『リモラブ』嫌われキャラを好かれキャラに引き込む波瑠の魅力 | FRIDAYデジタル

『リモラブ』嫌われキャラを好かれキャラに引き込む波瑠の魅力

波瑠には、なぜ女性ファンが多いのか?

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『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜(以下、リモラブ略)』(日本テレビ系・毎週水曜・22時〜)は秋ドラマの中で、一番斬新だった。コロナ禍を逆手に取るかのように、演者全員マスク着用、ソーシャルディスタンスと世相をそのまま表した作品だ。

これが視聴者に受け止めてもらえるのかどうか、一か八かの勝負。結果的に、この勝負は作品の勝利だ。顔を背けたくなるようなコロナ禍の現実を、全て笑いに変えた『リモラブ』は強かった。もちろん、賛否両論はあると思うけれどエンタメの新しい形だったことは間違いない。

その勝利の大きな理由に、主演の波瑠の存在がある。

“はじめムカムカ、中ウンウン”でいつの間にか共感

今回『リモラブ』で波瑠が演じている大桜美々は、企業の産業医。クソ真面目で、どSに近いカタブツ女子だ。コロナ対策にはやたら厳しく、ちょっとした気の緩みも許さない。そんな社内嫌われ女子が、同僚と恋に落ちていく。

初回で、消毒液を振り撒く美々のカタブツぶりを見ていると「痛々しい」という印象だった。実際、仕事で出向く出版社やテレビ局にも、このような女性がチラホラといて、打ち合わせに入るまで何度も検温をさせられた記憶が蘇る。「そこまでしなくてもいいのに」。でも現実はこういう存在があるからこそ、社会の規律が守られているのだけど。

美々は現在彼氏持ちになったが「イチャイチャは嫌だ」「まだ濃厚接触は無理」などやたら条件が厳しい。そのうえ、第八話では大病院のお嬢様であることも判明、モデルにもスカウトされたなど鼻につく条件を並べてくるのだが、これが面白くなっている。あれ? 初回放送時は「もうちょっとプライドを曲げればいいのに」と思っていたのに、いつの間にか美々にハマっている

ドラマを追いかけながら生じる、この女心の変遷。なんだろうと思い返すと、波瑠の演じる役は初回の反感の買われ方が……半端ない。

例えば『あなたのことはそれほど』(2017年)では、普通の主婦でありながら、同級生とズブズブの不倫に落ちていく渡辺美都役。夫にするのか、不倫相手に走るのか? どっちつかずの態度は役を超えて、波瑠自身まで反感が及んだ。確かブログで本人も、その件について言及していた。それまで清廉潔白な役やイメージだったことも、理由の一つだ。

それが終盤になると「まあ、女も不倫したくなるよね」という、女性論調に変化する。実はこの世に“ヤリ妻”が多かったという事実が、同時にバレ始めたこともあるけれど。

続々と女性ファンを獲得していく波瑠の背中

そして『G線上のあなたと私』(ともにTBS系・2019年)の小暮也映子役も同じく。婚約者に振られて、ついでに仕事も失ったOLがバイオリンの趣味を通して、徐々に自分を取り戻していく物語。ここで年下男子と恋に落ちそうになるけれど、なかなかはっきりしない也映子。「今、いけよ!!」と何度、テレビに向かってイライラしたことか……。

結局物語はハッピーエンド。でもこれも途中から「也映子の気持ちもわかるよ」と共感している視聴者が増殖。ドラマは人気絶頂の中、終了した。そしてそこにはいつも主演の波瑠がいる。

展開が幸せへ向かっていくのなら、視聴者の見解が変わるのは当然かもしれない。でも主演俳優によっては釈然としないまま、終わることは多い。特に不倫だ、年下イケメンとの恋だと、女性の意見が真っ二つに分かれるテーマは俳優の力が大きい。そこで波瑠の存在はめちゃくちゃ貴重だ。

なぜ彼女が最終的に支持される女優なのかと振り返ると、女性ファンが非常に多いことがあると思う。たまに彼女の出演作に関してコラムを書くと、私のSNSのメンションやDMに「ありがとうございました!」と、お礼を送ってくるのは100%女性ファン。みんな「ガチで波瑠が好き!」というのがじわじわと伝わってくる。

女性ファンの多い女性タレントは男っぽいという説を聞いたことがある。確かに彼女はSNSでも多くは語らず、要所要所で、ファンが喜びそうな写真をアップしている。特に自分の食べたものや、使っている化粧品をアピールはしていない。その様子「黙って俺の背中についてこい」だ。ああ、この人がどんな反感女性を演じても最終的に、皆が納得してしまうのは男っぽさに理由が宿っているのかもしれない。ホントに男っぽい女性は「私、サバサバしてるんで」「男みたいって言われるんですよ(笑)」など余分なことは言わないから。

そんなことを考えながら『リモラブ』の終盤を見守りたい。美々先生があっさり普通に幸せになっていくのは、ちょっと想像がつかない。何か変化球をくれ、と願いながら。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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