「妄言」「身の程知らず」金与正が再び韓国を罵倒する意外な理由
「身の程知らずの批判」
「なんの計算もない妄言」
「凍てついた北南(南北)関係により冷たい風を吹き込んだ」
12月8日、北朝鮮の指導者・金正恩氏の妹・金与正氏が韓国を激しく罵倒する談話を発表した。キッカケとなったのが、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の発言。バーレーンで開かれた中東地域の国際会議で、北朝鮮が新型コロナウイルス感染者が一人も出ていないと主張していることに疑問を呈し、こう揶揄したのだ。
「彼ら(北朝鮮)はいまだに感染の事例がないと訴えるが、とても信じがたい。北朝鮮らしい不思議な状況だ」
この発言に与正氏が反応。康外相を批判するコメントを発表したのだ。与正氏が韓国を罵倒するのは、今回が初めてではない。
「ムカつく」
「吐き気がする鉄面皮」
今年5月に脱北者団体が北朝鮮に向けビラを撒布すると、韓国の文在寅大統領をこう罵っている。与正氏を激怒させたのは、ビラの中身だ。『デイリーNKジャパン』編集長・高英起氏が語る。
裸の合成写真に激昂
「北朝鮮では絶対的な存在である、金ファミリーを誹謗する内容が書かれていたそうです。正恩氏は不倫の子で、父親の正日氏は旧ソ連の野戦病院生まれだと。それだけではありません。中には正恩氏の妻・李雪主氏や側近男性が、裸で寝ころがる合成写真も飛ばされたといわれています。あまりにも卑猥で、北朝鮮にとっては最大の侮辱でしょう」
今回、与正氏が再び韓国にキバを向いた理由はなんだろう。背景には、米国大統領選の結果が絡んでいるという見方がある。
「米国の国務副長官ビーガン氏が、12月8日から韓国を訪問しています。米韓を牽制する狙いがあったと見られているんです。新大統領になるバイデン氏の態度も不透明。米国の反応により、新大統領の姿勢を見極めようとしているのかもしれません。
また、批判のキッカケとなった康外相はもともと北朝鮮に友好的ではありません。文大統領が求める南北対話の再開を望むなら、外相を交代させろというメッセージとも考えられます」(韓国紙記者)
前主・高編集長は、別の推測をする。
「今回の与正氏の発言は、対外的でなく国内へ向けられたアピールでしょう。感染者ゼロということはありえないと思いますが、北朝鮮がコロナ対策を徹底させているのは事実です。コロナが蔓延したら、医療体制の脆弱な北朝鮮は国家として成り立たなくなってしまいます。中国との国境を閉鎖し、ただでさえ経済が逼迫しているのですから。韓国の外相を批判することで、人民に『北朝鮮は安全だ』『よりコロナ対策をしっかりしろ』と伝えたかったのだと思います」
北朝鮮でもコロナ感染者が多数いることは、世界保健機構(WHO)も認めている。いくらパフォーマンスで事実を隠そうとしても、事態は好転しない。
- 写真:共同通信社