現地ルポ・10代の少女たちが作る「アメリカの未来」 | FRIDAYデジタル
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現地ルポ・10代の少女たちが作る「アメリカの未来」

沖縄からアメリカへ。大袈裟太郎が目の当たりにしたアメリカの「現在地」

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「Generation Z=Z世代」が躍動するアメリカを取材した渾身のレポート 撮影/大袈裟太郎
「Generation Z=Z世代」が躍動するアメリカを取材した渾身のレポート 撮影/大袈裟太郎

大統領選挙を取材するためアメリカに渡って7週間。今は、ロックダウン直前のニューヨークにいる。これまで各都市を回って人々の姿を直接見て、話を聞いてきた。そのなかで際立っていたのが、10代の少年少女たちの存在だ。「Z世代」2000年以降に生まれた世代。なかでも少女たちの活躍には目を見張るものがある。現場では少女たちが先頭に立ち、その後ろを少年たちが追いかけていくようなイメージだ。

明るいユーモアにあふれた「戦い」の現場

この世代がデジタルネイティブだということはもちろん重要な前提で、TikTokを使って意見を伝えたり活動を呼びかけたりするだけでなく、選挙後も不正選挙を叫ぶトランプ支持者の集会のハッシュタグをパンケーキの画像で埋め尽くすなど、僕ら世代には想像もつかないユーモアに溢れたムーブメントを巻き起こした。

彼女たちの主なプラットフォームはTikTokでありInstagramだ。大人の世界でTwitterは、今や公式の広報ツールのように機能している。TwitterやFacebookはすでに前世代のものとなりつつあるのだ。

彼女たちはTikTokやインスタのストーリーの短い動画で、政治的に尖ったメッセージを発信する。この世代の投稿にはファッションも音楽も政治も垣根がない。生活の中の「ふつうのもの」として、すべて同列に社会へ発信する。

さらに、この世代の背景にあるのは、2007年のリーマンショックだ。この「崩壊」を経験したことで、 経済的な成長よりもQOL(クオリティ・オブ・ライフ)個人の衣食住、生活の質の向上を求めるという考え方が台頭した。この時期に、コーヒーを自家焙煎する個人店や地ビールの醸造などが流行し、街のベースライン、豊さを示す指針になった。

それは例えばポートランドなどでは実験的に40年前から行われていたグローバルからローカルへの流れであり、自然との共存、サスティナブル、循環型社会への試みである。それが、消費社会が行き着く先の未来に希望を感じられなくなった人々のひとつの選択だった。

リーマンショックから13年。Z世代はまさにそこで育った世代なのだ。仏教的にいえば「足るを知る 」。この世代の素地を作ったApple創業者のスティーブ・ジョブズが禅に通じた仏教徒であったことも偶然ではないように思える。

大統領選は終わった。分断を越えて前へ

都市部で台頭した新しい価値観がアメリカ全土に共有されていくことで、地方や農村部が支持基盤の共和党はその存在意義を問われていた。

この新しい価値観の波に対抗する術を求め、共和党がすがったのがトランプであったように思う。宗教右派や移民排斥、レイシズムまで総動員し、果ては陰謀論やフェイクニュースを駆使して4年前、トランプは当選した。

4年前の共和党に、その先のビジョンがあったのかどうかは怪しい。トランプを利用していたはずの共和党が、トランプに食われてしまったというのが実状かもしれない。

そして今回の敗北。赤(共和党)陣営から次のアメリカへのビジョンがまったく見えてこないなか、青(民主党)陣営にはさらに青をアップデートしていこうとする存在が次々に生まれている。

女の子たちが、未来を作る

例えばAOCだ。アレクサンドリア・オカシオ・コルテスは、20代後半の非白人女性。民主党の重鎮に予備選挙で勝ち、世代交代を果たした。彼女の存在は、地元ブルックリンだけではなく全米の若者たちをエンパワーメントするロールモデルとなっている。

バイデンは年齢的に1期で大統領を退き、その後を副大統領のカマラ・ハリスに引き継ぐと目されている。カマラが2期8年大統領を務めたとして12年後、AOCはまだ43歳。その時のアメリカを思うと胸が高鳴る。

これから、今の10代、Z世代たちが選挙権を持ち、どんどん参入してくる。彼女らの視野には赤青、2大政党制に縛られないビジョンがある。

日本のZ世代が声を上げるためには

日本はどうか。今暮らしている沖縄で、活動の先頭に立っているのは年配の人たちだ。戦後75年たった今も米軍基地を抱え、数々のデマにさらされ、中央からの利権で分断されている。基地新設工事反対の座り込みの現場で、若い機動隊員が、時に泣きながら、自分の祖母や祖父ほどの年齢の人々を強制排除する日々が続く。若者の意識も高い沖縄でも、そんな光景を見てきた。

日本のZ世代が息を潜めているのはわれわれ大人の責任だ。政治の前にまず、「社会」に関心をもたなければ始まらないだろう。

「今の日本に必要なのはtravelでもeatでもなく、GoToVote(投票)

ある日本の中学生がつぶやいたことが、今の私の、ささやかだけれど確かな希望だ。

 

大袈裟太郎:1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り、「フェイクニュース」の時代にあらがう。

Twitter https://twitter.com/oogesatarou

  • 取材・文・撮影大袈裟太郎/猪股東吾

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