『七人の秘書』も…木村文乃と菜々緒はなぜドラマ共演が多いのか
性格もセルフブランディングも正反対の2人だが?
今夜22時放送の『七人の秘書』(テレビ朝日系)が第8話の放送で最終回を迎える。異なる職種の秘書たちが陰で結託して、既得権益を振りかざして生きている面々を容赦なく倒していく物語。視聴率も民放ドラマ圏ではぶっちぎりの一位をキープする13.9%(第7話放送分)なのに、たった8話で終了してしまうとは寂しい。めちゃくちゃ面白かったのに。
絶対に楽しいであろう、最終話の前にこの作品を見ていてふと気づいたことがある。本作では主役の東都銀行の秘書・望月千代役の木村文乃と、警視庁の秘書・長谷不二子役の菜々緒がいる。この2人が並ぶ絵は既視感があると思っていたら、ドラマでの共演回数が非常に多かったのだ。
人間味あふれる木村VSサイボーグ菜々緒
女優歴が長くなれば、必然的に共演回数は増える。でもこの2人、たったの5年間で4回も出演作が重なっていたことには驚いた。
まずは2人が出会う作品となった2015年放送の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(関西テレビ、フジテレビ系)。ここで見かけた二人の印象が強烈だった。刑事役の木村は今よりもふっくらしていて、オン・ザ・前髪。対する、殺人鬼役の菜々緒は当時から抜群のスタイルで、9頭身とも言われている。木村も身長164センチですらっとしているのに、菜々緒と並ぶと影が薄くなってしまう。そのビジュアルの差でできてしまった穴を埋めるように、木村の演技は凄みがあったことを思い出す。
2017年になると立て続けに共演があった。冬ドラマでは、『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)で、木村は優秀で苦労もしているオペナース役。対するように菜々緒は、大学病院の医師の愛人であり、明るい敏腕弁護士役。積極的な絡みが多くはなかったけれど、キャラクターの違いがきっちりと表れていた。
同年の春ドラマ『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系)では、親友同士という新しい設定に。それも木村が陰キャで菜々緒は陽キャという、これまでの共演作とは真逆のシチュエーション。トップ女優はここでもそれぞれのキャラクターの違いを分かりやすく表現。菜々緒のスーパースタイルも影が薄くなっていたような……。

全てが“真逆”の2人の共演はまだまだ続く?
そして2020年放送の『七人の秘書』だ。今回は7人グループのうちの、2人でそれぞれに過去に悔しい経験を持っている同士。それでも菜々緒は本来のビジュアルを生かした艶っぽさと、空手の有段者というギャップを持つ。木村はスーツを着た真面目な派遣社員の雰囲気。さすがに4回目の共演となれば、それぞれの違いの表現も知っているのだろう。
さらにこの2人、おそらく性格やセルフブランディングも全く違う。それを示すのがインスタグラムだ。木村は得意の料理や趣味のことをアップしていて人間味がふわん、と漂ってくる。ファンに向かって私生活をアピールすることを考慮しているのだろう。対するように菜々緒のインスタはSっぷりがじわじわと伝わってくる、自分の写真のアップ率が高い。「余分なことは書きません」とでも言いそうに、コメントも少なめだ。
共演回数が多いとはいえ、お互いを自身のSNSに登場させることはない。あくまでも仕事のみのつきあいと判断しているのなら、それもまたいい。
これまでの共演作品は全て放送しているテレビ局が違うし、所属事務所も異なる2人。それでもキャスティングが続くのは、正反対のムードを持つトップ女優だからだ。2006年にデビューした先輩の木村の方が主演や、番手がやや上であることが多い。菜々緒の女優デビューは2011年ではあるが、今後この位置さえも変わっていくことも十分にあり得ると思うと、共演が楽しみだ。
文:小林久乃
エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。
写真:Pasya/アフロ、Rodrigo Reyes Marin/アフロ