最速162㎞!阪神・藤浪の意外な告白「自分はスライダー投手」
流行中の「ピッチトンネル」、「初球カーブ」の多大なメリットなど、藤浪晋太郎が語った変化球論
リリーフ転向後、復活の兆しを見せた阪神・藤浪晋太郎(26)。160㎞を連発する姿にファンは歓喜したが――意外や、本人は「自分はストレートピッチャーではなく、スライダーピッチャーです」と言う。
藤浪の変化球論を拝聴するキッカケとなったのは「なぜか巨人戦には剛速球が通用しませんでしたね?」という質問だった。
「自分が巨人に攻略されたときって(9月5日。5回11失点)、ストレートしかストライクが入らなかったんですよ……(笑)。ストレート一辺倒だった。終盤戦に入って再度、先発のチャンスを貰ったとき、なぜ抑えられたかと言えばスライダーでストライクが取れたから。
自分はストレートピッチャーに見えますが、スライダーピッチャーです。スライダーありきの真っ直ぐなんですよ。いまの時代、いくら速くても真っ直ぐしかストライクゾーンに入ってこないとわかったら、バッターは対応する。打てるんですよ。そこにスライダーが入ることによって、バッターに迷いが生じる。
『スライダーが来るかも』という意識を持たせることによって、見送ったり、振り遅れてファウルになったりする。逆に言えば、打者が球種を絞りづらくなるよう選択肢を増やせないと、ピッチングは苦しくなる」
複数の球種を同じ軌道で投げることで打者を惑わせる技術を「ピッチトンネル」という。カブスのダルビッシュ有(34)らメジャーの一流ピッチャーの間で流行っている最新理論だ。「ピッチトンネル」という単語に藤浪はすぐ反応した。
「『ピッチトンネル』、流行ってますよね。真っ直ぐに近い球速の球種を揃えて的を絞りづらくする『球速帯』も。日本ハムの金子弌大さん(37)とか、広島の野村祐輔さん(31)、阪神だと西勇輝さん(30)が得意とされています。ただ、それがすべてではない。『ピッチトンネル』から大きく外れるボールが有効だったりもします。広島の森下暢仁(23)のカーブはポーンと上に浮き上がってから落ちてくる。あれはあれで有効で……」
フライデーでコラム『エース脳』を連載していた元ソフトバンクの絶対的エース、斉藤和巳氏(43)もカーブの有効性を度々指摘。「引退するまで、『初球の真ん中カーブ』はほぼ打たれなかった」と明かしている。
「初球の真ん中カーブは最強ですね。打者心理として初球からカーブは振りにいけない。『打ち損じたらもったいない』と思ってしまいますから。普通はカーブにヤマをはらないですよ。それに、初球に真ん中のカーブを放れたら、2球目の選択肢がすごく増える。配球的にも広がりができるんです」
もうひとつ、メジャーで流行しているのが「シュートライズボール」だ。右投手で言えば、右打者の懐めがけて食い込んでいきながら浮き上がる軌道のボールを指す。そういえば、制球難で苦しんでいたころの藤浪のボールは、まさに右打者にむかって浮き上がっていく軌道だった。もしや、藤浪もシュートライズ系のボールを投げようと――。
「いや、ただ単に抜けただけです(笑)。そもそも、自分の投げるボールはライズ系じゃない。ドロップ(落ちる)系のゴロピッチャーなんですよ。『千葉ロッテの投手がシュートライズボールを多投してソフトバンクの強力打線を抑えている』という説があるんですか? たしかに千葉ロッテの本拠地・ZOZOマリンスタジアムはライズ系のボールが有効かもしれないですね。
あそこはセンターから風が吹いてきてバックネットにぶつかってマウンドに跳ね返ってくる。ピッチャーからしたら向かい風になるから、変化球がすごく曲がる。真っ直ぐが伸びるタイプのピッチャーならさらに伸びる。ライズ系のボールはさらに吹き上がるでしょうね。
メジャーでライズ系のボールが流行っているのは、『アッパースイングでフライを打て』という打撃理論『フライボール革命』に対抗するため。いまはスライダーでも高めに投げろって指示されるそうですから。ただ、何か理論が生まれればそれに対抗する理論が出てくるもの。近く、ライズ系も対策されると思います。昔はシュートライズなんて、ご法度中のご法度でしたから」
ならば”自称・スライダー投手”は何を目指すのか。最後に藤浪はこう言った。
「一応、自分もカーブは投げられるんですよ。ただ、精度がいまいちでほとんど投げなかった。緩いボール、抜き球ってすごく難しいんです……でも、必要性は痛感しています。来年はもうちょっと投げて行こうかなと思っています」
「緩急」という武器を手に入れることができたら、藤浪は復活どころか手に負えない存在となるだろう。
- 写真:加藤 慶