『24 JAPAN』不調から見えた「日韓リメイクドラマ」の格差 | FRIDAYデジタル

『24 JAPAN』不調から見えた「日韓リメイクドラマ」の格差

お隣・韓国で大ヒットしたドラマ『サバイバー』も実は米ドラマのリメイク。違いはどこに?

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ドラマ『24 JAPAN』で日本版ジャック・バウアーを演じる唐沢寿明(57)。同ドラマには、仲間由紀恵、木村多江、栗山千明、池内博之、佐野史郎、でんでんといった豪華キャストが集結している 写真:WireImage/ゲッティ/共同通信イメージズ
ドラマ『24 JAPAN』で日本版ジャック・バウアーを演じる唐沢寿明(57)。同ドラマには、仲間由紀恵、木村多江、栗山千明、池内博之、佐野史郎、でんでんといった豪華キャストが集結している 写真:WireImage/ゲッティ/共同通信イメージズ

『24 JAPAN』はなぜこんなに不調なのだろうか。テレビ朝日が「開局60周年記念」ということで鳴り物入りではじめたにもかかわらず、視聴率も初回こそ7.7%だったものの第3回には世帯平均4.5%となるなど右肩下がり。筆者の周りの業界関係者からもまったく良い評判を聞かない。

テレビマンたちの感想をまとめてみると、要するに評判が悪いポイントは2つ。ひとつ目は「設定がまったく日本に合っていなくて、リアリティが皆無」ということ。これはどうやらアメリカ側との契約によって脚本が自由に改編できず、無理があっても「オリジナルに沿うしかなかった」ということが大きな原因らしい。

『24 -TWENTY FOUR-』がアメリカで放送を開始したのは2001年だから、もう20年近く前のこと。「いまさらなぜ24?」と思う方も多いだろうに、そのオリジナルに縛られて魅力が減少しているのはかなり切ない気がする。

そしてふたつ目の「がっかりポイント」は、低予算によるクオリティの低さ。テロとの闘いを描いているにもかかわらず「アクションシーンが安すぎる」「まるで『土曜ワイド劇場』を見ているような…演出が安くてテンポも悪いし緊迫感がない」「クオリティは再現ドラマ並み」と、知り合いのテレビマンたちから聞こえてくるのは酷評ばかりだ。

唐沢寿明さんはじめキャストはむしろ豪華で、キャスティングは頑張っていると思うが、むしろそれが撮影にかけられる予算を圧迫してしまったのだろうか。

実は『24 JAPAN』とまったく同じように、アメリカの人気テレビドラマをリメイクしていながら、大評判となったドラマがお隣の国・韓国にある。それが2019年に韓国tvNで放送された『サバイバー: 60日間の大統領』だ。日本でもNetflixで見ることができ、人気を博している。制作会社は『愛の不時着』なども手掛けた「STUDIO DRAGON」だ。オリジナルは2016年の米ABC『サバイバー:宿命の大統領』。大統領がテロで殺害されるなど、ストーリー設定も24に似ている。

オリジナルの主演が『24-TWENTY FOUR-』で主人公ジャック・バウアー役を演じたキーファー・サザーランドであることまで同じなのに、評価が真逆と言ってよいほど違っていることは結構皮肉かもしれない。

なぜこのような違いが生まれてしまったのか? 韓国と日本の両方で番組制作に携わった経験のある韓国人テレビ関係者・Aさんに話を聞いてみた。

「去年韓国で『サバイバー』が放送された時には、とても話題になったのですが、アメリカのリメイクだということを知らない人も多かったです。ちゃんと韓国の話になっていて、よく没入できるストーリーになっていました。それがひとつの成功の要因だと思います」

筆者も韓国版『サバイバー』は全話見たが、ネットで調べるまでリメイクとは思わなかった。そのくらい脚本はよく練られていて、細かいディテールまで韓国に「ローカライズ」されている。韓国人が「自国原作」と思っても不思議はないだろう。

さらに、韓国版『サバイバー』は冒頭いきなり韓国の国会がテロで爆破されるところから始まるのだが、アクションシーンが映画並みのクオリティでド迫力なのも魅力だ。この点についてAさんは意外な背景を指摘した。

「日本のドラマは『面白ければ映画化する』のが通常ですが、韓国ではドラマは映画化しません。ドラマがそのまま世界中でお金を稼げるドル箱コンテンツですから、ドラマに世界中から投資が集まります。別の言い方をすれば、韓国人はドラマに初めから映画と同じクオリティを求めているのです。だからドラマは映画クオリティで作らなければならないのです。

最近で言うと、2019年にSBS(ソウル放送)で放送された『バガボンド』(Netflixで配信中)は、制作費250億ウォン(約25億円)という多額の制作費がかけられたことで有名になりましたが、ド派手なアクションシーンの連続で好評を得ました。グローバルな競争を勝ち抜くためにはこれからどんどんこうしたドラマが出てくると思います」

「ヒットしたら映画化」を前提としている日本では、「ドラマそのもので勝負する」韓国に比べドラマにかける予算が少なくなりがちだというのは頷ける話だ。そしてさらにAさんはこんなことも指摘した。

「最初に日本の制作現場に行った時に、高齢のスタッフが多いことに驚きました。韓国ではドラマは週2回・60分のものを放送するのが前提ですから、撮影現場は非常に過酷です。そのため若いスタッフがほとんどです。やはり若いスタッフがいないと、ハードなアクションものはなかなか撮影できないのではないでしょうか。あと、脚本家も、韓国では若手を制作会社がちゃんと育成しています」

先日、筆者がとあるドラマ関係者に話を聞いた時にも、若者のテレビ離れや労働条件の問題などもあり、日本のドラマ制作現場にはあまり若手スタッフが集まらない現状があると嘆いていた。ひょっとしたらドラマ制作者の高齢化も、こうした「日韓のドラマ格差」の一因となっているのかもしれない。

いずれにせよ、世界的に有名なオリジナルをリメイクする場合には、優秀なオリジナルと常に比較される運命にあることは間違いないだろう。ぜひ『24 JAPAN』にも頑張ってほしいし、これからも日本のドラマ制作者のみなさんには、世界レベルで評価を受けられるようなリメイクドラマを生み出してもらいたいと心から願っている。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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