勝者は『恋あた』森七菜?秋ドラマ「好調・不調の舞台ウラ」公開!
見どころがわかる!もっと楽しめる! 重厚すぎる月9『監察医 朝顔2』、賛否両論の『姉ちゃんの恋人』、『ルパンの娘』で深キョンとのSEXY対決を制した女優、『24 JAPAN』大苦戦の理由、『七人の秘書』大躍進にほくそえむテレ朝、森七菜が奮闘する『恋あた』、コア視聴率をおさえた『極主夫道』ほか
『この恋あたためますか』 森七菜 中村倫也 仲野太賀


「秋ドラマの印象を一言で言うなら『順当』。月9『監察医 朝顔2』と日曜劇場『危険なビーナス』というフジテレビとTBSの看板ドラマがキッチリと数字を取っています」(キー局プロデューサー)
ここまでの平均視聴率が14%超と最も高いのは『七人の秘書』だ。
「木村文乃(ふみの)(33)や広瀬アリス(25)たち警視庁、東京都、大銀行、大学病院の優秀な秘書が悪を懲(こ)らしめる『七人の秘書』はスパイ大作戦的な内容で爽快感がある。露出度は低いが、お約束的なプールのシーンもあって観やすく、楽しい」(ドラマウォッチャー・北川昌弘氏)
広告代理店社員が続ける。
「米倉涼子(45)が主演する予定で『ドクターX』でコンビを組んでいた脚本家の中園ミホさんのスケジュールを押さえていた。ところが、独立やコロナ禍を理由に米倉が〝降板〟してしまった。惨敗も覚悟していたところ、代役の木村で14%も取れた。『ギャラを抑えつつ大躍進できた!』と万々歳ですよ。キャストを変えれば続編もやれる。新しい鉱脈が見つかったとテレ朝はほくそ笑んでいます」
コロナ禍を逆手に取ったのが、『#リモラブ~普通の恋は邪道~』だ。
『ハケンの品格』など数々のヒット作を手がけた日テレの櫨山(はぜやま)裕子プロデューサーが「テレビ屋として一回、コロナと格闘してみたかった」と臨んだ意欲作だ。
「波瑠(29)ら出演者はほぼマスク着用。手洗いと消毒を欠かさず、ソーシャルディスタンスを常に意識した演出が印象に残りました。それでいてテンポの良いラブコメに落とし込むという離れ業をやってのけています。前クールの『MIU404』のように面白いドラマは必ず現実とリンクしているもの。今後、ドラマがコロナをどう扱っていくか、現実をどう意識していくかを考える試金石になるでしょう」(ライターの大山くまお氏)
今年、コロナとともにドラマ制作に大きな影響を与えたのが3月に全国で導入された「個人視聴率」だ。これまで視聴率は世帯単位で測定されていたが、「個人視聴率」の導入で家族の誰が観たのかまでわかるようになった。そこから商品購買力のある13歳~49歳の男女の数値を抜き出したのが「コア視聴率」である。
「コア視聴率で秋ドラマを見るとランキングが一変します。『極主夫道』と『危険なビーナス』、『この恋あたためますか』(恋あた)が一歩抜け出し、『監察医 朝顔2』『35歳の少女』『#リモラブ』が追う展開になる。実に3作品が日テレ系。他局に先駆け、3年前からコアを意識して番組作りをしてきた成果です」(制作会社幹部)
そんな日テレ勢を一気に引き離すべく尻上がりに数字を伸ばしているのが『恋あた』だ。牽引するのは弱冠19歳で主役に抜擢された森七菜である。
「爽やかでポッチャリ&おっとり。デビュー直後の井上真央を彷彿(ほうふつ)させる可愛さに、いつの間にか引き込まれます。コンビニを舞台に、挫折した地下アイドルがスイーツ開発を通じてイケメン社長と出逢う――という企業モノと恋愛モノがゴッチャになったシンデレラストーリーなんですが、小学生でも理解できるぐらいわかりやすい。
説明的なセリフや都合のよすぎる演出などのムダを排除することで、登場人物の心理を伝わりやすくしているからだと思います。とくに森七菜の心境は手に取るようにわかる。役に入り切っているからで、彼女の巧さですよね」(主婦ドラマウォッチャーの吉井和美氏)
深キョンとのSEXYバトル
かつてトレンディドラマで若者に支持されたフジ系が迷走しているのは皮肉だ。
「『監察医 朝顔2』は東日本大震災が大きなテーマ。震災で母が行方不明になった法医学者が刑事の父と遺体に向き合い、事件を解決していくというシリアスな話。それを上野樹里(34)、時任三郎(62)ら重厚な演技の巧い俳優が演じるから観ていてツラくて……」(北川氏)
主演・有村架純(27)&脚本・岡田惠和(よしかず)という朝ドラ『ひよっこ』のコンビを立てた『姉ちゃんの恋人』は「登場人物それぞれが複雑な過去を持っていて、それでも健気(けなげ)に生きていこうとする姿がグッとくる」(大山氏)という声がある一方、「記事を書くために視聴するのも苦痛なほど、ストーリー展開が静かで退屈」(テレビ専門誌記者)と賛否両論だ。
ならば深田恭子(38)のコスプレが楽しめる『ルパンの娘』で勝負したいが、
「ストーリーが現実離れしすぎていて、数字的には苦戦してます。興味深かったのは、田中みな実(34)がゲスト出演した第5話の視聴率が0.5%アップしたこと。深キョンとのSEXYバトルを制したことで『みな実は数字を持ってる!』と評価はうなぎ上りです」(民放幹部)
最も「コア視聴率」対応が遅れたテレ朝は『七人の秘書』以外、大苦戦している。
「鈴木おさむ脚本の『先生を消す方程式。』は、秋元康の原案でヒットした『あなたの番です』のような〝考察スリラー〟を装っていますが、実際はただ視聴者を驚かせればいいと思って目先を変えているだけの粗雑な作品。鈴木脚本は『M 愛すべき人がいて』がチープな味わいで話題になっていただけに残念です」(大山氏)
開局60周年記念作品の『24 JAPAN』は、もっともっとツラい。
「米FOXで放送された『24』のストーリーは基本的に変えないというのがリメイクの条件だから、視聴率が苦戦してもテコ入れができない。2シーズン(全24話)完走も条件に入っているので、打ち切りもできない。コロナ禍で撮影は制限され、制作費も減少しているので、劣化に歯止めがかからない」(テレ朝関係者)
最後に、玄人(くろうと)のドラマ好きに刺さっている作品を紹介しておこう。
「『共演NG』は中井貴一(59)と鈴木京香(52)が共演。企画&原作が秋元康、 脚本&監督が大根仁(おおねひとし)と、テレビ東京としては異常なほど力が入った作品です。芸能界が舞台でテレビ局への風刺もきいていて正直、おもしろい!」(北川氏)
本誌を参考に、終盤戦に入った秋ドラマを堪能していただければ幸いだ。
『ルパンの娘』 深田恭子

『極主夫道』 玉木宏 川口春奈

『七人の秘書』 広瀬アリス 菜々緒

『姉ちゃんの恋人』 有村架純 林遣都

『#リモラブ~普通の恋は邪道~』 波瑠

『FRIDAY』2020年12月18日号より
撮影:足立百合、結束武郎、近藤裕介