渋野日向子が2021年「メジャーを席巻する」これだけの理由
夢のグランドスラム達成へ 全米女子オープンは4位で終了 しかし「スマイルシンデレラ」はやはり何かを持っている
全英女子オープンはビギナーズラックだったのか……。ゴルフファンは誰もがそう思いかけてしまっていた。
だが、渋野日向子(22)は、自身が世界レベルの強いゴルファーであることを、最高峰の舞台「全米女子オープン」で見せつけた。大会3日目までは単独首位。最終日にスコアを崩したものの、トップと2打差の4位でフィニッシュした。
全米女子OPで日本人選手が優勝争いを演じたのは、岡本綾子が2位に入った’87年以来だろう。今年は日本ツアーでも予選落ちが続き、スランプに苦しんでいたシブコ。だが、今大会、とくに予選2日間は絶好調で、ラウンド後には、
「今までの自分を捨てた」
とまでコメントしている。いったいシブコに何が起きているのか。
全米女子OPのテレビ中継で解説を務めたプロゴルファーの村口史子氏が語る。
「今年8月の全英女子OPの後、米国ツアーに2ヵ月間ほど参戦して、渋野選手は『アメリカではメジャーチャンピオンとしてふるまわなくていい、自分より上手い選手がたくさんいるから』という話をしていました。そして、イチから仕切り直して、10月に日本ツアーに帰ってきた。日本で優勝こそできませんでしたが、精神的な安定感を取り戻して、全米女子OPに臨めたことが、今回の結果につながったと思います」
全米女子OPではグリーンを外したり、バンカーに捕まっても、何度も絶妙なリカバリーショットを打って、パーをセーブ。前出の村口氏も大会中にあらためてシブコの強さを感じたという。
「『考え方でスコアが一打も二打も変わる』と渋野選手は話していたのですが、それを試合で実践できるのが彼女の強みです。また、シーズン中盤、パッティングの調子が悪かったのですが、今大会で自信を取り戻したと感じました」
思い切りのいいシブコらしいゴルフが復活したのだ。一方で、最終日に失速してしまったのはなぜか。
米ツアーを長年取材しているゴルフジャーナリストの舩越園子氏が言う。
「寒さ対策が不十分だったのが、最大の敗因だと思います(最終日の気温は6℃)。ショットやパットが寒さの影響で乱れたのなら、自滅しているようなものでもったいなかった。それでも、最終日に何度か笑顔を見せていました。気持ちを切り替えようと努力していたんだと思います。メンタルが安定すれば技術はもともと高いので、何の問題もありません。寒さ対策が万全だったら、優勝もありえたでしょう。メンタルのコントロールと事前準備が今後も課題。それさえクリアすればさらに高いレベルに行けると思います」
この試合で課題が浮き彫りになった。
「この悔しい気持ちはアメリカツアーでしか晴らせないので、絶対ここでまた戦いたい。もっと強くなります」
大会後にシブコはそう決意を新たにした。2021年は海外メジャーでの2勝目が大いに期待できそうだ。
前出の村口氏はこう語る。
「最終日の18番ホールで長いバーディーパットを決めた。そのシーンを見ると、渋野選手はやっぱり何かを持っているのかなと思わされますね」
シブコの目標は「10年間でグランドスラムを達成すること」。その道筋ははっきりと見えている――。

『FRIDAY』2021年1月1日号より
写真:AFLO