「茶碗蒸し」「フロマージュ」…自由すぎる関西ラーメンがヤバい

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関西食文化の最終兵器!? 大阪「茶碗蒸しらーめん」は、まるでアート作品

大阪に移り住んで半年ほどになりますが、まあ関西の食文化は独特ですねえ。他地域に比べて飲食店の発想が自由な気がします。

「あれもこれも食べたい!ほな一緒にしたらええやん!」的なノリなんですかね。その象徴的な店が、こちら。

大阪・海遊館近くにある『丹頂』。強烈な外観ですが、上からぶら下がっているの何? そして看板には堂々と「茶碗蒸しらーめん」の文言が。

普通なら「は???」ですが、不思議なことに、誰もその看板に疑問を持たずにスタスタと店に入って行きます。立ち止まって訝しがっている自分がマイノリティなのか? などとダイバーシティについて思いを馳せつつ、扉を開けます。

おおお…。壁にかかっているオブジェも奇妙ですねえ。カウンターのみの店内ですが、ちゃんとソーシャルな壁で仕切られているのを見て、そんな変な店ではなさそうなことに安堵。

メニューは、まあまあ普通に見えますね。「つるらーめん」が定番メニューなのでしょうか。で、茶碗蒸しは?

と思ったらありました、茶碗蒸しらーめんの文字が。やはり「茶碗蒸し」と「らーめん」なのではなく、「茶碗蒸しらーめん」という食べ物なんですね。早速オーダーしましょう。

出てきたのは巨大な丼に蓋がフィットした物体。はっきり言って竃(かまど)ですね。アンパンマンにこんなキャラいなかったっけ。

美しささえ感じられる黄白色の巨大な茶碗蒸し!が、実は…

いざご開帳。おお、これは茶碗蒸しだ! 美しささえ感じられる黄白色の巨大な茶碗蒸し。この時点ではラーメン感は一切ありません。

すくってみると、レンゲの上で茶碗蒸しがギリギリまで健気に固体を保っています。ほとんど液体やんけ!

口に入れるとすぐさま出汁の洪水が溢れ出します。旨い! むしろ茶碗蒸しのままで一生を終えた方が良いんではないかこの食べ物?とまで思いますが、それを言うと元も子もありません。

麺が出てきた! 予想はしていたので驚かないぞとは思いましたが、やはりドキッとします。卵多めの黄色い麺で、北海道の縮れ麺に似ています。コシがあってずっと茶碗蒸しの下で待っていたとは思えないほど元気です。

巨大な茶碗蒸し、卵一体何十個使ってるんだろう…と思ったら、5Lを1個半だけだそう。ほとんど出汁で構成されてます!

このお店のラーメン、スープは鶏ガラと魚介のWスープですが、ものすごくさっぱりしているのに、味が濃い!香りが立ってます。

店主の曽谷誠さんに聞きました。なんでもこのラーメン、「脂を100%使わないスープ」を作ろうと開発したらしく、スープを作ったあと一日寝かせることで、脂が完全に分離し、それを取り除いて澄んだスープのみを使うそうです。

えー! 脂ギットギトのほうが美味しいじゃん! とオイラーな私は思いますが、熟成させることで角の取れたまろやかな味になり、一度急速冷却することで香りも閉じ込められ、脂に頼らない旨みやコクが生まれるのだとか。

確かに! 鶏と和風出汁の旨味だけが抽出された深みのある味わいで、物足りなさは皆無です。やるじゃん曽谷ちゃん!

食べているうちに茶碗蒸しとスープが混ざり合い、出汁の香りがどんどん強くなっていきます。麺に茶碗蒸しを絡めると、フワフワ食感がプラスされ、不思議極まりない食感!

あんまりにも自然な味の融合なので、こういう食べ物がはるか昔から存在していたような錯覚さえ起こします。

そもそも何で麺に茶碗蒸しを乗っけようと思ったのか 

まあ人類の素朴な疑問だと思うので聞いてみました。

実は曽谷さん、大阪・北新地の有名割烹で和食の修業を積んだ後、このラーメン店の近くに和食店『木曽谷』を開業。そこで日本料理を提供していましたが、それだけでは飽き足らず、ラーメン店でもやってみようかと35年ほど前に『丹頂』を開店。最初は脂を使わない「つるらーめん」を看板メニューにしていました。

しかしパイオニア精神旺盛な曽谷さん、もっと面白いメニューはできないかと考えた時に、北新地のお店で「茶碗蒸し」が女性に人気だったことを思い出しました。しかも茶碗蒸し、最初は普通のサイズだったのですが、「もっとデカいのないの」との要望に応えるうちに、どんどんサイズアップしていったのだそう。

ほな茶碗蒸し専門店でもやろうかと考えたのですが、「いや、ラーメンに合わせてみたらどうだろう」と思いついたのが「茶碗蒸しらーめん」。鶏ガラと魚介ベースで脂分ゼロの「つるらーめん」に、でっかい茶碗蒸しでフタをしてしまえ!という発想でこのメニューが生まれたそうです。

でも、メニューを考案したからって実現するのはかなり難しい道のり。なんせ、こんな巨大な茶碗蒸し作れる蒸し器は世の中にないし、下はラーメンですからね。

どうやって形にしたのかを聞きましたら、ドヤ顏ですごい部屋に案内されました。

奥が「ラボ」で手前が「アトリエ」と説明されましたが、正直違いが分かりませんでした!

お店の奥のスペースがこんなことになっています。ラーメン店のバックヤードとは到底思えませんが、ここ、何かというと、「ラボ」と「アトリエ」だそうです。

芸術と料理は一緒や! 

実は曽谷さん、やけに強烈な個性を持つ人だなと思っていたら、大阪芸術大学を卒業しており、美術畑から和食の料理人になった異例の経歴の持ち主でした。

制作や探求が好きで、この茶碗蒸しらーめんを作ろうと思ったやいなや、色々な工具を使って開発に取り組んだそう。

曽谷さん。鍛金と溶接でなんでも作っちゃいます

蒸し器も自作し、ようやく完成した茶碗蒸しらーめん。最初はお客さんが「何やこれ!」と怒って残していたそうですが、進化を重ね、2年ぐらいかけてついに味のバランスが取れた完璧な一杯が完成。今では市民権を得て、わざわざこれを食べにくるファンもいるほどの人気商品になりました。

そして曽谷さん、どこまでも飽き足らない性格なので、次々と茶碗蒸しらーめんのニュータイプを開発していきます。

中でも自家製の豚角煮を乗せた「茶碗蒸しらーめん角煮のせ」(1350円)もオススメだそう。「でも、某グルメサイトで『豚角煮が出来合い』と書かれていたんです。大阪ガスの方にアドバイスを得て研究した力作なのに」と悲しそうなので、「そりゃ完成度が高すぎたんでしょう!」とフォローしておきました。ナイス猫田!

で、最も自信作なのが、「茶碗蒸しらーめんフロマージュ」。その名の通り茶碗蒸しらーめんの上にチーズを乗せたものです。これも作ってもらいました。

UFOか何かのようなエキセントリックな器が運ばれてきました。今から何が起こるの?

「茶碗蒸しらーめんフロマージュ」は、バゲット付きで1250円

運ばれてきたと思ったら、おもむろに蓋を開けてアルコールをまわしかけ、着火!

ぎゃー何すんねん!炎上しとるやんけ!危ねえ!と焦ることなかれ。

店内に飾られている火除け面、ただの装飾ではなく着火時にお客さんが身を守るための武装用具だったわけです。命がけで臨むラーメンですよ。

しかし一体、なぜラーメンに茶碗蒸しをかぶせてチーズまで乗っけたのか聞いてみましたら、「火をつけるラーメンを作りたかったんです!」と胸を張って答えられました。そ、そうですか!

チーズはモッツアレラとカマンベールの2種です

鎮火後にいただいてみます。レンゲですくうとチーズなんだか茶碗蒸しなんだかよく分からない!しかし口に含んでみますと、乳製品に優しく包み込まれた茶碗蒸しといった味わいで、お焦げ部分の香ばしさも相まって、旨い!

そしてやはりラーメンであることはブレないので、麺が出てきます。不思議なほどに違和感がないのは、通常の茶碗蒸しらーめんと少し違う洋風スープで仕上げているからだそう。

バゲットに乗せて食べるのもオツ。よく考えると、「茶碗蒸しとチーズをパンに乗せて食う」ってかなりクレイジーですが、なぜか違和感はない。

しばらく食べていると飽きるので、タバスコで味変します。色々な辛さのタバスコが用意されていますが、タバスコ史上最も辛いとされる「スコーピオンソース」を投入。確かに辛いですが、酸味も加わりまた違った味わいになりますよ。

食べ終えて店を出ると「今のは何だったんだろう…」と宇宙人に拉致された後の人間みたいな心理になりますが、なぜかまた行きたくなる変な引力!

そうして、違和感もなく店に吸い寄せられる1人になるのでしょうね。

  • 『丹頂』
  • 住所:大阪市港区築港3丁目8−7 /アクセス:地下鉄中央線大阪港駅2番出口徒歩3分 /営業時間:11: 30~16:00・17:00~22:00 /定休日:不定休
  • 取材・文・写真猫田しげる

    1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。現在はウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。2019年4月から一瞬札幌に移住したものの、2020年関西に高跳び。フットワークの軽さに自分でもドン引き!

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