コロナ第3波でどうなる年末年始特番 テレビマン達の苦労と本音 | FRIDAYデジタル

コロナ第3波でどうなる年末年始特番 テレビマン達の苦労と本音

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毎年恒例の年末特番『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)では、『アンジャッシュ』渡部建がサプライズ出演するという報道と、その後の謝罪会見が波乱を呼んだ
毎年恒例の年末特番『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)では、『アンジャッシュ』渡部建がサプライズ出演するという報道と、その後の謝罪会見が波乱を呼んだ

感染者の数や重症者の数が最多を更新するなど、コロナ第3波のニュースが連日お茶の間を騒がせているが、年末年始特番の季節のいま、テレビ番組制作に影響は出ているのだろうか?

筆者は急遽、年末年始特番の制作を担当する関係者たちに現在の状況を聞いてみた。現場のテレビマンたちの現在の「飾らぬ生の声」をお届けする。

「今、いつロケや収録ができなくなるかわからないのでどんどん前倒しで作ろうとしています。でも地方ロケが『東京からスタッフが来るのはちょっと……』ということで断られるケースが増えて、ネタ探しに四苦八苦です。歌番組やお笑い番組は当然無観客ですし、旅番組は地元の人との触れ合いができません。それだと盛り上がりに欠けてしまって、非常にやりにくいです」と語るのは、民放制作局の幹部。

今後どこまで深刻化するか先行きが見えない中、一体いつロケや収録がストップせざるを得なくなるかわからず、今年は年末年始特番の制作スケジュールが前倒しで進行しているという。そんな中、現場の実働部隊からは「ロケに支障が出始めている」との証言も。

「今年の特番は、『ネタが飛んでは補充』の戦いです。実はこれから年始特番のロケで1週間以上地方撮影なのですが、いろいろ予定していた取材ロケがダメになって、やっと受け入れてくださる取材先が見つかり、ようやく訪問できる感じです。

まず最初に『ネタが飛んだ』、つまりロケが没になったのはGoToが停止になった大阪、北海道でした。地方だと行けるのは『今まだ感染数が多くない場所』だけで、行けても撮影時間がかなりタイトに指定されていたり、制限が多いです。それでも取材に行ける嬉しさは少しありますが、こんな大変な時期に東京からズカズカと行くのか……という暗い気持ちは拭えないです」(大手制作会社のバラエティー担当ディレクター)

前倒しのスケジュールの中、どんどん予定していた地方ロケが断られて、ネタが差し替えになり、次々に企画変更を余儀なくされているようだ。現場の苦労が忍ばれる。

そして、地方ロケ以外にも「タレントやスタッフに感染させないための配慮」により、いろいろな制限が次第に厳しくなってきているという。

「タレントの家に行くロケがダメになるケースが増えています。行けたとしてもかなり人数が制限されるようになりました。スタジオに入れるスタッフの数にも制限がかかって、やりにくくなりました」(フリーのバラエティ番組ディレクター)

「サブ(スタジオの横にあってスタッフがオンエアに必要な作業をする副調整室)が密になりやすいので、人数制限して入れない人は廊下でモニターチェックをしています。リモート収録でPCを使う番組も増えましたが、サブに居場所がないので皆苦労しています。カメラマンも最低限なので、固定カメラがかなり増えました」(前出の民放制作局幹部)

そして、コロナ対策は番組予算も圧迫しているという。

「スタッフの検温、消毒、マスクなどのコストもかなり増えましたね。あと、ドラマで撮影関係者全員PCR検査を受けなければならなかった番組があって、費用がシャレにならなかったです。」(前出の民放制作局幹部)

さらに、「年末年始ならではのお決まりのシーン」も、今年は見られなくなるものが多そうだ。

「NHKは毎年、紅白歌合戦が終わった後、出場歌手たちの『出ブラ・楽屋口取材対応』(出演した歌手たちに楽屋口でインタビュー取材できるように設定すること)をしてくれるのですが、それが中止されることがつい最近決まりました。

あと、近年は予算削減でそもそも取材する局は減っていたのですが、『ハワイ・ホノルル空港での芸能人到着待ちブラ下がり』も今年は全滅しそうです。晴れ着を着たアナウンサーが初詣中継するのも避ける局が多そうで、代わりにドローンなどで富士山の初日の出などの美しい大自然を撮影することになりそうな感じです」(民放ワイドショー関係者)

このように、今年は年末年始の特番も、いろいろその姿を例年とは変えそうだが、逆にこんな心配の声も現場からは聞こえてきた。

「ぶっちゃけあまり前と変わらない部分も多くて、若干心配しています。コロナ対策は日本テレビさんが一番厳しいんですが、その日テレさんでもこの間、ものすごく対策がゆるいと感じた番組があって……気が緩んできてしまっているんですかね。また現場でクラスター感染が起きないか、ビクビクものです」(前出のフリーバラエティディレクター)

感染者の急増具合に比べて、現場の危機感が薄いのではないかという指摘は、今回の取材で複数の関係者から耳にした。やはり、一般社会と同じようにテレビマンたちも「感染に慣れ、気持ちが緩んできている」のだとしたら、今一度気を引き締めて感染対策しないと大変なことになりかねない。

緊急事態制限の頃に、一時期全くストップしてしまった番組制作。あの頃と同じような状況に逆戻りしてしまえば、テレビマンたちは生活に困窮し、視聴者のみなさんにはまた「テレビが再放送ばかり」になって不自由を強いてしまうことになる。それは絶対に避けなければならないと私は思う。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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