コロナで改革余儀なくされたニュース番組「知られざる5つの変化」 | FRIDAYデジタル

コロナで改革余儀なくされたニュース番組「知られざる5つの変化」

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4月には、『報道ステーション』の富川悠太アナがコロナに感染。発熱したことを局側に報告せずに報ステに出演してしまったことが問題となった 写真は『FRIDAY』2020年6月26日号より

2020年はまさに「コロナ禍の一年」だったが、テレビの報道番組にとっても激変の一年となった。番組内容や、そこで働くテレビマンたちの「働き方」にまで、実は知られざる驚くべき変化が起きている。

年の瀬を迎えるにあたり、テレビニュースの現場で日々働くテレビマンたちに、今年いったいどんな変化が起きたのか? 話を聞いた。

① 取材に行かなくなった

まず誰しもが「最も大きな変化」だと声を揃えて指摘するのが、「取材に行かなくなった」ということ。

「ストレートニュースはリモートでもできます。報道は本来なら現場第一なはずだけど、感染リスクを第一に考えるようになったから現場に出なくなりました」(民放・夜のニュース番組ディレクター)

というように「現場に行ってナンボ」だったはずのニュースのスタッフたちが、外出せずに放送局の内部で仕事をすることが多くなっている。インタビューなら、zoomなどのリモート会議システムで十分だ、という認識が新しい常識になってしまった。しかもわざわざ外出しなくても、そうやってリモートで撮影したインタビューや、スタジオトークで視聴率が稼げるのだという。

「医療やウイルスの解説では、スタジオの専門的な話でも数字が落ちません。そしてVTRが会見メインでも数字が落ちないんです」(前出のディレクター)

各局とも「ニュース特集」はめっきり本数が減った。そして同じニュース特集をいくつもの番組で「使い回し」することも当たり前になった。下手すると朝・昼・晩と同じ特集を使い回した挙句、翌日まで使い回すこともあるという。中には予算削減も兼ねて「特集班」を廃止した番組まである。

そして「外出しなくなったこと」にはもうひとつ大きな理由があるという。

「取材ができない状況で、どうやって時間を持たせるかということを考える必要があるんです。取材よりもむしろ演出や加工に人が必要になっています。あと、『今日の感染者は何人』とか『重症者が何人、死者が何人』とか、やたらと数を集計する作業が増えました。ですから『カウント班』みたいなチームを作る番組も増えていて、そこにかなりの人数をとられています。

ニュースのスタッフ自体は減っていないどころかむしろ増えているかもしれないのですが、ほとんどの人は外に出ないで局内で仕事をするようになっています。感染を恐れて外出を控えているのに、むしろ局内が密になっているような感じもありますね(苦笑)」(民放報道局員)

そして、「外出しないこと」は思わぬ効果をニュース番組にもたらしているという。それは「結果的にコスト削減ができている」ということだ。

なにせ取材に行かないから、移動のための車両代や交通費がかからない。そしてカメラマンの稼働も減るので、外注費も少なくて済むようになる。さらに、コメンテーターなどもスタジオに出演してもらうと、お車代やメイク代などがかかったが、リモートなら出演料のみで済む。

まさかリモートということで出演料まで安く済ませているのか?と質問したら、「もともと予算削減で、専門家のギャラなどは値切れるところまで値切っていて、人によっては一回1万〜1万5千円くらいしか払っていないから、それを減らすことはさすがに無いのではないか」(民放報道局員)とのことだった。

② 画質が悪い映像を平気で使うようになった

「取材に行かなくなった」ということは、自分たちで映像を撮影することも無くなったということだ。「画質の悪いリモートや、素人撮影の映像でも平気でOAするようになった」という声が多く聞かれた。

「少し前からテレビニュースでは、視聴者提供映像に頼っている部分はあったのですが、コロナ禍になってから『スマホでこんな映像を撮って送ってください』と依頼することすら普通になってしまいました。いまスマホで撮影した映像でも、スマホを横向きにさえしてくれればかなり高画質で、記者が使う安いビデオカメラより綺麗だったりします(笑)」(民放報道局員)

③ 流行りのコンテンツ取材が急増

取材にも行かず、映像も撮影しない。そんな中で「コロナで気分が滅入っているからか、明るい話題の方が視聴率が取れる」のだという。そんな中で大流行したのが、「いま流行っているコンテンツ取材を特集すること」だ。

「『愛の不時着』や『鬼滅の刃』があそこまでヒットしたのは、ニュース番組で取り上げたことも大きかったと思います。内容を批判せず持ち上げていれば、素材も映画会社などから喜んで貸してもらえますし、手軽に作れて関心も高いネタなので視聴率も取れるから、ヒットコンテンツ取材は映画会社にとっても我々にとってもウィンウィンなんですよね」(民放報道局員)

内容を決して批判せず、「視聴者の関心に寄せて、ヒットコンテンツの内容を上げる」特集は、「コロナで外出できない中、みんな何をしているのか」という関心が高いので各局こぞって放送するようになったという。

④ テレビマンが「健康になった」

「仕事が終わったらすぐ帰れ、タクシーは25時までに乗れ、飲みに行くなと言われている。仕方がないとはいえ、息苦しさも感じます」というのは、民放の夜のニュースのスタッフの声だ。

日頃なら飲み会大好きで、睡眠時間を削ってでも飲みに行きたい人間も多いテレビ業界が、いま感染を恐れた局の指令で「健全な生活にならざるを得ず、健康になるテレビマンが続出」しているというのだ。

「4人以上の飲み会は禁止で、局内の喫煙所もどんどん閉鎖されています。会議もオンラインになって、かつてテレビ業界といえば長時間の会議が当たり前でしたが、短くなっています。身体は嫌でも健康にならざるを得ません(笑)

ただ、逆にメンタルを病む人は増えているようです。特に若いADさんなどは、リモートを多用した番組作りで日頃とは違う仕事が増えて悩み、病む人が増えていると聞きました。テレビマンって、会社にいると嫌な気分になって心を病みがちなんですよね。ロケに行きたい人たちなんです」

⑤ 一番の問題は「元に戻れるか」

このように「取材しない」「撮影しない」など、この一年で制作方法や働き方が大きく変わったテレビニュースの世界だが、一番の心配は「元に戻れるか」ということだという。

「コロナとは違う理由で『省エネスタイル』をこのまま続けようと局の上層部はしている気がします。『お金を使わなくても、やればできたんだからこのままでいいのではないか』ということで、このまま元に戻らなそうな気がして不安ですよね。人間は易きに流れると言いますしね……」

コロナでCMが売れなくなり、局の財政は厳しくなった。『お金になる放送以外の事業収入を増やせ!』というのがいまの局内の空気だという。大幅に削減した報道番組の予算を、この先元に戻すことは無いのではないかという不安の声が現場からは出ている。

もちろんテレビ局も経営が大切だろう。しかし、「取材もしないし、映像も撮影しに行かない」ニュース番組にいったいどんな存在意義があるというのか。そのへんも局の上層部にはよく考えてもらいたいところである。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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