3億キロの彼方から帰還する『はやぶさ2』6年間の偉業

プロジェクト責任者・津田雄一氏が語る!小惑星『リュウグウ』でのサンプル回収任務を終え、12月6日にオーストラリア・ウーメラ砂漠に着陸

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打ち上げに臨む『はやぶさ2』。上部の立方体が本体。無事『リュウグウ』の土壌サンプルを届けられるか(写真:JAXA)

「未知の小惑星『リュウグウ』のサンプル回収ミッションもいよいよクライマックスです。しかし最後に一発勝負のオペレーションが残っています。こんな緊張感、いままで味わったことがないですよ」

12月6日、小惑星『リュウグウ』の土壌サンプルを届けるべく、『はやぶさ2』が3億㎞離れた宇宙から地球へと帰ってくる。プロジェクトマネージャである『宇宙航空研究開発機構(JAXA)』の津田雄一教授(45)は、サンプルがもたらしうる可能性に胸を膨らませる。

「『地球の生命の起源の一因が隕石によってもたらされた』という説について、研究を進める手掛かりになると期待しています。『リュウグウ』の採集物から生命の源であるタンパク質やアミノ酸が発見されれば、生命誕生に関する謎の答えに一歩近づけるかもしれない。それに、小惑星は地球だけに衡突したわけではないはずなので、ほかの天体でも生命が育まれている可能性も示唆することができます」

’14年12月3日、地球を飛び立った『はやぶさ2』は、’18年6月27日、『リュウグウ』に到着した。しかし、その道のりはけっして平坦なものではなかった。

3億㎞という距離は、地球と月の距離の約800倍に相当する。光速に近い速さの電波を飛ばしても、本体が受信するまでに約20分のタイムラグが発生してしまう。さらに『はやぶさ2』は太陽などの天体や、約100万個存在するという小惑星からの重力などさまざまな力を受けるため、地上では常に細やかなオペレーションが求められる。そして、最大の難関は『リュウグウ』へのタッチダウン(着陸)だ。

「一番驚かされたのは地表全体が無数の岩に覆(おお)われていて、どこを見ても安全にタッチダウンできる場所がなかったことでした。チームで何度も議論を重ね、編み出した解決方法は、『表面写真から岩をひとつひとつ数え、大きさを測り、一番なだらかな場所を探る』という、ものすごく原始的な方法でした。
『リュウグウ』の表面積は東京ドーム50個分以上に相当する2.7平方㎞もあります。さらに上から撮影すると岩の縦横のサイズは把握できますが、高さはわかりません。高さは太陽の位置と岩が落とす影の長さから推測するしかない。当初は1枚の写真を解析するのに1週間という時間がかかりました。作業をしたメンバー曰(いわ)く『やり続けるうちに無の境地に至る』らしいですが、徐々に解析スピードが上がり、やがて1日でできるようになりました。それでも、タッチダウンの場所を決めるのに約半年かかりました」

待ち受ける「最後の関門」

無事サンプルの回収を終えた『はやぶさ2』は順調に帰還の旅を進め、プロジェクトは最終段階に入った。しかし、そこには最後の関門が待ち受けている。それは「カプセル分離」オペレーションだ。

「『はやぶさ2』は地球から約22万㎞の距離まで接近し、一辺がわずか100㎞ほどの長さしかないオーストラリアのウーメラ砂漠内の目的地へとカプセルを着陸させます。たとえるなら東京から蹴ったサッカーボールを、ブラジルのサッカーコートに落とすくらいの精度が必要。少しでも角度や速度を間違えれば失敗します。しかも、一度失敗してしまえばカプセルは二度と戻ってきません。正直、不安のほうが大きいです」

12月5日、一発勝負の分離オペレーションへ臨むチーム『はやぶさ』。津田氏には、プロジェクト開始時から掲げてきたある〝理念〟があるという。

「目指したのは『淡々と完璧に実行』することであり、この考えは常にチーム全員で共有してきました。きちんとした技術にドラマはいらない。最後まで冷静に、やれることをやるだけです」

現代科学が挑(いど)む未知への挑戦を、ぜひ見届けてほしい。

『はやぶさ2』によって撮影された小惑星『リュウグウ』。直径はわずか900mしかなく、岩で覆われている(写真:JAXA)
初代『はやぶさ』のプロジェクトにも参加した津田氏。「文字通り前人未踏の世界に触れられる」ことが探査ミッションのやりがいと語る(写真:JAXA)

『FRIDAY』2020年12月18日号より

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