菅田将暉、松坂桃李、田中圭…21年映画は「この邦画に注目!」 | FRIDAYデジタル

菅田将暉、松坂桃李、田中圭…21年映画は「この邦画に注目!」

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新型コロナウイルスの影響で、大幅に予定が狂ってしまった2020年の映画界。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『トップガン マーヴェリック』『キングスマン ファースト・エージェント』といった洋画大作が、軒並み公開延期となってしまった。

ただ一方で、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の国内興行収入が歴代1位の新記録を樹立し、黒沢清監督の『スパイの妻<劇場版>』が第77回ヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞するなど、国産映画の活躍が目立った年でもあった。

そしてその勢いは、今後も続く。年明け1月2月公開の日本映画は、近年まれに見る話題作や良作、傑作ぞろいなのだ。中でも、人気・実力ともに申し分ない俳優たちの最新作がひしめいている。今回は、ひと足先に試写で観賞した注目作を厳選し、簡単にご紹介する。

『さんかく窓の外側は夜』(1月22日公開)

『さんかく窓の外側は夜』2021年1月22日(金) 全国ロードショー (C)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre
『さんかく窓の外側は夜』2021年1月22日(金) 全国ロードショー (C)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

アニメ化も発表された人気漫画を、岡田将生志尊淳平手友梨奈の共演で実写映画化。「霊が見える男」「霊を祓う男」「呪いを操る女」の戦いを描く。

原作はカルト教団の怖さや親による“支配”、愛の所在を描いた深遠な内容となっており、映画はエンタメとしてライトな方向に振りつつも、そのぶん映像的な実験精神が随所にみられる。衣装や小道具、美術のセンスはもちろん、色調に至るまでスタイリッシュ。暗闇の中に蛍光色の三角形が浮かび上がるなど、なかなか他の映画ではお目にかかれない映像演出が拝める。

『さんかく窓の外側は夜』より (C)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre
『さんかく窓の外側は夜』より (C)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

監督を務めた森ガキ侑大は1983年生まれで、「グランブルーファンタジー」や「カルピスウォーター」など、数多くのCMを手掛けてきた人物。近年、映像派の若き監督たちが日本映画をけん引し始め、“お洒落さ”が一気に進んだ印象はあるが、そのような潮流から見ても、はたまた新進クリエイターがメジャー作品の中でどう自分の“色”を出していくかという点から見ても、実に興味深い1作だ。

『花束みたいな恋をした』(1月29日公開)

『花束みたいな恋をした』2021年1月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開 配給:東京テアトル、リトルモア (C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
『花束みたいな恋をした』2021年1月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開 配給:東京テアトル、リトルモア (C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

本作においては、布陣の時点で既に勝っている。人気ドラマ『カルテット』の脚本家・坂元裕二と土井裕泰監督が再び組み、菅田将暉有村架純が共演。2015年から2020年の5年間に及ぶ男女のラブストーリーを描くという。面白くないわけがないではないか。

その中身は期待以上にリアルな心情描写と、膝を打つような名ゼリフ、共感度大の恋愛ドラマが詰まった快作となった。東京・明大前駅で、終電を逃したふたりという具体的な出会いに始まり、男女が恋に落ち、共に過ごしていく過程が、細やかにつづられていく。

『花束みたいな恋をした』より (C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
『花束みたいな恋をした』より (C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

相手が使う言葉が好きとか、同じことを考えていたとか……日常が恋によって劇的に変わる瞬間の高揚感が、真空パックしたかのように純度を保ち展開していく光景には、感動すら覚えるだろう。

映画や音楽、漫画などの固有名詞もこれでもかと詰め込まれており、同じ時代を生きた世代からすれば、他人事とは思えぬほどに「わかりみが深い」のではないか。菅田と有村のナチュラルな演技は流石の域で、時代性を的確にとらえた「最旬恋愛映画」といえる。

『ヤクザと家族 The Family』(1月29日公開)

『ヤクザと家族 The Family』撮影中の藤井道人監督/ 『ヤクザと家族 The Family』 2021年1月29日(金)全国公開 配給:スターサンズ、 KADOKAWA (C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
『ヤクザと家族 The Family』撮影中の藤井道人監督/ 『ヤクザと家族 The Family』 2021年1月29日(金)全国公開 配給:スターサンズ、 KADOKAWA (C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

『新聞記者』の制作・配給スターサンズ×藤井道人監督が、またやってくれた。そんな快哉を叫びたくなるような傑作。1999年から2019年の20年間を生きるヤクザを軸に、時代の変遷を鋭く見つめた社会派エンターテインメントだ。

本作、前半はヤクザ映画、後半は社会派ドラマと劇的に変動していき、ブイブイ言わせていた猛者たちが、やがて反社(反社会的勢力)として社会から徹底的に排除されていく“落差”には、愕然とさせられる。従来のヤクザ映画に、強烈なカウンターパンチを食らわせる一作といえよう。

主演は、絶対的なポジションを確立した綾野剛。彼が扮する主人公を拾い上げるヤクザの親分を演じるのは、舘ひろしだ。時代の濁流にのみ込まれ、一つひとつ得たものを失い、涙を流す男たちの壮絶な生きざまからは、映画という表現の凄みを改めて感じさせる。

強烈な余韻を、ぜひ味わっていただきたい。

『哀愁しんでれら』(2月5日公開)

『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)全国公開 配給:クロックワークス (C)2021 『哀愁しんでれら』製作委員会
『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)全国公開 配給:クロックワークス (C)2021 『哀愁しんでれら』製作委員会

「これはとんでもない映画を引いてしまった」、これが試写を観た際の率直な感想だ。アクシデントで、一夜にしてすべてを失ったヒロインが、白馬の王子様と出会い一発逆転するが、完璧に思えた新生活には、どす黒い悪意が潜んでいた……。

タイトルの通り、童話的な導入から始まり、一気に幸せの絶頂まで駆けていくのだが、それはあくまでプロローグ。子連れの男性と結婚したヒロインは、「良き妻、良き母」でいようと懸命に努力するうち、我々観客から見て「常軌を逸した」方向へとひた走っていく……。

『哀愁しんでれら』より (C)2021 『哀愁しんでれら』製作委員会
『哀愁しんでれら』より (C)2021 『哀愁しんでれら』製作委員会

完全にネタバレ厳禁で、よくもまぁここまで攻めた題材を脚本化・映像化したものだと舌を巻く内容だが、ヒロインと夫を演じた土屋太鳳田中圭の怪演が、気持ちがいいほどにキレまくっている(土屋は、あまりに衝撃的な内容に、本作のオファーを三度断ったとか)。本作は、世代のクリエイターを発掘する「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM」のグランプリ受賞作であり、さもありなんといった斬新な逸品だ。

『すばらしき世界』(2月11日公開)

『すばらしき世界』2021 年 2 月 11 日(木・祝)全国公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
『すばらしき世界』2021 年 2 月 11 日(木・祝)全国公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

『ゆれる』『永い言い訳』の西川美和監督、久々の監督作。名優・役所広司を迎え、人生の大半を刑務所で過ごした男が社会復帰を目指す姿を、暖かくもシビアに見つめた。

ノンフィクション書籍『身分帳』を現代アレンジした本作は、西川監督らしい「人間の愚かさと滑稽さ」「社会や他者の残酷さと寛容さ」といった対立する2項のせめぎ合いが効いている。役所扮する前科者は人当たりのよい好人物だが、怒りの沸点が低く、一度スイッチが入ってしまうと手が付けられない。ただ、彼を排除しようとする「世間」もまた、その奥に醜悪なにおいを宿している。

『すばらしき世界』より (C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
『すばらしき世界』より (C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

単なる二元論では片づけられない、尾を引くエグ味ややるせなさ……。力作の名にふさわしい計り知れなさを秘めた作品だ。西川監督と役所、二大表現者のコラボレーションは流石の域なのだが、ふたりに続けとひた走る、仲野太賀の熱演も見逃せない。彼が演じたのは、出所した主人公を取材する若き映像ディレクター。両者がぶつかり合いながら絆を育んでいく部分は、切なくも希望にあふれ、観る者の涙を誘う。

『ファーストラヴ』(2月11日公開)

『ファーストラヴ』2021年2月11日(木・祝)ロードショー 配給:KADOKAWA (C)2021『ファーストラヴ』製作委員会
『ファーストラヴ』2021年2月11日(木・祝)ロードショー 配給:KADOKAWA (C)2021『ファーストラヴ』製作委員会

直木賞に輝いた島本理生の小説を、堤幸彦監督北川景子中村倫也窪塚洋介芳根京子の共演で映画化したミステリー。実の父親を殺した容疑で逮捕された、女子大生。彼女はなぜ凶行に及んだのか。物語が進むにつれ明かされる、壮絶な秘密とは……。

本作に関しては、はっきりと問題作と言ってよいだろう。原作が扱っている「被害者は誰か?」というテーマ自体が、かなりの危うさをはらんだものだったが、生身の人間に演じられることでより苦みが増し、鉄板の「人気原作×実力派監督×旬のキャスト」という企画を越えた、後味の悪さを残す。

父親殺害の容疑者として逮捕され、「動機はそちらで見つけてください」 という挑発的な発言で世間を騒がせる女子大生・聖山環菜(ひじりやま・かんな)を演じる芳根京子 (C)2021『ファーストラヴ』製作委員会
父親殺害の容疑者として逮捕され、「動機はそちらで見つけてください」 という挑発的な発言で世間を騒がせる女子大生・聖山環菜(ひじりやま・かんな)を演じる芳根京子 (C)2021『ファーストラヴ』製作委員会

北川、中村、窪塚がそれぞれ、パブリックイメージを覆す複雑なキャラクターに挑戦しているほか、シーンごとに印象が変わる容疑者の女性に扮した芳根の“変化”が衝撃的だ。媚びたと思えば、次の瞬間、火が付いたように絶叫し……かなりカロリーを消費する役どころを、全身全霊で演じ切っている。

『あの頃。』(2月19日公開)

松坂桃李が、松浦亜弥の存在に心を救われたハロプロファンを演じる――。このたった一文で、「観たい」と思った方も多いのではないか。劔樹人氏のコミックエッセイを、『愛がなんだ』今泉力哉監督が映画化したハートフルコメディ。脚本は、『南瓜とマヨネーズ』の冨永昌敬、共演に仲野太賀山中崇若葉竜也芹澤興人コカドケンタロウら、バラエティ豊かな面々が並ぶ。

「推し」に出会ったことで人生に光が差し、その先にかけがえのない仲間たちがいた、という展開がほほえましく、コロナ禍において一層尊さが増した「誰かと一緒にワイワイやる楽しさ」には、ついホロリとさせられてしまうのではないか。優しさとちょっぴりの切なさが、心をじんわり温めてくれる。

『あの頃。』2021年2月19日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム (C)2020『あの頃。』製作委員会
『あの頃。』2021年2月19日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム (C)2020『あの頃。』製作委員会

ここ数年の松坂は『孤狼の血』や『娼年』など、シリアスな役どころで才気を発揮していたが、実はコメディセンスも図抜けている。特に、『ゆとりですがなにか』で見せたような“キョドる”演技が絶妙で、本作でも終始クスクスと笑わせてくれることだろう。

『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』(1月8日公開)

『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』2021年1月8日(金)全国ロードショー 配給:ユナイテッド・シネマ (C)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 (C)Mitsuaki Iwago
『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』2021年1月8日(金)全国ロードショー 配給:ユナイテッド・シネマ (C)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 (C)Mitsuaki Iwago

最後にぜひとも紹介したいのがこちら。タイトルから伝わる通り、ネコのドキュメンタリーである。NHKの人気テレビ番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』の実写化第2弾で、ミャンマーや北海道を舞台に、「猫の家族愛」を描き出す一本だ。

岩合光昭氏といえば、ネコ好き界隈を越えて人気を博す、動物写真家。写真展やテレビ番組はもとより、写真のグッズ化など多方面に拡散され、かの「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙を日本人として初めて飾るなど、一般層の人気と専門家層の評価を両立している。

実は本作、第1弾のナレーションを務めた吉岡里帆に続き、今回は動物好きとして知られる人気俳優・中村倫也を起用しているのだ。「プロ中のプロが1年間かけて撮影したかわいらしい猫の美麗映像×中村倫也の美声」という強力な組み合わせは、破壊力大だ。

『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』より (C)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 (C)Mitsuaki Iwago
『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』より (C)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 (C)Mitsuaki Iwago

ざっと紹介してきたが、このほかにも、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2月5日公開)や『夏への扉 キミのいる未来へ』(2月19日公開)などの大作が控えているほか、アニメ作品も『銀魂 THE FINAL』(1月8日公開)や『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(1月23日公開)といったビッグタイトルが並ぶ。

新型コロナウイルスの新規感染者数が増加し、不安ななか新年に突入した2021年。しかしそんな中にあっても、映画界は力強く歩みを進めていく。明確な苦境だからこそ、心を軽くし、夢を観させてくれる娯楽の存在位置も、また増しているのだ。今年も、多くの映画との出会いを「楽しんで」乗り切っていこうではないか。

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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