光しか見えない!2021年のヤクルトに期待できる5つの理由 | FRIDAYデジタル

光しか見えない!2021年のヤクルトに期待できる5つの理由

しかし、懸念材料が一つだけ!

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12月4日契約更改を終え、青木宣親(左)からキャプテンを引き継いだヤクルトの山田哲人(中央)。右は高津臣吾監督  写真:時事通信社
12月4日契約更改を終え、青木宣親(左)からキャプテンを引き継いだヤクルトの山田哲人(中央)。右は高津臣吾監督  写真:時事通信社

2021年はヤクルトにとって希望と躍進の一年になる!

「2021年のヤクルトについて、明るく希望の持てる展望コラムをお願いします!」

旧知の編集者からの依頼だった。その後に、「この時期だからこそ書ける原稿を!」と続くのだが、その行間には「どうせ開幕したら、希望の持てる原稿など書けそうにないから、今のうちに!」という思惑が透けて見えた気がしたのは、4年間で3度の最下位チームファンならではのひがみ根性と卑屈な思いの表れなのだろうか?

いずれにしても、苦難の2020年シーズンを経て、すでにチームは21年に向けて始動している。12月中旬時点では、近年にない積極的な補強が目立ち、「いよいよ球団も本腰を入れ始めたか」と確かな手応えを感じつつある。昨年までヘッドコーチを務めていた宮本慎也さんは、かつてこんなことを言っていた。

「真中(満)監督が就任した2015年にセ・リーグ優勝したとき、その前年のオフにロッテから成瀬(善久)、日本ハムから大引(啓次)をFAで獲得したり、セットアッパーとしてオンドルセクを獲得したり、ヤクルトは積極的な戦力補強をしましたよね。新戦力が活躍するかどうかはともかく、積極的な補強姿勢を見せることで、選手たちは“球団は本気だぞ、来年こそ行けるぞ!”って、意外とその気になるものなんですよ」

このオフの積極的な補強策を見るにつけ、宮本さんの言葉がよみがえる。選手補強だけではない。来季からは新たに「育成コーチ」を新設するし、今季からNPB初導入された「ホークアイ」の本格運用が始まる。これにより、投球・打球の精緻な解析が可能となるのだ。近年まれにみる積極的な強化策の数々を見るにつけ、来季への夢が広がってくる。(おそらく)半笑い気味に原稿依頼してきた編集者の鼻を明かすべく、来季のヤクルトの「明るい希望」を具体的に検証していきたい。

21年ヤクルトに期待できる5つの理由

①山田哲人、石山泰稚残留!

冷静に考えれば、「残留」というのは、基本的には「現状維持」である。しかし、FA権を獲得した選手が、熟考の末にチームにとどまることを決意したのだ。最悪の場合は「ミスタートリプルスリー」と「不動のクローザー」が流出する覚悟を決めていたのに、その2人がチームに残ったのだ。「どうせいなくなるだろう」と悲観的に考えていた選手が、「もちろん残ります」と宣言してくれれば、来季以降、ファンの声援はさらに増す。それはつまりは選手のモチベーションアップにつながる。新聞紙上では情緒的に「ヤクルト愛」というフレーズが躍っていたが、他球団の評価を聞いた上で、「慣れ親しんだヤクルトでなら、自分の実力が発揮できる」と判断したのだ。複数年契約の弊害を指摘する声もあることは承知しているが、年末年始のめでたい時期にそんな雑音はシャットアウトする。

②山田哲人新キャプテン就任!

個人的には、これがこのオフ最大の衝撃的ニュースであり、朗報でもあった。誰にも真似のできない実力を誇りながら、「いや、僕はいいです」「僕はあまり目立ちたくないです」と言っていた(ように見える)山田が、青木宣親の後を継いで、自らキャプテンに立候補したのだという。残留を決め、破格の7年契約を結んだことで、明らかに今までにない責任感と自覚が芽生えている。来季から始まる「山田哲人第二章」に俄然注目したい。

③青木宣親3年契約締結!

18年新春、青木宣親の電撃復帰は衝撃的だった。かつて背番号《1》を背負っていた青木が古巣に帰ってきた歓喜と悦楽。18~20年の3年間、チームの主力として、精神的支柱として、青木の存在感は抜群だった。かつて在籍していたときと比べ、プレーは円熟味を増し、キャプテンシーはさらに磨かれていたのが嬉しかった。青木の存在があればこそ、山田もキャプテンに立候補したのだろう。まだまだ老け込む年じゃない。まだまだやれる。

④適切な外国人補強!

バレンティンの抜けた穴は、想像以上に大きかったと再認識させられたシーズンを終え、「足りないパーツ」が明確になった今だからこそ、電光石火の新外国人獲得に踏み切った。これは近年まれにみる速攻劇だ。村上宗隆を一塁に固定すべく、三塁を守れるホセ・オスナを、先発投手のコマ不足を補うべく、サイスニードを、そして20年シーズンずっと苦しめられた「五番不在問題」を解消すべく、ドミンゴ・サンタナを獲得。外国人が活躍するかどうかは水物だけど、こうした「意図の見える補強」は実に心地いい。

⑤大ベテラン、内川聖一の入団!

20年の内川は不遇だった。前年には史上最も遅いプロ19年目でゴールデングラブを獲得した男が、まったく出場機会に恵まれなかった。出番に飢えたベテランの爆発力は、相手チームにとっての脅威となる。あぁ、味方でよかった。恩師・杉村繁コーチとの再会も彼にとっては好結果につながるだろう。「右の代打の切り札」となるのか、それとも「不動の一塁手」が確約されている村上宗隆を脅かす存在となるのか? ベテランの技術と経験と意地が、チームに新たな化学変化を呼び起こすのだ。

気が気でない、「あの人」の去就は?

21年シーズンに向けての「好材料」を挙げればキリがないのだが、紙幅も尽きた。これ以上、列挙するのは野暮だろう。トライアウトでは日本ハムから宮台康平が加わった。左のワンポイント、もしくはセットアッパーとしての役割が期待される。

ソフトバンク育成を経て、まだ22歳という若さの小澤怜史が加わった。「ソフトバンク育成出身投手」と言えば、記憶に新しい長谷川宙輝を思い出す。すでに小澤は長谷川に電話をして、いろいろアドバイスをもらっているという。また、楽天からは、こちらも25歳とまだまだ若い近藤弘樹が育成契約となり、かつての先輩である嶋基宏に電話でのあいさつを済ませているという。

内川を筆頭に宮台、小澤、そして近藤……。おっ、すべてパ・リーグ出身選手だ。ということで、最後にもう一つつけ加えさせていただきたい。

⑥さらに拡充、「安定のパリコレ」!

かつて、「野村再生工場」と呼ばれていた時代から、ヤクルトではパ・リーグから移籍した選手が活躍する伝統がある。現役で言えば、その筆頭格が坂口智隆であり、期待のホープが長谷川だ。この系譜に、21年からは内川や宮台が連なることだろう。生え抜き選手と移籍選手の熾烈なポジション争いに胸を熱くさせられるはずだ。

……さて、ここまで何事もなかったかのように威勢のいい文章をを連ねているけれど、賢明なる読者諸兄もお気づきのように、我々ヤクルトファンには最大の懸念がある。そう、ライアンだ。小川泰弘の去就は12月23日時点ではまだ確定していない。希望とともに年を越し、来るべき新年を幸福な気持ちで迎えるためも、ぜひ、最後にこう書きたい。

⑦我らのエース、ライアン残留!

これが現実となることを祈りつつ、このコラムの結びとしたい。これでライアン残留が決まれば、本コラムを依頼した編集者の「半笑い」も少しは真剣な表情に変わることだろう。……あぁ、本当に頼むよ、ライアン!

  • 長谷川晶一

    1970年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経てノンフィクションライターに。転身後、野球を中心とした著作を発表している。主な著書に『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『幸運な男 伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』(インプレス)など多数。文春オンライン内の文春野球ではヤクルト担当として2年連続優勝を飾る。Number Webでコラム「ツバメの観察日記」連載中。

  • 写真時事通信社

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