大量閉店の危機を迎えたファミレスが生存のために打つ一手 | FRIDAYデジタル

大量閉店の危機を迎えたファミレスが生存のために打つ一手

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「時短要請」が追い討ちをかける!? ロイヤルH・90店舗、すかいらーくH・200店舗が閉店! 

コロナ禍で外食企業の業績が落ちている。特にファミリーレストランの売上が深刻だ。

ロイヤルホールディングス株式会社が展開する「ロイヤルホスト」は緊急事態宣言があった4月に既存店の売上が前年比42.1%まで激減した。10月には95.3%まで回復しているものの依然厳しい状況が続く。また、株式会社すかいらーくホールディングスも「ガスト」をはじめとした既存店売上が4月に前年比41.8%まで下がった後、徐々に回復しているが、10月でも88.4%までしか回復していない。

11月25日の臨時会見で、東京都の小池百合子知事は酒類を提供する店舗などに対し営業時間の短縮要請を行うなどの方針を発表。外食業界は、また厳しい状況に置かれる

他のファミリーレストランチェーンも同様で、サイゼリヤは10月で90.1%、「デニーズ」を展開する株式会社セブン&アイ・フードシステムズが89.1%と、コロナ禍で苦しい経営を強いられている。

そうした業績を受けて、ロイヤルホールディングスは90店舗の閉店を検討すると共に、50歳以上64歳以下の社員を対象に200人程度の早期希望退職も募っている。また、すかいらーくホールディングスも来年末までに200店舗の閉店を決めるなど、ファミレス大手各社が苦境に立つ。

これまでファミレスは二つの大きな波を経て進化を遂げてきた。一つ目が第二次ベビーブームで、二つ目がバブル崩壊だ。そして今回のコロナ禍は三つ目の波になりそうだ。業界を代表するロイヤルホールディングスとすかいらーくホールディングスの動向を探りながら、変化の全貌に追っていく。

コロナ禍で「ガスト」も苦しい経営が続く。すかいらーくホールディングスが時代の大きな転換点となる第三の波をどう乗り越えていくか、注目が注がれている

2つの波から見る、ファミレスの歴史 

そもそもファミレスの歴史は意外と浅い。第一号とされているのが1970年7月、東京都国立市にオープンした「すかいらーく」だ。その後、1971年12月、福岡県北九州市の黒崎に「ロイヤルホスト」が、そして1974年3月、神奈川県横浜市の上大岡に「デニーズ」が、それぞれ一号店をオープンさせた。いわゆる「ファミレス御三家」が誕生するとともに、「ファミリーレストラン」という言葉も誕生したと言われている。

ファミレスが成長した要因として、団塊ジュニアを含むファミリー層の存在を無視できない。一般的に団塊ジュニアは1971から74年生まれを指す。ファミレス進化の一つ目の波もちょうど団塊ジュニアの誕生に合わせて始まる。団塊ジュニアは第二次ベビーブーム世代でもあり、その数は多い。ファミリーをターゲットに定めるファミレスにとって絶好の好機だった。

また、1960年代中頃から盛り上がったモータリゼーションも第一の波を後押しする。1970年に727万台ほどだった乗用車の保有台数は、1980年に約2275万台と3倍以上に増えた。それに合わせて各地で道路が整備され、その脇に続々とロードサイド型のレストランが誕生していく。

当時のファミレスは、多くの人にとってまだ非日常的な空間だった。とあるチェーンの社長は「絨毯が敷かれた店内を前に、靴を脱いで上がる人も少なくなかったです」と話す。そうしたハレの場所に家族で車に乗って出かけることが、ある種のステータスだったのだ。こうしてファミレスは団塊ジュニアの成長に合わせて店舗数を増やし続け、80年代に黄金期を迎える。

第二の波はバブル崩壊だ。今度は逆に多くの企業が時代の波に飲み込まれ、変化を余儀なくされた。第二の波を象徴するアイテムがドリンクバーと呼び出しベルだ。どちらもすかいらーくホールディングスが展開する「ガスト」が生み出したと言われている。ガストは1992年に誕生した低価格帯の新業態だ。それが象徴するように、バブル崩壊から景気が低迷し、日本はデフレ経済に突入していく。

失われた20年とも呼ばれるように低成長時代は長引く。それに伴い、2001年に吉野家が牛丼の並を280円にし、2002年にはマクドナルドがハンバーガーを59円にするなど、外食業界では値下げ競争が勃発した。ファミレスも例外ではない。ビジネスモデルの転換が求められ、「サイゼリヤ」や「びっくりドンキー」など低価格帯のファミレスが台頭。こうしてファミレスは家族でハレの日に使う場所ではなくなった。

時代のニーズを捉えて、デフレ下で一気に存在感を高めた「サイゼリヤ」。2000年頃は「ミラノ風ドリア」を290円という値段で提供しており、まさにデフレの勝ち組だった

そうした時代の変化を受けて、ロイヤルホストは96年から15年連続で売上を減少させた。一方で、すかいらーくはピーク時に4400あった店舗数を減少させ、2006年6月にMBOを行って非上場化したり、07年7月1日にはSNCインベストメントに吸収合併されたりと、バブルの負債を片付けるのに苦戦を強いられた。

また、デフレ経済だけでなく、市場の成熟による店舗数の急増もあり、ファミレスの一店舗辺りの客数と売上は減少した。その中で売上を上げるため、各社は顧客とのタッチポイントを増やす戦略を取る。それが業態の細分化とM &Aだ。

実際、すかいらーくは1998年に「じゅうじゅうカルビ」を、2001年にカフェレストラン「グラッチェガーデンズ」の一号店をオープンさせて、業態の幅を広げた。同時に、2003年にニラックス株式会社を、2006年に株式会社トマトアンドアソシエイツを子会社化している。

ロイヤルホールディングスも同様だ。2002年に「リッチモンドホテル」を展開するアールエヌティーホテルズ株式会社を、2005年に「シェーキーズ」や「シズラー」を展開するアールアンドケーフードサービス株式会社を、そして2006年には「天丼てんや」を運営する株式会社テンコーポレーションを、それぞれを連結子会社化させた。

こうして両社とも細分化された業態の強みを生かしながら、人材や食材といったコストをスリム化して力強い経営を実現させるためホールディングス化を行い、現体制になっていく。

第三の波、コロナ禍でのファミレス経営 

今回のコロナ禍が三つ目の波になる理由は二つある。

一つ目が損益分岐点の崩壊だ。 

ファミレスはピーク帯に収益が最大化するように一等立地に店を構えると共に、多くの客に対応できるようにたくさんの人材を抱えていた。しかし、コロナ禍でテレワークが浸透したり、外出の自粛が要請されたりして人の流れが変わった結果、繁華街やビジネス街が一等地ではなくなっている。同時にコロナ禍では客席を間引いた営業をしなければならない。大勢の客を入れて、それを回転させて利益をあげるビジネスモデルのファミレスには苦しい状況が続く。

つまり、出店の際に想定していた損益分岐をクリアできず、営業すればするほど赤字となってしまうということだ。特に重荷になっているのが家賃と人材費に他ならない。しかし、そこを見直すということは、ビジネスモデルそのものも転換をさせる必要がある。 

二つ目がデリバリーなどの新しい方法では稼げないということだ。

Uberなどのデリバリーサービスでは手数料を35%も取られるだけでなく、包材などのコストも5%ほど掛かる。その上に原材料なども掛かってくるので、手元に残る利益はわずかしかない。外食は利益“率”の商売だ。デリバリーだとそれが販売“数”になってしまい、競争原理が全く違う。

こうした状況を踏まえて、セブン&アイ・フードシステムズが10月12日、デリバリーとテイクアウト専門の「デニーズ新宿御苑店」を東京都新宿区にオープンさせた。同事例がしめすように、しっかりと稼げるモデルを確立させるには、大きな投資が必要となる。

最近、「デニーズ」はデリバリー&テイクアウト専門店の展開に力を入れており、新しい時代に合わせた経営を模索している

近年、ロイヤルホールディングスはレストラン、機内食、ホテルと多角化を進めてきた。中でもホテルと「天丼てんや」はインバウンド需要を取り込んで好調だったが、コロナ禍でいずれも大打撃を受け、90店舗の閉店と200人の早期退職希望者を募る結果に陥った。

一方、すかいらーくホールディングスは去年の黒字から一転し150億円の赤字となる見通しで、上場来初の通期赤字となる可能性が高い。その結果を受けて、都心部の「ジョナサン」を中心に200店舗の閉店を決めた。

次世代のファミレスの姿とは 

苦境に立つファミレス大手二社だが、大きな可能性を感じさせる新しい取り組みも行っている。

ロイヤルホールディングスの注目は「Gathering Table Pantry」だ。もともと同ブランドは2017年11月1日に馬喰町(現在は閉店)にオープンした実験的な店舗だった。同店は現金が一切使えない完全キャッシュレス型店舗で、調理も火と油を一切使用していない。そうした意欲的な挑戦が話題となり、昨年の12月24日に今後の展開を見据えて二子玉川店がオープンした。

二子玉川にオープンした「Gathering Table Pantry」。さまざまな先鋭的な取り組みをしており、次世代型のレストランとして注目度は高い(写真提供:ロイヤルホスト)

ここ数年、外食業界では「フードテック」というキーワードが盛んに使われている。その中核をなすのがDX(デジタルトランスフォーメーション)という考え方だ。外食はITなどのテクノロジーの活用が進んでいない業界の一つだ。だからこそ、テクノロジーを活用することで得られるインパクトは大きい。

人手が掛からないだけでなく、キッチンをコンパクトにできれば物件の選択肢の幅も広がる。次時代に合わせた損益分岐点の基、新たにビジネスを組み立てていけるということだ。この分野をロイヤルホールディングスが牽引していくのは間違いない。

他方、すかいらーくホールディングスは近年、データ経営を進めている。合わせて店舗に一人用の座席を用意したり、Wi-Fiを完備したりしていたことが、図らずもリモートワーク需要の取り込みに繋がった。

そもそもガストはドリンバーや呼び出しベルなど、業界の新しいスタンダードをつくってきた歴史を持つ。コロナ禍ですかいらーくホールディングスはデリバリーの売上高が前年比35%増となり、テイクアウトは約倍増となった。それを受けて、今後、デリバリーとテイクアウトの専門店の出店も進めていく。第三の波でも、すかいらーくホールディングスの軌跡が業界の常識になる可能性は高い。

確かに、コロナ禍でファミレスは苦戦を強いられている。しかし、これまでいくつもの危機を乗り越えてきた。今も、まさに目の間にある危機を乗りこなそうと必死の努力を続けている。第三の波を経て、ファミレスがどんな進化を遂げるか興味が尽きない。

  • 取材・文三輪大輔

    フードジャーナリスト。1982年生まれ、福岡県出身。2007年法政大学経済学部卒業。歓楽街情報誌や放射線技師専門誌、歯科衛生士求人誌などを経て、2014年に独立。外食業界を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。

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