘する。天気の変化に負けないために誰にでも簡単にできる予防法と、ドラッグストアなどで入手できる市販薬での不調への対処法を教えて頂いた。

1)薬に頼らない天気痛予防のセルフケア「くるくる耳マッサージ」 

気圧の変化の影響を受けにくい体づくりのために実践したいのが、佐藤氏が考案した「くるくる耳マッサージ」だ。痛くない程度の力で朝昼晩の1日3回、2週間から1カ月程度続けてみよう。マッサージで内耳の血流を改善することで内耳のセンサーや自律神経のバランスを整え、天気痛の予防や改善につなげることができる。

  • 1、親指と人さし指で両耳を軽くつまみ、上、下、横に各5秒ずつ引っ張る。
  • 2、耳を軽く横に引っ張りながら後ろ方向に向けて5回ゆっくり回す。
  • 3、耳を包むように折り曲げて5秒間待つ。
  • 4、手のひらで耳全体を覆って後ろ方向に向けて5回ゆっくり回す。

くるくる耳マッサージを続けるとともに、自律神経を整えるために生活習慣を見直してみることが勧められる。「シャワーだけではなく湯船につかるように心がける」「寝る前にスマホは見ない」「適度な運動をする」「しっかり睡眠をとって心身の疲れをとる」など、実践できることから無理のない範囲で少しずつ取り入れてみたい。

2)市販薬によるセルフケア 

■酔い止め薬

天気痛と上手につきあっていくには天気痛に詳しい医師に診察してもらったうえで、自分にあった治療法を見つけるのが最適な対処法だが、仕事や学校が忙しくてなかなか受診ができない人もいるだろう。そんな場合はドラッグストアなどで購入できる市販薬が活用できると佐藤氏は言う。その一つが市販の「酔い止め薬」だ。

「市販の『酔い止め薬』に含まれる “塩酸メクリジン”などの抗ヒスタミン薬は、内耳から脳へ情報を伝える前庭神経の興奮を抑えたり、内耳につながる椎骨動脈の血行を促す作用を有することから、天気痛の症状を改善することが期待されます」(佐藤純氏 以下同) 

服用のタイミングについては、台風など気圧の低下があると予測される日の前日の寝る前に頓用すると良い。なぜ寝る前の服用なのかというと、翌日の気圧低下への予防効果を期待していることと、抗ヒスタミン薬の副作用である眠気を逆手にとってしっかり睡眠をとってもらう狙いがあるためだ。

「天気痛に悩む方のなかには、次の日が雨の予報だと “また天気痛が出るかもしれない” という不安で眠れなくなり、翌朝は気圧の低下に寝不足が加わって頭痛が起きるという悪循環に陥ってしまう方がいます。そういう方にとっては、抗ヒスタミン薬の眠くなるという作用が、ぐっすりと質の良い睡眠をとって自律神経のバランスを整えることに役立つと期待されます」

ただし、薬を飲むタイミングによっては翌日まで眠気が残ったり、日中に服用することもある。こうした場合、車の運転など服用に際して注意が必要な事項があるため、購入時に薬剤師などに相談してほしい。

■漢方薬

酔い止め薬のほかに「漢方薬」も内耳の血行不良や自律神経のバランスの乱れを整えるために活用できると言う。

「体内の水分のめぐりを良くすることで、内耳のリンパ液や血流を正常にするようはたらきかけたり、内耳のむくみを改善したりするなどはたらきが期待されるのが 『五苓散』です」 

「五苓散」のほかにも体内の水分のめぐりを改善する漢方薬には「半夏白朮天麻湯」と「柴苓湯」がある。天気痛の症状のほかに、四肢の冷えや疲れやすいといった自覚症状がある場合には「半夏白朮天麻湯」を、水っぽい下痢などがみられる場合は「柴苓湯」を選ぶと良いだろう。いずれも服用のタイミングは寝る前だ。

「自律神経を整えるはたらきが期待されるのが 『抑肝散』です。高ぶっている神経の興奮を抑えたり、気持ちを落ち着かせるはたらきがあるので、イライラや不安で眠れないというタイプの方がしっかり睡眠をとり、自律神経のバランスを整えたいという場合に役立ちます。また、首の凝りが原因の頭痛に悩む場合には、体内で熱を作るのを助け、手足などの末梢の血液の循環を促す 『当帰四逆加呉茱萸生姜湯』が良いでしょう」

漢方薬は体にやさしくて副作用がないと思う人がいるかもしれないが、漢方薬にも注意が必要な副作用や薬の飲み合わせなどがある。安全にセルフケアをするためにも、服用を始める際には薬剤師やかかりつけの医師に相談しよう。

発症リスクを6日先まで予想している「天気痛予報」など参考に予防対策を(ウェザーニュースHPより)

「天気痛」と上手につきあっていくには?

新型コロナウイルス感染予防のための自粛生活によるストレスに加え、これから迎える冬、そして3月頃までの季節の変わり目は寒暖差が大きく天気痛が出やすい時季だ。天気痛と上手につきあっていくコツについて教えて頂いた。

「現在の状況をポジティブにとらえて活用することをおすすめしています。 

自粛生活が始まってから、私が診ている患者さんのなかには、運動不足などで体調が悪化したと訴える方がいる一方で、リモートワークで浮いた通勤時間を体力づくりにあてたおかげで今までにないくらい体調が良いという方もいらっしゃいます。 

つまり、自宅で過ごす時間の良い面をうまく活用すれば、体調をコントロールしやすい状況になったと考えられます。ですから、現状をできるだけ前向きにとらえ、これから訪れる冬のうちから自律神経を整えるなどの準備をし、良い春を迎えられるように体調を調節していきましょう」 

佐藤純 医師・医学博士/中部大学大学院教授・愛知医科大学医学部客員教授 名古屋大学教授を経て、愛知医科大学病院・痛みセンターで、日本唯一の「天気痛外来」を開設。天気痛研究・診療の第一人者としてNHK『ためしてガッテン』、日本テレビ『世界一受けたい授業』など「気象病」「天気痛」の専門医師としてメディア出演多数。著書に、『天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!』(扶桑社)などがある。

  • 取材・文高垣育

    毎週100人ほどの患者と対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている薬剤師ライター。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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