プロ野球・契約更改難航で浮かぶ「代理人制度」の大問題 | FRIDAYデジタル

プロ野球・契約更改難航で浮かぶ「代理人制度」の大問題

日本では一向に浸透しない「代理人制度」、早急に条件の見直しが必要では?

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2019年オフ、新人王を獲得した村上宗隆(ヤクルト)は4500万円で契約更改を終え笑顔でポーズ

ソフトバンクの日本シリーズ4連覇で幕を閉じた今年のプロ野球。例年より短いストーブリーグに突入したが、この時期にもうひとつ大きな話題となるのが選手の契約更改だ。

既に各球団で交渉がスタートしているが、試合数が減少したことによる収益の減少で、例年より厳しい査定になることが予想されている。11月27日には今年正捕手として活躍した木下拓哉(中日)が長時間の話し合いでもまとまらずに保留。交渉後に中日の加藤宏幸球団代表は、今年は経営的に厳しいことから、金額的に譲ることはないとコメントしている。

今後も同様のケースは出てくると思われるが、このような事態に備えて選手会側も10月に経営悪化を理由に一律の減額を一方的に決めることがないように求める要望書を12球団側に送付したと発表。これを受けて11月9日にはNPBとプロ野球選手会の事務折衝がオンラインで行われ、12球団側も試合数減少に伴う一律の減俸は行わないと回答している。

例年より交渉期間が短いこともあって、球団と選手側で揉めるような構図にはならないように双方努力はしようとしているのが現状だ。

しかし気になる点があるのも確かである。

選手会が出した要望書の中では、今後一律の減額を検討するのであれば、これまで開示されていなかった経営資料をオープンにするようにも求めているという。この点に関する回答については報道されていないが、仮に契約更改の場で経営資料を見せたとしても、納得できる選手がどれだけ存在しているのだろうか。

近年では入団した選手向けに契約金や年俸など、お金についての勉強会を行っている球団もあるというが、そのような知識を持っている選手はそう多くはないだろう。過去にはドラフト1位で多額の契約金を受け取りながらも、数年後にはやりくりが厳しくなって寮に入りたいと申し出る選手がいたことが話題となった。選手だけで球団と対等に交渉するのは難しいと言わざるを得ないだろう。

そんな選手のために存在しているのが代理人だ。

契約社会のアメリカでは複雑な契約に対応するために、選手の代わりに代理人が交渉するのが一般的になっている。日本でも2000年のオフから代理人制度が適用されることとなったが、現時点ではまだまだ浸透しているとは言い難い状況だ。

代理人と契約しているのはメジャー移籍を目指すような選手や、複数年の大型契約を結んでいるごくごく一部の選手である。そして代理人を使うことが広まらないことには明確な理由がある。球団側が定める代理人制度のハードルが極めて高いのだ。

日本プロ野球選手会のホームページによると代理人の条件として以下が明記されている。

1.代理人は日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る。

2.一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない。

3.選手契約交渉における選手の同席に関して、初回の交渉には選手が同席する。二回目以降の交渉について、球団と選手が双方合意すれば、代理人だけとの交渉も認める。二回目以降は、選手が同席していた場合でも、双方合意すれば、選手が一時的に席を外し、代理人だけとの交渉となることも認める。

1については、契約ごとだけに正確な知識のある人間に限定するという考え方は十分に理解できる。

厳しい条件となっているのが2の『一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない』という点だ。この条件ではNPBに所属している全選手が代理人を利用しようとすれば、800人以上の有資格者が必要ということになるのである。

球団側の意見としては、一人の代理人が多くの有力選手と契約することで大きな力を持つことや、選手間での利益相反が生まれることを懸念しているためこのような規定を設けたと言われているが、これでは契約交渉のノウハウを持った代理人が増えることは考えづらい。球団と対等に交渉できる選手はいつまで経っても増えることはないだろう。

また、代理人規定が最後にアップデートされたのは2011年で、10年近くの月日が経っているのも大きな問題と言える。

中には契約交渉の場に自作の資料を持参して交渉に臨む選手もいると言われているが、代理人制度が広がればそのような作業をアウトソースして、もっとプレーに集中することも可能になるはずだ。この問題は現役選手にとどまらず、現在新入団交渉を行っている新人選手にも当てはまることである。

アメリカでは有望な選手にはアマチュア時代からエージェントがついて交渉に当たることが一般的だが、日本ではドラフトで指名されても知識のない選手や保護者が球団の言われるままに契約するというのが現状である。この点も見直されていく必要があるのではないだろうか。

プロ野球選手にとっては自分自身が資産であり、その資産によって発揮した成果(プレー)に対して妥当な報酬を求めることは当然のことである。そしてその資産を最大化するために、専門家を雇うというのは一般社会では至極真っ当な行為と言えるだろう。

2004年には巨人の渡辺恒雄オーナー(当時)が「たかが選手が」と発言して大問題となったが、選手と球団の関係はまだまだ対等とは言えない。健全な交渉が行われるためにも、健全な形で代理人制度が浸透していくことを望みたい。

  • 西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真共同通信社

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