高橋一生、中村倫也が共演『岸辺露伴は動かない』は見逃せない | FRIDAYデジタル

高橋一生、中村倫也が共演『岸辺露伴は動かない』は見逃せない

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エンターテインメントの在り方が問われた2020年。その最終週に、「最高にハイ!」ってやつなスペシャルドラマが放送される。それは、『岸辺露伴(きしべろはん)は動かない』。荒木飛呂彦氏による伝説的漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ漫画&小説の、なんと実写版だ。

漫画『岸辺露伴は動かない』のノベライズ作品である短編小説集『岸辺露伴は叫ばない』。今回の実写ドラマ化では、本作収録の「くしゃがら」(作・北國ばらっど)が第2話として実写化される

10月14日に放送局のNHKによって実写ドラマ化が発表されると、瞬く間にTwitterのトレンド入り。高橋一生(岸辺露伴役)、飯豊まりえ(泉京香役)、森山未來(志士十五役)、瀧内公美(片平真依役)、中村倫也(平井太郎役)といったオールスターキャストはもとより、脚本をテレビアニメ版『ジョジョの奇妙な冒険』を手掛ける小林靖子が務めることが明かされ、役者ファン・作品ファンを共に歓喜させた。

NHK総合/BS4Kにて、12月28日から30日にかけて3夜連続放送される実写版『岸辺露伴は動かない』。今回は、原作ファンの視点から、作品全体や各エピソードの紹介、実写版への期待をつづっていく。ドラマ版の“前哨戦”として、新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のような気分で楽しんでいただければ、幸いだ。

そもそも『岸辺露伴は動かない』とはッ⁉

まずは改めて、『岸辺露伴は動かない』の基礎情報をご紹介しよう。岸辺露伴とは、『ジョジョの奇妙な冒険』の第四部『ダイヤモンドは砕けない』に登場する、プロの漫画家。

本作の中では、各キャラクターが「スタンド」と呼ばれる特殊能力を備えているが、露伴のスタンドは「ヘブンズ・ドアー」。相手を「本」にして、本人も無自覚な過去や秘密を知ることができるばかりか、指示を書き込むことで意のままに操る能力だ。

すさまじく便利で強い能力を有する露伴だが、本人は決して悪人ではなく(プライドは高く、偏屈だが)、正義の心=黄金の精神の持ち主。良い漫画を描くべく、アイデア集めのためには平気で法やルールを犯すが、困った人々をついつい助けてしまうひねくれ型のヒーローだ(仕方なく、という体がほほえましい)。

この露伴がイタリアでとある“奇妙な”事件を目撃し、それを語る、という体の「懺悔室」という短編が‘97年に発表された。これが強烈に面白く、また読者からの人気も高かったため、以降シリーズ化されたのが『岸辺露伴は動かない』だ。2011年にはファッションブランドのグッチとコラボレーションした『岸辺露伴 グッチへ行く』も発表されている。

ちなみに、タイトルの「動かない」とは、露伴自身が主人公然として率先して行動するのではなく、あくまで傍観者や取材者の立場をとる、という意味だそうだ。

『岸辺露伴は動かない』は、露伴が様々な怪異に遭遇する1話完結の短編集になっており、今回の実写化においては「富豪村」「くしゃがら」「D・N・A」といった3つのエピソードが描かれる。いずれも、原作ファンならニヤリとするチョイスだ。

マナーをホラーで描いた「富豪村」

では、今回実写化される3つのエピソードはそれぞれどんな内容なのか? ネタバレを挟まぬ程度に、原作の概要を紹介しよう(なお、今回はあくまで原作を中心に解説するため、後日放送される実写版の内容とは、細かい差異があるはず。ご了承いただきたい)。

まずは「富豪村」について。露伴はある日、編集者の京香から、「富豪ばかりが住んでいる山奥の別荘地」の話を聞かされる。なんでも、外界から閉ざされた桃源郷のような山村が、一区画だけ売りに出されているらしいのだ。その話に興味を持った露伴は、別荘を買いに行くという京香に同行するが、売り主から「マナー試験」が課されて……。という内容。

このあらすじからでも怪奇譚の匂いがぷんぷん漂うが、このマナー試験というのが実に恐ろしい内容になっている。詳細は控えるが、『ジョジョの奇妙な冒険』にも通じる、「等価交換」の恐ろしさ……つまり、何かを得る代わりに、何かを失う残酷さが、マナーという“秤(はかり)”を通して描かれている。

余談だが、本エピソードに登場する京香は、作者の荒木氏が「ムカつきながら描きました。でもキャラとしては大好きで傑作の出来と自負します」と語っているキャラクター。飯豊まりえがどのような演技で実写版の京香像を演じるのか、期待しつつ観賞したい。

映画『惡の華』やドラマ『家政婦のミタゾノ』など話題作に出演してきた飯豊まりえ。放送前に公開された「富豪村」の場面カットでは、そのビジュアルの原作再現度の高さが話題となった 写真:アフロ

日常に恐怖が侵食する不条理劇「くしゃがら」

続いて、実写版第2話の「くしゃがら」をご紹介しよう。これは漫画ではなく、北國ばらっど氏による小説が原作。

このエピソードは、露伴と同じ漫画家である志士十五(ししじゅうご)が、編集者から「禁止用語リスト」を渡されたことから、そこに書かれていた謎の言葉「くしゃがら」に取りつかれていく姿を描く。

どの辞書にも記載されておらず、ネット上にも手掛かりさえない「くしゃがら」とは“何”なのか? ある単語を媒介にし、平和な日常が得体のしれない何かに吸い取られていくさまがおぞましい。しかも、一気にではなく時間をかけて……。純粋に「こわい」エピソードだ。

なお実写版では、この十五を森山未來が演じる。ダンサーとしてもまばゆい輝きを放つ彼は、身体動作にキャラ付けを織り込ませるテクニックがずば抜けており、人当たりのいい男が壊れていくさまを演じたら、身体レベルから変えてくるに違いない。

森山は名匠・黒沢清監督によるドラマ『贖罪』で扮した危険な趣味を持つ優男、観る者を震撼させた『怒り』のバックパッカー等々、狂気の演技にも定評があり、最新主演映画『アンダードッグ』では地べたに這いつくばる落ち目ボクサーをすさまじい完成度で演じ切った。実にベネ(良し)なキャスティングと言わざるを得ない。

第33回東京国際映画祭にて、11月1日に行われた映画『アンダードッグ』の舞台挨拶に登壇した森山未來。本作は数々の賞に輝いた『百円の恋』の監督・脚本コンビが6年ぶりにタッグを組んだ作品だ 写真:2020 TIFF/アフロ

『ジョジョ』シリーズ全体でも異質な『D・N・A』

実写版第3話の原作である「D・N・A」は、『岸辺露伴は動かない』の中でも異質なエピソードだ。というのも本作、ジャンプ系列誌ではなく、少女漫画誌の「別冊マーガレット」に出張掲載されたもの

荒木氏の中でも「別マ」は特別な内容だったそうで、奇妙さはしっかりと担保しつつも、ハートフルな物語となっている。これは、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ全体を通して見てもかなり珍しく、ある意味で“イメージ脱却”の一作といえるかもしれない。

露伴はある日、シングルマザーの片平真依から相談を受ける。彼女は、夫を事故で亡くして以来独り身を貫き、精子バンクを通じてできた娘・真央と暮らしていた。ただ、真央は「さかさまの日本語」しか話せず、その他にも変わった身体的特徴を有していた。幼い娘が近い将来いじめられるのではないかと危惧し、「精子提供者を突き止めたい」と言う真依に対し、露伴が出した答えは……。

「会ったことのない父親を捜す」という軸は、漫画に限らず様々な作品で繰り返し描かれてきたテーマだ。ただそこに、「娘が“奇妙”だ」という親の困惑を入れることで、ミステリー要素を強めているのが本エピソードのうまさ。

さらに「どうして娘は、さかさまの言葉しか話せないのか。これは父親の遺伝なのか?」というような母親の心情をベースに物語を構築し、そのうえで露伴に「“普通”ってなんだ? “治す”ってなんだ?」という問題提起を行わせることで、今日的な「多様性」というテーマにアプローチしている。荒木氏の新たな一面を強く感じさせる内容といえよう。

エポックメイキングな本エピソードの実写化にあたり、声をかけられたのが瀧内公美(片平真依役)と中村倫也(平井太郎役)。高橋一生も入れれば、人気ドラマ『凪のお暇』の3人である。

瀧内は『恋はつづくよどこまでも』『共演NG』など話題のドラマに出ずっぱりだが、体当たりの演技で各方面から激賞された『火口のふたり』や、『アンダードッグ』で演じたシングルマザーのデリヘル嬢など、過酷な役柄を難なくこなせる演技派。輪郭の震え具合が難しい真依を、エモーショナルに演じ切ってくれることだろう。

話題作への出演が続く瀧内公美。映画『アンダードッグ』では森山未來と共演している 写真:2020 TIFF/アフロ

そして……まるで読めないのが、中村倫也だ。というのも、彼が演じた平井太郎は、原作に登場する“あの人物”に相当するポジションのはずなのだが、実写版第3話のあらすじを読むと、設定も物語も原作と微妙に違っており、このエピソードはオリジナルの要素が強い。

さらに、中村のキャスティングが、観る者を惑わせる。彼の場合は「中村ならばこういう役だろう」という先入観を軽々と超えてくる稀有な役者で、極端なことを言えば善人の役でも吐き気をもよおす邪悪な役でも不思議ではない。予告やPR映像で爽やかなキャラクターのように見えても、ミスリードやブラフである可能性も捨てきれないのだ。

引き出しが多いため、どんな演技のアプローチをしてくるかも読めず、原作の読者にとっても色々と憶測ができる非常に楽しみな配役といえよう。

1人7役に挑戦した映画『水曜日が消えた』や主演ドラマ『美食探偵 明智五郎』など、2020年も数々の作品に出演した中村倫也。今クールのドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)も話題を呼んだ 写真:西村尚己/アフロ

暗闇の荒野に進むべき道を切り開いた高橋一生

以上が、3エピソードの原作の簡単な紹介となる。これらの物語が、実写版でどう変換されているかが見ものだが、映画『姑獲鳥の夏』や『スパイの妻』を彷彿させるような、エレガントな和モダンの雰囲気でまとめ上げている点が興味深い。

そして、何と言っても高橋一生。大前提として、彼の演技には「スゴ味」がある。岸辺露伴という男は基本はクールだが、実は感情表現が豊かな人物だ。ただ同時に、近寄りがたいオーラも放っていなければならない。そういったキャラクターをストレートに演じるのではなく、あえてツイストをきかせているのが絶妙だ。

『岸辺露伴は動かない』では、高橋自身が超然とした、何を考えているのかわからない雰囲気を醸し出すことで、作品全体の得体の知れなさが増幅している。声色にもかなり癖をつけており、「だが断る」「この岸辺露伴をなめるなよ」といった原作ファンおなじみのセリフも、「こう来るか」とうならされる独自のアプローチで、見事に自分のものにしている。

総じて、彼なりの“ジョジョ仕様”を実践しているのが熱い。まるで「あなたたち『覚悟して来てる視聴者』……ですよね」と言わんばかりの威圧感あふれる演技……安易に言いたくはないが、「そこにシビれる! あこがれるゥ!」状態である。

岸辺露伴役の高橋一生。第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した映画『スパイの妻』(黒沢清監督)では、蒼井優と夫婦役を演じた 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

まとメメタァ

なかなかのボリュームとなってしまい「やれやれだぜ」と思ってしまった方もいるかもしれないが、「だから気に入った」と感じていただけたなら、幸いだ。やはり、『ジョジョの奇妙な冒険』は、特別な作品。語っているうちに、ついつい燃えつきるほどヒートアップしてしまうものなのである。

すでに公開された映像からも「敬意を表するッ!」と言わんばかりの“ジョジョ愛”が伝わってくる実写版『岸辺露伴は動かない』。どこまで自由に遊んでいるのか、期待に胸を膨らませながら放送日を待ちたい。

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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