実父に強制性交された16歳娘の、あまりに悲しいLINEの中身

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当時16歳だった実の娘と性交したとして、監護者性交等罪に問われた男性(40代)の差し戻し審が現在、福島地裁で開かれている。

被告は2018年8月3日、父親の立場に乗じて、自宅で同居する娘・Aさんと性交したとして、同年10月に起訴されたが「Aが意図的に虚偽の被害申告をした」として無罪を主張していた。そのため公判では“Aさんの供述の信用性”が争点となっている。

福島地方裁判所 福島市花園町 写真:共同通信

一審の福島地裁郡山支部は2019年3月「Aの証言は信用でき、被告人が監護者としての影響力に乗じて娘と性交等をしたと認められる」として、被告に対し懲役6年の判決を言い渡したが、被告が控訴。仙台高裁が同年12月「審理が尽くされていない」ことを理由に、一審判決を破棄し審理を地裁に差し戻した。

差し戻し前の郡山支部では、被告は事件当日の午前8時半頃から同日10時50分ごろまでの間に、自宅でAさんと口腔性交および性交を行ったとされている。

これはAさんの証言に基づくものだ。Aさんによれば、前日の夜に被告から「明日の午前中にな」と言われていたので、起床してから、説教をされるのだと思い、居間の被告人のもとへ行ったところ、被告から「一緒にお風呂に入るぞ」と言われたという。

これまでも説教をされながら胸を触られたり膣に指を入れられたりしたことがあったため「このときも自分が悪いことをしたと理解させるために風呂で胸を触ったりするのだ」と思ったのだそうだ。ところが風呂で体を触られたのちに、風呂から出て居間に行くと被告から「服を脱げ」と命じられ、性交されたという。

郡山支部ではAさんの供述の信用性について、当人の証言に加え、“友人Cさんに被害を申告した状況”や“高校の同級生で同じ部活に所属するBさんに被害を申告した状況”などに関連する証拠を検討した上で「十分信用できる」と判断していた。

Aさんが、その友人・Cさんに対して、事件直後とされる時間帯に送ったLINEは証拠として採用されており、次のようなものだった。

「ついにね」
「やりましたよね」
「おやと」
「フェラもしましたさ」
「なまですよ」

これに対してCさんが「中出し?」と返信したことに対しAさんは、次のように返信した。

「出してないね」
「途中でやめました」
「処女がおやっていうね」
「おわったよね」
「いやもう男子が無理な希ガス」
「彼氏なんて一生いらないわ」

続いて、高校の同級生で同じ部活のBさんは、郡山支部での公判に証人出廷し、尋問にこう語っていた。

「事件前日の8月2日、Aさんが『被告人から説教を受けるときに胸を揉まれるなどの性的被害にあっている』ことを相談するメッセージを送ってきた。

事件当日の昼過ぎごろ、Aさんは、部室にいた私を部室の外の木陰に呼び出して話をしようとしたが、泣き出してしまって、しばらく話をすることができなかった。

そのあと『お父さんに入れられた』『服を脱げなどと言われ、これは教育の一環だなどと性的暴力をされた』などと、被害を告白した」

また、Bさんは、この日の夜9時過ぎごろ、Aさんから次のようなLINEのメッセージを受け取った。

「家に入ったやん その時のこと蘇るやん まじでおかしくなるよね」
「気持ち悪すぎて」

こうした告白を受けてBさんは、Aさんに対して、警察や母親に相談したほうがいいと伝え、Aさんは事件から2週間後の8月17日に警察署を訪れ被害を申告した。母親に被害を打ち明けたのは、そのあとだった。

被告の弁護人は「Aがかねてから被告人を嫌悪していた」ことや「意図的にAが虚偽の被害申告をした」と主張したが、郡山支部の判決では「16歳で高校生のAが、一人で複数の友人を巻き込みながら、そこまで周到な準備を重ねて虚偽の被害申告をしたと考えるのは非現実的で無理があり、Aが実際に申告した通りの被害に遭って思い悩んでいたからこそ、被害申告に先立って複数の友人に相談したと考えるほうがはるかに自然で合理的である」と認め、さらに「全て計算の上で意図的に虚偽の被害申告をしたのであれば、警察に行くようにというBの助言は好都合で、直ちに警察に被害申告を躊躇う理由は全くないはずなのに、実際には申告まで2週間を擁している」と弁護側の主張の矛盾を指摘した。

「周りに迷惑をかけたくなかったし、卒業まで我慢すればいいと思ったので、すぐに警察には行かなかったが、最終的にこれ以上我慢できないと思って警察に行った」

Aさんは差し戻し前の公判でこう証言しており、郡山支部も「被害申告までに時間を要した理由を合理的に説明できている」と、Aさんの証言の信用性を認めていた。

今年10月15日に福島地裁で開かれた差し戻し審の初公判では、改めてAさんの証人尋問が行われた。『ビデオリンク方式』による尋問が採用され、裁判官や検察官、弁護人からは、別室にいるAさんと映像と音声でやりとりする。傍聴席から映像を見ることはできず、音声だけが聞こえるという状態だ。

Aさんは「なぜ被害を申告したのか」と改めて問われ、ビデオごしに涙声でこう語った。

「お父さんと性行為するのは犯罪でもあるし、実際にもあったことなのに、お父さんが『なかった』と言い張れば、なかったことになるのはおかしい」

そんなAさんに対して弁護人が「なぜ性交のとき嫌だとその場で言わなかったのか」と質問すると、Aさんは次のように答えていた。

「お父さんの説教が伸びたり殴られたりするかもしれないので嫌だと言えなかった」

ところで、仙台高裁が「審理が尽くされていない」とした点のひとつは、被告による「明日の午前中にな」という発言がいつなされたのかということに関してだ。Aさんは差し戻し前の公判で「前日夜」と証言していたが、弁護側は、被告の出勤時刻記録やAさんの携帯電話のGPSなど客観証拠に照らすと、前日夜にふたりは顔を合わせていなかったため、これは虚偽だと主張していた。

郡山支部は「事実と異なる可能性があるが、この点についてAが事実と異なる証言をしているからといって、そのことが意図的に虚偽の被害を述べているとの疑いを直ちに生じさせるものではない」と「明日の午前中にな」という発言をもとに、Aさんの証言の全てを虚偽だと認めることはしなかった。

差し戻し審でAさんは、この「明日の午前中にな」という言葉が発された日時について改めて問われると「いつ言われたか覚えていない」と答えたが、被害に遭った日が8月3日であることは変わりなく記憶していた。郡山で一番大きな祭りのあった日だったからだという。

「その日は『うねめまつり』があったので、覚えています」

事件ののち、Aさんは保護施設に預けられ、その後、母方の祖母のもとへ引き取られた。高校は定時制への転校を余儀なくされ、両親は離婚している。

「お父さんのことを警察に言わないで自分だけが我慢していれば、お父さんとお母さんが離婚することがなかった」

涙声でAさんが証言する間、マスク姿の被告は、左下のどこか一点をじっと見つめ続けていた。

11月27日に行われた公判の最終陳述では「私は無実です。娘が私を陥れようとしている。無実の証拠はあり、証拠は証言だけ。(中略)警察と検察、娘が全員グルになって私を犯罪者にしようとしてるんじゃ無いかとまで思う」と、声を震わせ、言葉を詰まらせながら訴えた。

また、この日の公判にあたり、福島地検の次席検事は、差し戻し前の立証不備を認め、差し戻し審に至ったことについて「被害者に負担をかけて申し訳ない」と謝罪。福島地裁はAさんの供述をどう判断するのか。判決は2021年1月に言い渡される。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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