世論は賛成70%でも「夫婦別姓」が実現しない背景 | FRIDAYデジタル

世論は賛成70%でも「夫婦別姓」が実現しない背景

これは、なにかの呪いなのか? 選択的夫婦別姓を阻むもの

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「選択的夫婦別姓」への注目が高まっている。「夫婦同姓の制度はじつは戦後から。1970年代から始まった民法改正の課題のうち『選択的別氏制』だけが未だ宙に浮いている」(元法務省大臣官房審議官・小池信行氏)
「選択的夫婦別姓」への注目が高まっている。「夫婦同姓の制度はじつは戦後から。1970年代から始まった民法改正の課題のうち『選択的別氏制』だけが未だ宙に浮いている」(元法務省大臣官房審議官・小池信行氏)

「賛成70.6%、反対14.4%」

開会中の国会でも取り上げられている「選択的夫婦別姓」問題。菅義偉首相はかつて選択的別姓推進の議員活動をしていたし、上川陽子法務大臣も賛成派として活動、2年前には「法律を見直していかなければ」と語っている。民法の改正、戸籍法の改正を求める訴訟は各地で行われている。

「結婚するとき、名前を変える負担を女性だけが担うのは不自然と思い、妻の名字を選びました。仕事では旧姓の青野を使ってますが、パスポートなどの公的書類は本名。不便ですよ、とても」

「2015年に負けた日が始まり」というサイボウズ(株)代表取締役社長の青野慶久さんは経営者として、改姓して困ったことを理由に訴訟を起こしている。

10月、選択的夫婦別姓に関する大規模な意識調査があった。47都道府県の7000人を対象に早稲田大学の研究室が行なった調査で「賛成」が70.6%の圧倒的多数という結果が発表になった。

結婚するとき、夫か妻の名字を選んで同じにする、またはそれぞれが元々の名字のままでいる、そのどちらでも選べるのが選択的夫婦別氏(別姓)という制度。結婚するときに名字を同じにしなければならない「強制的夫婦同氏」の国は、世界で日本だけだ。

さまざまな理由で別姓を求める声は多い。なのになぜ、結婚すると同じ名字にしなければならないのか?立命館大学法学部の二宮周平教授はこう言う。

「民法に『夫又は妻の氏を称する』とあるんです。これを変えればいい。日本の法律家は、20世紀からずっと、民法改正を求めています。この法改正に問題があるという法学者はほとんどいません」

民法を改正すれば、名字を変えずに結婚することができる。どちらかが名字を変えて同姓にすることもできる。「選択制」だから。子どもが生まれたら、父母どちらかの姓を名乗る。日本以外の国では「ふつうのこと」だ。

一方「別姓を認めると、家族のきずなが壊れていく」と主張する議員がいる。

日本の「伝統」を守るには

「事実婚の両親の元で育ちました。家族、仲良いですよ」

「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による調査発表会見で発言した、大学生の小泉知碩さんは笑う。

「同姓でないと一体感がない、といわれると悲しくなります。うちの家族に一体感がないとは思わないし、両親の苗字が違うことで学校などで嫌な思いをしたこともない。この先結婚する世代としても、別姓の法制化を望んでいます」(小泉さん)

結婚すると夫婦が同じ名字になる「強制的夫婦同氏」は1898年に始まった制度だ。「生まれの氏を結婚後も名乗る」のが日本の「伝統」。『夫婦別姓は豊かな多様性を表す日本の伝統』(人類学者有志の会)で、飛鳥時代から記録が残っている。

旧姓使用で乗り切れという意見があるが、パスポートの旧姓併記は国際的トラブルになるし、公文書の旧姓併記改修には莫大なコストがかかる。なにより、政府が2001年に『通称(旧姓)使用を広めることは、ごまかしである』(内閣府 男女共同参画局)と記している。

最高裁判事の「宮崎」裕子さんは、旧姓を使用している。「宮崎の名前で仕事を始めた以上、この名前で仕事を続けていく」と言う。国務大臣だった「丸川」珠代参議院議員は、本当は「大塚珠代」だ。

そろそろ、変わらなければならない

与野党ともに「選択的夫婦別氏」のための法改正を求める議員は多い。国民の意見は圧倒的に賛成多数。国連から改善勧告も受けた。では、なにが障壁になっているのか。

「これだけの数字があるのに、うまく声が届いていない。これは女性の問題ではないんですよね。これからは男性や若い人たちが声を上げてそれが届いていくようになると思う。変わりつつあるし、変わらなければならない時期にきています」(早稲田大学法学学術院 棚村政行教授)

「別姓反対の人には、誤った伝統とか家族のきずな感、根拠のない先入観やなにかふわふわっとした不安、思い込みがあるんでしょうね」(二宮教授)

選択的夫婦別姓の導入を求める趣旨の意見書は、すでに157の都道府県議会、市町区村議会から提出されている。別姓が選べることで結婚を諦めずにすむ人がいる。同姓にしたい人はこれまで通り、男女どちらかの姓を選べばいい。夫婦になるふたりが選べばいい。

「票にならない」といわれるこの問題だが、昭和からの大きな課題でもある。実現できない理由は、どこにあるのだろうか。

【早稲田大学法学部・棚村政行研究室/選択的夫婦別姓・全国陳情アクション   合同調査】47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査レポート(2020年11月18日発表)→https://chinjyo-action.com/47prefectures-survey/

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