精神科医が教える、コロナ禍の「しんどさ」をリセットする方法 | FRIDAYデジタル

精神科医が教える、コロナ禍の「しんどさ」をリセットする方法

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

YouTuberとしても活躍する精神科医Sidow氏が教える「自殺を決断する前にできるこれだけのこと」

自殺する人が増えている。警察庁のデータによると、10月の時点で男性は前年同月比21.3%増、女性は82,6%増となった。「精神科をもっと身近に!」と、YouTuberとしても活動するメンタルドクターSidow氏に、コロナ禍での「しんどさ」の背景と、辛い精神状態をリセットする方法を聞いた。 

Sidow氏は、YouTubeが注目する次世代のクリエイター「YouTube NextUP 2019」日本代表にも選出された

緊急事態宣言で自殺者が一時的に減ったのは、来るべき今日の前触れだった!?

今年4月、緊急事態宣言で自粛が続くなか、失業者も増え始め、懸念されたのは自殺率の増加だった。けれど蓋を開けてみると4月の自殺者数は前年比19,8%減、5月は19%減。自殺率の減少に、「リモートや休校で人間関係のわずらわしさから開放されたことが一因では」との声もあがっていた。ところが、実際はそうではなかった。

「コロナに限らず、大きな災害や事件があると、起こった直後は〝なんとか乗り超えなきゃ!〟という気力があるので、そこで自殺を選ぶ人は少ないのです。 

心の問題は、むしろ落ち着いてきたタイミングで出てきます。 

今回のコロナでも大体の全体像がわかってきて、自分の精神と向き合う時間があったことで、自殺が増えてきたのかなと感じます」(Sidow以下同)

原因のひとつに生活の困窮が挙げられる。倒産、破産、失職が増え、精神的に追い込まれる人は増えている。

「自殺を考える人は、冷静な判断ができなくなることが多いです。失業保険や生活保護などいろいろな支援制度がありますが、視野が狭窄しているとそこにも目が行きません。 

生活保護は、それを受けるようになったらおしまいだと考えがちですが、いったん受けたとしても将来仕事に就いたら辞退すればいいわけです。 

“ゼロか100しかない”と、極端に考えるのは避けるべきです」

死にたいと思うときは、どんなシチュエーションであれ、視野が狭窄しているもの。冷静な判断ができず、極端な考えに走りやすいという

うつ病から自殺へ。ルールを完璧に守ることで追いつめられてしまう人も

人との接触を恐れるあまり自宅に引きこもり、孤独や孤立感を深めるのも危険だ。自殺者の4割がうつ病と言われるが、どんな人がうつになりやすいのだろうか。

「うつ病になりやすい人は生真面目で、厳格にルールを守り、そのルールを破ることに罪悪感を覚えます。GoToキャンペーンをやっていても、使うのは気が引けるとか、人がたくさんいる場所は危険だからやめようと考えがちです。 

感染予防の面では確かに大事ですが、それを続けるとメンタルにはよくありません。一人で散歩したり、屋外で運動をするのはかまいませんし、数名の人と時間や距離を保った上で会うことは禁止されていません。 

精神科に来ていただいても、日常を変えない限り、“しんどさ”からは開放されません。自分でうまく折り合いをつけながら、やれることを増やしていくのが良いと思います」 

また、意外にあやういのが主婦層だともいう。これまでは家族の留守中に気晴らしもできたのが、テレワークで家族がずっと家にいるようになって常に家事に追われ、それが負担となってしまうのだ。

「家族といえどもひとりの時間は大切です。全員が自由な時間を持てるように家族間で擦り合わせをして、ひとりの時間を作ってあげる配慮は大事です」

死にたいとまで追い込まれている人は、今の時点がいちばんマイナスだと思いこみ、なおかつその状況がずっと続くような気になっていることが多い。

産後うつや、学校でのいじめから死を選ぶ人はこのケースといえるだろう。産後はいつまでも続かないし、学校もやがて卒業する。けれど人は過去の自分に起こった変化に比べ、将来の自分に起こる変化を低く見積もりがちになってしまう。

「特にマイナスなことに関してそういう傾向が出やすいのです。例えば誰かにフラれて落ち込んでも、5年後、10年後に同じ気持ちでいる可能性は低いですよね。長期的な目で見られることは大事です」

ストレスを溜め込むうちに、押しつぶされてしまうケースも

とかくストレスの多いコロナ禍だが、今は大丈夫と思っていても、そのストレスを放置すると、うつ病や厭世観につながってしまう。

「ストレスを感じる空間にいるのはゴムが引き伸ばされた状態のようなもので、短時間なら元に戻りますが、長時間だと戻りきれなくなってしまいます。 

不可逆的な精神の不調を引き起こさないためにも、なるべくストレスを感じない状況に身をおきましょう。 

自分がストレスのない空間にいるかを判断する簡単な方法は、無理せず笑えているかです。無理して笑う必要のない場所を、なるべく多く見つけてください」 

終わりの見えないコロナ禍では、これといった理由もないのに獏とした不安に絡めとられてしまう人もいる。

「そういう人は、進むべき方向がわからずオロオロしている状態といえます。 

解決策として重要なのは、目標を定めることです。 

大きな目標でなくても、例えば3日後に友だちと遊びにいこうとか、今週中に部屋を片づけようとか、 ちょっとした予定でいいんです。 

そうやって小さな予定や目標を立てることに慣れてきたら、徐々に目標を大きくしていきましょう。

不安に押しつぶされそうになったら、心配ごとを書き出してみるのもよいでしょう。 

書くことで不安の全体像がハッキリして、 自分が何に対して恐れを抱いているのかが明確になります。 するとそれを解決するために必要なことが見えてきて、心のモヤモヤが少しずつ軽減されていくのです」

ひとりで悶々と悩んでいる人は、誰かに話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になる。孤独感が強く、誰にもわかってもらえない、どうしようもないと感じたときに、自殺の可能性は高まってしまう。

「相手に理解してもらおうという期待はせずに、聞いてもらえる相手がいるだけよかった、と考えましょう。精神科医やカウンセラーでもよいですし、友人や恋人などプロでなくてもかまいません。カウンセラーは話を聞いて心理検査をするのがメイン、医者は診断や治療がメインです。

薬を出したり診断することはカウンセラーにはできませんので、じっくり話を聞いてもらいたいときはカウンセラー、診断を仰ぎたい場合は精神科を受診してください。カウンセラーは臨床心理士、公認心理師の資格を持っている方をおすすめします」 

Sidow氏の患者さんのなかにも、ここ数ヵ月ほとんど外出していなかったり、人と話していないことで孤立感や孤独を深めている人は多いという。直接会うのが難しくても、ネット上でのやりとりも有効とのこと

周囲の人は、励ましの言葉よりも辛さを受け入れてあげることが大事

コロナ禍の生活では、少しずつ順応していくことが大切なのだという。

今までなかったことだからこそ、困難をある程度受け入れ、慣れていくことが重要なのだ。

「しんどいのは自分だけではないということを自覚して、生活を考えていく必要があります。 

ただ、それは自分が感じるべきことであり、他人から言われると、むしろマイナスに働きます。 

人はそれぞれ感じ方が違うので、辛そうな人に、“あなただけが辛いわけじゃない”“なんでそんなことでショックを受けるの?”などと言うのはやめましょう。 

周囲の人は本人の辛さを認め、あくまでも“サポートしているよ”というスタンスを示すのが大切です」

状況を受け入れたとして、どうすれば前向きになれるのだろうか。

「周りに依存したり、過度に期待するのをやめましょう。 

大きな意味では政府もそうです。 

何ごとにおいても、期待が大きいほど叶わなかった時の反動も大きいので“来年はワクチンができるから大丈夫”などと期待せず、とりあえず自分ができることに集中したほうがメンタルはコントロールしやすくなります」

今日から始めたい、“コロナうつ”からの脱却方法

たとえメンタルが弱くても、生き方が楽になる方法はある。今日からでもできる具体策が、実はいろいろあるのだ。

「情報収集は最低限にとどめてください。テレビをつけっぱなしにしていると、取捨選択ができない不確かな情報がどんどん入ってきて不安になります。 

軽度の運動は効果的です。体を動かすとノルアドレナリンやセロトニンなどの脳内の神経伝達物質が増えますし、体力がつくことにより、できることの幅が広がります。 

ネガティブに考えやすいのは脳が疲れ、精神的に落ちていることが原因。そんなときに一番いいのは寝ることなので、早く寝るためにもある程度物理的に疲れさせる運動が大事です」 

フライデー世代は仕事に忙殺されるうえにテレワークの人も多く、普段より体を動かしたり歩く頻度が減っている。軽度の運動は精神疾患の予防に役立つ。積極的に体を動かしたい

自分はおかしいんじゃないか? そんな風に感じた時の見極め方は以下のとおり。

「メンタルの不調も体に症状が出ることがあります。 

疲れやすくなった、やる気が出ない、眠れない、食べられないなど、漠然とした体調の悪さが見られたら、精神的なことも考えるべきだと思います」 

 

最後にSidow氏のYouTubeより「自殺に繋がる危険な心理3選」を紹介しよう。精神科に通うことに抵抗がある人も、未だ少なくない。そんな人はこのYouTubeを参考にしていただきたい。自殺の心理を知ることで、自分や周りの人が自殺を予防することに繋がるのだ。

 

メンタルドクターSidow(メンタルドクター・しどう) 精神科専門医×YouTuber。東邦大学医学部卒。現在は都内の精神科病院に常勤医として勤務。精神科医として働くなかで、世間の精神疾患に対する偏見や誤解の解消、精神科への早期受診の必要性を実感し、SNSで情報発信を始める。親しみやすい人柄が話題となり、現在、自身が運営するSNSの総フォロワーは10万人を超え、さらに人気急上昇中。著書に『メンタルドクターSidowが教える 人間関係も仕事も「しんどい」ことをリセットする方法』(大和書房)がある。

メンタルドクターSidowのYouTubeチャンネルはコチラ

メンタルドクターSidowのTwitterはコチラ

 

「漠然とした不安に流され、同じところを回っている」(『メンタルドクターSidowが教える 人間関係も仕事も「しんどい」ことをリセットする方法』(大和書房)より)

  • 取材・文井出千昌写真アフロ

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事