「回転寿司界のさかなクン」くら寿司成功の裏に超絶バイヤーの存在

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
2020年1月にオープンした、グローバル旗艦店の1号店「くら寿司 浅草ROX店」 写真:ロイター/アフロ

「Go To Eat」キャンペーンで、ポイントを使って予約をしたのにさらにポイントがつくサービス「無限くら寿司」や、話題のアニメ『鬼滅の刃』とのコラボアイテムのプレゼントで注目を集めるくら寿司。コロナ禍で飲食店が苦戦している中、今年6月には平日の売上で過去最高を記録した。さらに全店合計では、昨年同月比で141%という快進撃を続けている。

そんなくら寿司では、次々と新しい寿司ネタを発掘し人気を博している。この秋、店舗で「ベジタブルフィッシュ ニザダイ」や「魚育はまち」という名前を目にした読者もいるのではないだろうか。

その立役者でもあり回転寿司界の「さかなクン」という異名を持つやり手バイヤー、大濱喬王氏に話を聞いた。

車ディーラーに就職も、魚への未練を捨てきれずくら寿司へ

「子どもの頃から魚が大好きで(笑)、山口県の水産大学校で学びました。卒業後、魚かもうひとつの趣味である車か迷い、車ディーラーに就職しました。そこで営業の仕事を4年半続けたのですが、魚に携わる仕事への未練が抑えられなかったんです。

あるときくら寿司が天然魚専門のバイヤーとして産地を回る人材を募集していたのを知り、『これだ!』と思って応募。2015年に入社し、いまに至ります。

現在、くら寿司のバイヤーは7人体制。それぞれ担当の食材で分かれています。私は通常メニューの仕入れというよりは、日本の漁業の未来を見据えたプロジェクトの一員として、仕事に取り組んでいます」(くら寿司バイヤー・大濱喬王氏 以下同)

「安心・美味しい・安い」がコンセプト 写真:ロイター/アフロ

競りを介さないことで、新鮮な天然魚を安定調達する「一船買い」

「回転寿司店の場合、魚は水産会社さんなどから買い付けることが多いんですが、くら寿司では2015年から『一船買い』を始めました。全国3箇所の漁師と契約し、漁で獲れた天然魚を一匹残らず買い取る方式です。

一船買いの取り引き量は、年間約300トンほど。このほかに全国110ヵ所から買い取る天然魚は1500トンほどになります。こうして仕入れた天然魚は寿司販売の3~4%ほどになりますが、これを5%まで上げることを目指しています。

一船買いにはいろいろなメリットがあります。獲れた魚は競りを経由せずに直接弊社の工場へ向かうので、鮮度が高い天然魚が手に入る。そして、年間契約でキロ単位の購入をするので、弊社にとっては購入価格が安定する一方、漁師の方々にとっても安定収入につながる。また、魚を選別せずに買い取ることで、地元でしか食べられないおいしい魚に出会うこともできるんですよ」

一船買いを実現するまでには、いろいろありました。最初の頃は漁師の方々に話を聞いてもらえないことがほとんど。なかなかない試みなので、理解していただくのに時間がかかりました。現在取引している愛媛県の魚島村漁業協同組合さんでは、少しずつ魚を分けてもらうところから始め、2ヵ月間移住して漁を手伝ったりしながら漁師さんを説得し、取引に至りました」

20種以上の寿司ネタを発掘「天然魚プロジェクト」とは?

「くら寿司では、国産天然魚を有効に活用し、限りある海洋資源を守りながら漁業者様との共存共栄をめざす『天然魚プロジェクト』を2010年より実施しています。市場に卸すことができずに廃棄になる魚や幼魚もまとめて買い取る『一船買い』もこのプロジェクトの一環です。 

『天然魚プロジェクト』では、新しい魚の発掘にも力を入れています。廃棄予定のキャベツを与えることで臭みを抑えておいしくした『ニザダイ』や、定置網にかかってしまった未成魚を生け簀で育ててから出荷する『魚育はまち』が最近商品化されました。

新しい魚としては、アイゴやイスズミに注目しています。アイゴとイスズミはニザダイと同じように海藻を食べる海の厄介者で、漁師さんから何とかならないかといわれています。いまは獲れても困る魚ですが、臭みをなくすことができれば寿司ネタとして期待できると思います。アイゴには毒針があってニザダイ以上に厄介なんですが、ぜひチャレンジしたいですね」

2020年1月21日から、佐藤可士和氏デザインの新ロゴを導入したくら寿司 写真:ロイター/アフロ

日本には、まだ知られていないおいしい魚がある!

「天然魚を求めて日本全国を駆け回る中、バイヤーとして大切にしているのは産地の方々との『絆』です。『天然魚プロジェクト』では、産地と弊社が日本の漁業の未来を見据えて取り組む必要性があるととらえているため、普段からコミュニケーションを密にとり、何でも話せる環境整備を意識しています。日本の魚を身近に食べられる環境整備のために、新規の漁業者の就労についても取り組みを始めているところです。

日本にはまだまだ知られていない、おいしい魚がたくさんあります。漁師さんとの会話から得た、漁のプロしか知らない魚や食べ方をもとに、これからも新しいおいしさをお客様に届けていきたいですね」

一皿100円という手軽さで、幅広い世代に愛されるくら寿司。いつ訪れても色とりどりの寿司がレーンを流れる裏側には、日本のおいしい天然魚を届けたいという大濱さんの熱い想いがあった。よい食材を調達するだけでなく、漁師や漁場もハッピーになれるかたちを追い求めるくら寿司は、世界中から愛される寿司という食文化の一端を担っていくことだろう。

  • 取材・文浜千鳥

Photo Gallary3

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事