『フィスコ』才色兼備3人衆が語る「超株高時代」の読み方
第3波が襲う新型コロナや米大統領をめぐる対立が収まらないにもかかわらず、株式市場だけは好調だ。変化の激しい時代に、資産運用をどうすればいいのか――。独立系の投資情報サービス会社『フィスコ』で活躍するレポーターとアナリスト3名が話し合った。
――11月24日、日経平均株価は終値で2万6165円をつけ、バブル崩壊後の’91年以来、29年ぶりの高値を更新しました。
白幡 私はその頃まだ生まれていないので、知らないんですよ(笑)。
高井 私もバブル崩壊とともに生まれた世代なので、新鮮というのが率直な感想なのですが、馬渕さんはいかがですか?
馬渕 え~、私に話を振らないでよ(苦笑)。私も物心がついた頃にはデフレになっていました。だから29年前と比較できませんが、ただ、現状では過熱感がある気がします。現在のPER(株価収益率)は24倍程度ですが、日経平均の適正な水準は16倍ほどですから。
白幡 たしかに今は株だけが高く、実体経済が伴っていないので、景気がいいという実感はありませんね。
馬渕 新型コロナで傷(いた)んだ実体経済を助けるために大規模な金融緩和が行われ、その資金がマーケットに向かっています。金融政策で産業を救おうという考えで国や中央銀行が動いているのですが、実体経済との乖離(かいり)が大きい。
高井 ただ、今後ワクチンが有効と確認され、世界中に普及して経済が成長を取り戻していくという長期的なシナリオは変わらないと思っています。
白幡 経済活動もある程度は再開されていて、かつ今期の企業業績の見通しも出揃ってきました。それを織り込んで現在の株価水準になっていると思います。この株高はコロナが完全に終息するまでは続くでしょう。世界各国が未曾有の金融緩和政策を行っていますし、米国も新大統領になるバイデン氏は路線を維持すると言っています。すると、コロナの出口が見えてきて、金融財政政策が正常化していくなかで株価が崩れていく可能性が高いのではないでしょうか。
高井 ちょっと違う視点で話すと、アノマリー(経験則)でよく言われている「株は10月末のハロウィンに買って5月に売れ」という言葉があります。経験則的に10月末から年末にかけて株価は上昇します。12月末までは底堅く推移していって、年明けがちょっと心配かな。
――新型コロナの前から、政府はNISAやiDeCoを含め、個人の資産運用を推奨しています。
白幡 NISAやiDeCoを使った積み立て投資はおすすめです。個別の株式投資は常にマーケットを追う必要がありますが、積み立てだと月にいくらと決めたら、むしろマーケットを見ずに続けたほうがいい。下がってびっくりして売ってしまうのではなく、長期で見たときに上がるように少しずつ積み立てる。
私は楽天証券がおすすめで、普段楽天でお買い物している人であれば楽天ポイントで投資信託や国内株式が買えるし、買ったらポイントも貯まります。
馬渕 私はまずはNISA、iDeCoを使ってインデックス投資を行ったうえで、個別株への投資という2軸でやるのがいいと思います。
高井 個別株も最初はご自身が働かれている業界で、10年先も安泰だろう、と思える企業を選ぶのがおすすめです。
時代は電気自動車だ!
馬渕 個別銘柄で言うと、まずは脱炭素・クリーンエネルギーに注目していて、神島(こうのしま)化学工業が面白いと思っています。太陽光発電を地上ではなく宇宙で行う「宇宙太陽光利用システム」がJAXAを中心に研究開発されていますが、そこに「レーザー用YAGセラミックス」を提供しています。業績も非常に良く、’21年4月期第1四半期は経常利益が前年同期比2.3倍の3.3億円に急拡大しています。
高井 バイデン次期大統領がクリーンエネルギー関連に4年間で2兆ドルという過去最大規模のインフラ投資を行う計画を掲げていて、私も投資テーマとして注目しています。まずは再生可能エネルギーの開発から運営まで一貫して手掛けているレノバ。次にイーレックスは大型バイオマス発電所に関して、ENEOSと共同で事業化を検討することで合意したと発表しています。太陽光発電システムの施工や販売を手がけているウエストホールディングスなどにも注目していきたいですね。
白幡 私は環境関連という意味ではEV(電気自動車)にも注目しており、産業用モーターの開発・製造・販売を手がけていて、EV向けモーターに力を入れている日本電産はやはり外せません。中国を中心にFA(工場自動化)に伴う装置の受注が回復しているファナックは、EV生産用のロボットも生産しています。
高井 EV関連なら村田製作所も注目株です。電子機器に欠かせない積層セラミックコンデンサの世界シェアトップ。足元ではスマホ向けの販売が伸びているけど、中期的にはEV向けの需要が期待できます。村田製作所に続く、世界シェア3位の太陽誘電にも注目しています。
馬渕 環境関連だったらエフピコも面白い。食品トレーや弁当容器の最大手で、新素材開発などの技術力が高くて、リサイクルに強みがあります。もともとスーパーへの出荷がベースだったんですけど、コロナでテイクアウトやデリバリー需要が増加して、外食チェーンにまで広がりを見せています。
高井 バリュー株でいうと、関西電力はいかがでしょうか。温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロにする話が出ていますが、そのために原発再稼働の議論は避けられないと思っています。そのなかでPBR(株価純資産倍率)が1倍以下で、配当も高い同社が注目される機会があると思っています。
白幡 菅義偉総理が掲げたデジタル庁創設関連でデジタル化が加速されると思いますが、関連銘柄はすでにマーケットで上がってしまっているものも多い。まだ上昇余地があると思っているのが、Jストリームです。動画配信プラットフォームやライブ配信サービスを提供し、システム開発も行っていて、今後も業績拡大が期待できます。
馬渕 もったいないのは、全体的に株高だと思って、資産運用を控えてしまうこと。探せば割安な銘柄はあります。資産運用をしようと思っている方は、今からでも始めてほしいなって思っています。
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- 撮影:鬼怒川毅