規制緩和で増便!コロナ禍の「ハワイ行き」は現実的な選択肢か
日本人が隔離免除対象に。本当にハワイへ誰でも行けるのか?
アメリカ・ハワイ州が、ホノルル到着後に義務付けていた14日間の自主隔離を一定条件を満たせば免除する「事前検査プログラム」の適用を、11月6日から日本人向けにも開始した。この動きを受け、航空各社は12月以降、年末年始を含めて増便を続々発表し、LCC「ZIPAIR」も新たに就航が決まるなど、ハワイ旅行再開への動きが見られるようになった。
ただ、以前のような海外旅行は、まだできないというのも事実だ。
実際のところ、本当にハワイへ誰でも行けるのか。もし行ったとして、現地でどういった状況になるのか。また、飛行機やホテルの価格、さらに帰国してからの行動など、「ハワイ旅行の今」についてまとめてみた。
【出国】日本出発前の事前検査必須、1人あたり「4万円」かかる
ハワイでは現在も、入島制限が行われている。ただ、一定の条件を満たせば、観光客を含む日本在住者は14日間の自己隔離措置が免除される。
その条件とはまず、ハワイ州保健局が指定する日本国内の医療機関で「NAT検査」を受け、日本を出発する72時間以内に発行された「陰性証明書」(英語)を、出発空港での搭乗手続きとハワイでの入国時に提示すること。NAT検査は、日本の厚生労働省が認可する新型コロナウイルス感染症の核酸増幅検査のことで、現在、東京や大阪など全国57ヶ所の医療機関で受けることができる。その中には、成田空港と羽田空港のそれぞれ空港内にある検査センターも含まれ、連休中や年末年始にも対応している。指定医療機関は、ハワイ州観光局の公式サイトで確認できる。
ちなみに、検査にかかる費用は、日本医科大学成田国際空港クリニックの場合、検査・証明書発行料金が予約ありで39,800円、ハワイ州専用用紙が500円と、合わせて4万円ほど。その他の医療機関でも4万円前後というのが、今のところ相場だ。1人4万円に人数分となると、その費用が高いと感じる人がほとんどだろう。
また、出発前の準備として、渡航情報(ハワイ州 Safe Travels Program)のオンライン登録と出発24時間以内に健康状態の登録、QRコードの取得も必要だ。このQRコードは、ホノルルでの入国審査時、陰性証明書とともに提示しなければいけない。そして、通常期と同様、「ESTA」の申請(すでに所持していれば有効期限の確認)も必須だ。
なお、ホノルルを経由してネイバーアイランドの島々へ移動する場合、同日乗り継ぎであればホノルル空港で提示した陰性証明書とQRコードがあれば自己隔離が免除になる。ハワイ島のみ、到着空港で不特定の乗客に対して抗原検査(任意)が実施される。オアフ島で宿泊した後、別日での移動だとその陰性証明書は無効となり、オアフ島で改めて指定医療機関でNAT検査を受け、再び陰性証明書を発行してもらう必要がある。他の島々はオアフ島と異なる規制などある場合も。
【ハワイ到着後】観光の全面再開は程遠い、感染症危険情報も「レベル3」のまま
■ホテル
ハワイのホテルはどういう状況か。一時はワイキキエリアなどかなりのホテルが臨時休業していたのが、徐々に再開する動きが見られる。例えば、日本人旅行者に人気ワイキキエリアで、年末年始で最も人気が高い「12月31日泊」の価格を調べると、ワイキキビーチマリオット&スパ 23,763円、ヒルトンハワイアン ビレッジワイキキビーチリゾート 34,520円、アウトリガーワイキキビーチリゾート 34,761円、シェラトンワイキキ 72,795円など。例年と比べるとかなり安い。しかも、ワイキキ全体で約75%の客室がまだ埋まっていないようだ(Googleで検索時点)
■街中
現在のハワイでは、屋内はもちろんのこと、一定の身体的距離が確保できない屋外においても“マスク着用”が義務化され、もし違反すると罰金や禁固刑に課せられる。レストランで飲食できる人数1テーブル5名以内、ショップなどの収容人数は50%以下、バーやナイトクラブは営業停止といった規制がある。観光客向けに走るワイキキトロリーは、一部路線のみ運行再開したものの、以前よりも本数は少ない。観光スポットも最近は徐々に再開しているが、休業中もまだ多い。ショッピングモールでは営業短縮する店舗あり、イベントは原則中止だ。
【帰国後】日本帰国後の14日間自主隔離、公共交通機関の利用不可は継続
一方、日本帰国時はどうなるかというと、到着空港で新型コロナウイルスのPCR検査を受ける必要がある。一部の国・地域からの帰国でこの検査が免除されるが、ハワイ州はアメリカなので、まだ検査対象だ。そして、検査結果が出るまで空港内の指定場所などで待機する。その待ち時間は1~3時間ほどで、陰性であれば日本入国の手続きに進む。
その後については、「自宅またはホテルなど検疫所長が指定する場所で、入国した翌日から数えて14日間の自己隔離」「到着空港からの移動に公共交通機関を使わない」などが、厚生労働省から通達されている。利用できない公共交通機関は、国内線をはじめ、鉄道やバス、タクシーなども含まれる。
可能な移動手段として、自家用車か迎えの車、レンタカー、帰国者向けのハイヤーなど。それができなければ、空港周辺の指定ホテルなどで14日間の自己隔離を行わないといけない。通勤・通学する人、成田や羽田以外の地方在住などだと、この“帰国時ルール”はまだまだハードルが高く、これらが緩和されないと海外旅行はまだ厳しいと言える。
【航空券】JAL、ハワイアン航空、ANAが増便発表。大型機の投入も
だが、ハワイ州の事前検査プログラム開始を受け、年末年始に向けて、航空各社からハワイ便再開への動きが出てきた。
JALは、12月から1月にかけ、臨時便として羽田-ホノルル線で16往復を運航する。また、成田-ホノルル便も12月に7往復の運航を発表した。定期便は全便運休を継続するものの、直近の9月から11月まで月2往復のみ、しかも在住者や留学生向けだったことを考えると、観光需要が戻りつつあると見越しての動き。しかも、羽田-ホノルル線の一部の便では、ファーストクラスの設定がある大型機(ボーイング777-300ER)での運航だ。
ハワイアン航空は、10月から定期便として再開した成田-ホノルル線を11月から増便したのに加え、12月19日のホノルル発から羽田-ホノルル線、関西-ホノルル線も再開する。成田便が週4往復、羽田便と関西便がそれぞれ週3往復。首都圏で見ると、毎日(デイリー)運航となる。
ANAは、11月6日に羽田-ホノルル線の運航を約7ヶ月ぶりに再開。11月は月2往復で運航し、12月と1月も同じ予定だったが、週2往復に増便することが追加で発表された。12月から1月、合わせて17往復となる。ただ、ハワイ線専用のエアバスA380型機「フライングホヌ」の運航再開のメドは立っていない。
一方、JAL傘下の格安航空会社(LCC)であるZIPAIR Tokyo(ジップエア)が、12月19日から成田-ホノルル線に就航することが先日発表された。定期便ではなく臨時便とし、来年1月末までに16往復する。予約はすでに始まり、運賃は最も座席が多い「スタンダード」が19800円から、ビジネスクラスにあたる「フルフラット」が59800円から。JALと比べると5分の1ほどの運賃設定が魅力的な人も多いだろう。ジップエア独自の取り組みで、PCR検査や帰国時の個別送迎などをセットにした「オプションパッケージ」も提供予定と発表済みだ。
航空券の価格は、JALの直行便で「12月29日羽田発ホノルル行き/1月3日ホノルル発羽田行き」で検索すると、エコノミークラスで最安「208,050円」だった(JAL公式サイトで検索時点) 例年、年末年始だと30~40万円ほどが相場で、それと比較すると安い。また、予約受付直後に満席になる便もあるほど人気だったのと比べると、いまだ空席も十分あるようだ。
なお、外務省が発表する感染症危険情報で、ハワイ州はレベル3「渡航中止勧告」(渡航は止めてください)が発令されている。不要不急の渡航はもちろん、渡航を考えるなら中止しなければならないレベル。旅行会社が販売するハワイ行きツアーも、年末年始を含む1月中の中止が続々発表されている。
結論としては、「行くことは可能だけど、現実的にはかなり難しい状況」というのが正直なところ。もし、本気でハワイへの旅行を考えているなら、現在や今後の動きをくまなくチェックしつつ、くれぐれも慎重に行動、判断してほしい。
■記事中の情報、データは2020年11月28日現在のものです。
- 文・写真:Aki Shikama / シカマアキ
ライター・カメラマン
大阪市生まれ。大学卒業後、読売新聞に入社。松山支局、大阪本社で幅広く取材・撮影を行い、その後フリーに。現在の主なジャンルは旅行、特に飛行機・空港など。国内・海外取材ともに豊富。ニコンカレッジ講師。共著で『女子ひとり海外旅行最強ナビ【最新版】』など。X/ Instagram :@akishikama